前回からの続きです。

中医臨床のための中薬学 P 23

「泄(降・瀉)・燥・堅に働き、清熱・瀉下・燥湿・降逆などの効能をもつ薬物は大多数が苦味(にがい)である。」

との事でした。

今回はその内、燥の性質を苦寒薬を絡めてご紹介します。

漢方生薬実用辞典 P19

「湿を乾燥させ取り除く作用。湿証に使用される。蒼朮・黄連・黄芩・苦参などの燥湿薬には苦味が多い。」

とあります。

日本は島国で湿度が高く、美食に溢れているので湿証も多く、使うシーンも多いです。

しかし個人的に苦味は使い方が難しい印象があります。

 

例えば苦味が使われる脾胃湿熱証ですが、一時的に湿熱が存在しているので苦寒薬で冷ましながら乾燥させて実邪を取り除く必要があります。

ただ、背景に脾胃の虚が存在している事が非常に多いので、漠然と使い続ければその苦寒薬によって逆に脾胃がやられてしまう事もあります。

例えば

「お酒の際に半夏瀉心湯が良いと聞いて飲んでみたが、飲んでみるとお腹が弱って食欲不振に陥った」

様なケースもあります。

半夏瀉心湯には脾胃を保護するための生薬(乾姜・人参・甘草・大棗)が入っているとはいえ、脾胃の虚があり、熱もない状態で使うと苦寒薬にやられて脾胃が傷付けられます。

湿証があれば場合によっては苦温薬を選薬した方が良いのですが、上記の様な場面(湿熱証)でこの薬を選択すると熱が助長され、それはそれで問題が起きます。

他にも意図しない長期服用で体が乾き過ぎてしまったりも起こるので、苦味を使うシーンはやめ時も大切かと思います。

参考資料

漢方生薬実用辞典 ガイアブックス 三浦於莵監修

中医臨床のための中薬学 東洋学術出版社 神戸中医学研究会

 

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