こんにちは、為沢です。
5月21日は金環日食でしたね。
大阪ではやや薄曇りの中での観察になりましたが
雲間から覗く金環日食も幻想的で良かったです。
さて。これを機に日食グラスを購入され、
「もう使わんし捨てよ」と思ってはる方多いと思います。
ちょっとお待ち下さい。
実は2012年6月6日にも「金星の太陽面通過」という
天体観測が日食グラスで可能なんです。
当日午前7時過ぎ 〜 午後14時前まで確認できるため
今回は時間に余裕がありそうです。
日食グラスは捨てずに6月6日を待ちましょう☆
では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)七十二章と七十三章。
七十二章では、五苓散の脈象上の特徴について。
七十三章では、口渇があるかないかを弁証し、
その治法について詳しく述べております。
弁太陽病脈証并治(中)七十二章
發汗已、脉浮數、煩渇者、
五苓散主之。三十五。用前第三十四方。
和訓:
発汗し已り、脉浮數に、煩渇するものは、
五苓散之を主る。三十五。前の第三十四方を用う。
・發汗已、脉浮數、煩渇者、五苓散主之
表邪未解・水蓄内停・気不化津による「脉浮数・煩渇」と、
単純に熱が陽明胃に入った場合の「煩渇」とは異なるという点を強調している。
五苓散
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十章・七十一章
提要:
七十一章を受けて再度、五苓散の脈象上の特徴を述べている。
訳:
発汗させた後、脈象が依然として浮数であり、
激しい口渇を訴えるなら、五苓散で治療する。第三十五法。前記第三十四法の処方を用いる。
七十三章
傷寒汗出而渇者、五苓散主之。
不渇者、茯苓甘草湯主之。方三十六。
茯苓二両 桂枝二両、去皮 甘草一兩 生薑三両、切
右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分溫三服。
和訓:
傷寒の患者が、汗が出たあと
口渇を訴える場合は、五苓散で治療する。
汗が出て口渇しないものは、茯苓甘草湯で治療する。
処方を記載する。第三十六法。
茯苓二両 桂枝二両、去皮 甘草一兩、炙 生薑三両、切
右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分溫三服。
・傷寒汗出而渇者、五苓散主之。不渇者、茯苓甘草湯主之
傷寒で汗出、口渇がある場合は、五苓散が主治する。
口渇がない場合は茯苓甘草湯が主治する。
五苓散証
表邪が経にそって太陽膀胱の腑に入ったために、水腑が不通となり、
津気がめぐらず、上焦を潤さないので口渇や小便不利などをみる。
茯苓甘草湯証
発汗法を行ったあと、胃腸が虚し、
水気がその虚に乗じて胃に入ったもので
口不渇だが小便不利、或いは心窩動悸などが起こる。
このときの治法は降逆利水、温中去飲を目的にして行えば良い。
五苓散
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十章・七十一章
茯苓甘草湯
・茯苓
基原:サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。
茯苓は甘淡・平で、甘で補い淡で滲湿し、
補脾益心するとともに利水滲湿に働き、
脾虚湿困による痰飲水湿・食少泄瀉および
水湿内停の小便不利・水腫脹満に必須の品であり、
心脾に入って生化の機を助け寧心安神の効能をもつので、
心神失養の驚悸失眠・健忘にも有効である。
茯苓の特徴は「性質平和、補して峻ならず、利して猛ならず、
よく輔正し、また祛邪す。脾 虚湿盛、必ず欠くべからず」といわれるが、
性質が緩やかであるところから補助薬として用いることが多い。
・桂枝
基原:
クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得て
はじめて化し、通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。
・甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。
・生薑
基原:ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を
乾生姜ということもあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。
・茯苓甘草湯について
桂枝で温経通陽、茯苓で利水、甘草で脾胃を補って消化吸収の働きを正常化させ、
やや大量の生薑で胃を温め停滞した水の排泄を促進する。
提要:
口渇があるかないかを弁証し、その治法について述べている。
訳:
傷寒の患者が、汗が出たあと口渇を訴える場合は、五苓散で治療する。
汗が出て口渇しないものは、茯苓甘草湯で治療する。処方を記載。第三十六法。
茯苓二両 桂枝二両、皮を除く 甘草一兩、炙 生薑三両、切る
右四味を、四升の水で、二升になるまで煮て、滓を除き、三回に分けて温服する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢