東洋医学の古典は
理論の『素問』、
鍼灸書の『霊枢』が双璧を成します。
ただ鍼灸書は『霊枢』であっても、
経穴に関しては、また別の古典があり、
それが『明堂経』です。
しかし『明堂経』自体が既に失われており、
原本をみることはできませんが、
その内容を今日まで伝えている書物が『甲乙経』です。
ただ今ある『甲乙経』も原本版ではなく、
北宋時代の林億による校注版となり、
他の古典と同様にオリジナルとは異なります。
また当時、
『明堂経』の復刊の声があがり、
孫思邈の『千金方』『千金翼方』、
楊上善の『黄帝内経太素』も代表書物として挙げられますが、
『甲乙経』を引用していたという説もあり、
実際に『明堂経』の原本に近いのは『甲乙経』となるでしょう。
『甲乙経』自体は
『素問』『霊枢』『明堂』を集めて編纂されており、
鍼灸を行う上ですべて揃った書物となりますが、
反面「これは間違っているのではないか」とされている
『素問』『霊枢』=『黄帝内経』と決定付けた
書物にもなっており、
色んな意味で、東洋医学の歴史を紐解く為の
重要な書物であると思われます。
アイキャッチ画像は
『鍼灸甲乙経12巻』(京都大学附属図書館所蔵)です。
下野