こんにちは、為沢です。
日本時間の7月28日午前5時より
ロンドンでオリンピック開会式が行われます。
(競技は25日からです)
“日本時間”ということは、時差があるわけです。
日本とイギリスの時差は9時間ですが、
イギリスはサマータイムを採用しているため
実質8時間の時差で競技が行われます。
サッカーで調べてみると日本対スペイン戦が
7月26日現地時間のPM14:45開始なので、
日本ではPM22:45に開始されます。
うーん…。やっぱり夜遅くなりますね。
期間中は夜更かしのTV観戦に注意しましょう。
…とは言っても少しは見てしまいそうです。
では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)七十九章と八十章。
七十九章では、誤下によって心煩腹満する者の証治について。
八十章では、 誤下により上焦熱・中焦寒となった
場合の証治について述べております。
弁太陽病脈証并治(中)七十九章
傷寒下後、心煩腹満、臥起不安者、梔子厚朴湯主之。方四十一。
梔子十四個、擘 厚朴四兩、炙、去皮 枳実四枚、水浸、炙令黄
右三味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服、溫進一服、得吐者、止後服。
和訓:
傷寒下して後、心煩腹満し、
臥起安からざるものは、梔子厚朴湯之を主る。方四十一。
梔子十四個、擘く 厚朴四兩、炙る、皮を去る 枳実四枚、水に浸す、炙りて黄ならしむ
右三味、水三升半を以て、
煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち、
溫めて一服を進め、吐を得るものは、後服を止む。
・傷寒下後、心煩腹満、臥起不安者、梔子厚朴湯主之
傷寒証に対して発汗法を行わず、
下法を用いれば表熱は内陥し
それが上方を乱せば気分が落ち着かずイライラし、
下方に集まれば腹満となる。
腹満に熱が籠もり、気が停滞するので、
寝ても起きても落ち着かず不安になる。
梔子厚朴湯を用いて、開鬱除煩を行ない、
胸腹の気滞を取り除けばよい。
梔子厚朴湯(ししこうぼくとう)
方義
・山梔子(さんしし)
基原:アカネ科のクチナシ、
またはその他同属植物の成熟果実。
球形に近いものを山梔子、
細長いものを水梔子として区別する。
山梔子は苦寒で清降し緩除に下行し、
心・肺・三焦の火を清して利小便し
気分に入って瀉火除煩・泄熱利湿するとともに、
血分に入り凉血止血・解毒に働く。
熱病の熱蘊胸膈による心煩懊憹、
熱欝血分による吐衄下血・瘡癰熱毒、
湿熱蘊結による淋閉黄疸などの要薬である。
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・厚朴(こうぼく)
厚朴は苦辛・温で、
苦で下気し辛で散結し温で燥湿し、
下気除満・燥湿化痰の効能を持ち、
有形の実満を下すとともに無形の湿満を散じる。
それゆえ、食積停留・気滞不通の胸腹脹満・大便秘結、
湿滞傷中の胸腹満悶・嘔吐瀉痢に適する。
また、燥湿化痰・下気降逆にも働き、
痰湿壅肺・肺気不降による喘咳にも有効である。
ここでの厚朴の働きは輸脾寛胸に作用する。
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・枳実(きじつ)
基原:ミカン科のダイダイ、
イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
枳実は苦寒で下降し、
気鋭力猛で破気消積・化痰除痞に働き、
脾胃の気分薬である。
積滞内停・気機受阻による
痞満脹痛・便秘・瀉痢後重には、
気血痰食を問わず用いる。
薬力が猛烈であることから、
「衝墻倒壁の功あり」
「消痰癖、祛停水、破結胸、通便閉、
これにあらざれば能わざるなり」といわれている。
提要:
誤下によって心煩腹満する者の証治について。
訳:
傷寒証の者に下法を行った。その後、気分がイライラして落ち着かず、
腹部が張って寝ても起きて坐っていても何か不安で落ち着かないようなときには
梔子厚朴湯で治療する。処方を記載。第四十一法。
梔子十四個、裂く 厚朴四兩、炙る、皮を除く 枳実四個、水に浸す、炙って黄色にする。
右の三味を、三升半の水で、一升半になるまで煮て、滓を除き、これを二服に分け、その一服を温いうちに服用するが
嘔吐すれば、第二服目は服用しない。
八十章
傷寒、医以丸藥大下之、
身熱不去、微煩者、梔子乾薑湯主之。方四十二。
梔子十四個、擘 乾薑二両
右二味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服、溫進一服、得吐者、止後服。
和訓:
傷寒、医丸薬を以て大いに之を下し、
身熱去らず、微かに煩するものは、梔子豉湯之を主る。方四十二。
梔子十四個、擘く 乾薑二両
右二味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち、
溫めて一服を進め、吐を得る者は、後服を止む。
・傷寒、医以丸藥大下之、身熱不去、微煩者、梔子乾薑湯主之
傷寒証は本来発汗法を用いて解くべきだが、
丸薬の瀉下薬で下法を行えば、
薬力が内に停まって脾胃を傷つけ、内寒を生じさせてしまう。
更に元からある身熱が去らずに
内を乱し、気分をイライラさせる。
「微」という一字より中焦に寒があることを暗示しており
治療は気分を落ち着かせること、
中焦を温めることを同時に行っていく。
それには梔子乾薑湯を用いるとよい。
梔子乾薑湯(ししかんきょうとう)
方義
・山梔子(さんしし)
基原:アカネ科のクチナシ、
またはその他同属植物の成熟果実。
球形に近いものを山梔子、
細長いものを水梔子として区別する。
山梔子は苦寒で清降し緩除に下行し、
心・肺・三焦の火を清して利小便し
気分に入って瀉火除煩・泄熱利湿するとともに、
血分に入り凉血止血・解毒に働く。
熱病の熱蘊胸膈による心煩懊憹、熱欝血分による
吐衄下血・瘡癰熱毒、湿熱蘊結による
淋閉黄疸などの要薬である。
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・乾薑(かんきょう)
基原:ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。
乾姜は生姜を乾燥させてもので辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。
提要:
誤下により上焦熱、中焦寒となった場合の証治について
訳:
傷寒証の者に医者が丸薬を用いて、強い下法を行ったが、
身熱が取れず、少しイライラする場合は梔子乾薑湯が主治する。
梔子十四個、裂く 乾薑二両
右の二味を、三升半の水で、一升半になるまで煮て、滓を除き、これを二服に分け、
その一服を温い内に服用するが、嘔吐すれば、第二服目は服用しない。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢