大濱です。
曲池の穴性について学んでいきます。
< 要穴 >
手陽明大腸経 合土穴
肘部の屈曲した部位は、
手陽明脈気が入り合するところ。
『霊枢』邪気臓脈病形篇
「合は内腑を治す」
『霊枢』四時気篇
「邪が腑にあるは合を取る」と述べている。
大腸の合穴であり、大腸脈病を治すことができる。
また大腸腑病の治療には、下合穴である上巨虚を用いるのも効果的である。
『霊枢』邪気臓勝病形篇では,
「大腸は巨虚上廉に合す」と述べている。
外感表証、全身の風を駆除する際の常用穴とされている。
また、血中の気を巡らし、散瘀する。
疏邪熱、祛風熱、行気化湿などが挙げられる。
< 治療範囲 >
1. 風病・外感表証
『霊枢』寿夫剛柔篇
「病が陽中の陽に在る者は、陽の合を刺す」
とでは述べている。
「陽中の陽」の部位的は肌表である。
肺は衛に属し、表を主っており、皮毛に合している。
風邪が皮毛に侵聾すると、まず肺衛がその影響をうける。
陽明は肌肉を主っており、肌表皮膚に連絡している。
皮膚病は風邪挟寒、挟湿、挟熱などが肌表に客し、
そのために気血が阻滞しておこるものが多い。
本穴には、去邪透表、全身の風邪を駆除するという特殊な作用があり、
皮膚病、外感、表熱証を主治する。
① 風邪挟寒・挟熱・挟湿による皮膚病
② 風寒・風熱・陽明熱盛による病変、
風寒・風熱・高熱症状をともなう者
③ 病が衛、気分にある病証
『傷寒論』中の陽明経証、
温病中の衛分証候と気分証候は、
合谷・曲池穴の治療範囲に入る。
2. 経脈循行上の病証
上肢の疾患に対しては、
通経活絡、気血を宣通させる作用に加えて、
去風散邪の効もある。
さらに頬碩、鼻、歯疾患に対しては、
経気の宣通と去風散邪の作用がある。
< 古典考察 >
1. 『霊枢』五禁論
「熱病脈静か、汗巳に出で、脈盛燥なるは、是れ一逆なり」
熱病の脈は本来は洪大となるが、
反って沈静となる場合は、邪盛正虚がその要因である。
また熱病で汗がでれば邪は汗とともに解し
脈は平静とならなけばならない。
しかし反って脈盛となり煩燥が現れる場合は、
汗が出て津液を損傷し邪気が反って盛んになっていると考えられる。
こうした場合は、養陰をはかり
曲池、内庭により清熱をはかるとよい。
2. 『金置要略』血療虚労病脈証併治篇
「血痺の病は何よりこれを得るや。
……それ尊栄の人は骨弱く肌膚盛ん、
重ぬるに疲労に因って汗出で、
臥して不時に動揺し、加うるに微風を被り、遂にこれを得る。
ただ脈自ら微渋、寸口に在り、関上は小しく緊なるを以て、
針して陽気を引くべし。
脈をして和せしむれば緊去って則ち癒ゆ。」
と述べている。
脈微は陽気微の現れであり、脈渋は血滞の現れである。
「関上少しく緊」は、
風邪を外感し邪が浅い部位にあることを証明するものである。
陽気を導引して営衛を通調し、
陽気が順調にめぐれるようにすれば
邪気自ずと去り、脈緊も和す。
血痺の証は、多く局所性の肌膚麻木不仁をひきおこす。
脈象から全体的に治療する際には
曲池,三陰交により陽気を導引し
去風行血、営衛の通調をはかるとよい。
陽気が通暢して営衛が調和すれば
脈緊自ずと和し,血痺は治癒する。
3. 「霊枢」五禁論
「著療移らず、胭(臙)肉破れ、身熱し、
脈偏絶するは、これ三逆なり」
これは湿邪が偏盛となり、経脈に留滞した着痺を指している。
この場合,胭肉の萎縮、身熱がみられるが、これは湿邪が化熱して形を損傷し痿となったものである。
その際の脈は、本来洪盛滑実または滑数がみられるべきである。
しかし反って細弱または微欲絶がみられる場合は形気敗傷がその要因である。
曲池、陰陵泉により湿熱の清化をはかり、
湿熱が少し去るのを待って、
合谷、太白により健脾益気をはかるとよい。
このように順を追って施治すれば治癒に向かうことがある。
つづく
《参考文献》
『臨床経穴学』 著:李世珍
『穴性学ハンドブック』 著:佐藤弘 伴尚志
『図解・十四経発揮』 本間 祥白 著