引き続き甘味の緩について書いていきます。
前回は人の体を甘味が緩めるといった内容でした。
今回は「中薬の毒性を緩める」といった内容に踏み込んでいきます。
まず、中薬の毒を緩めるとは言っても毒とは何なのか。
概念をはっきりさせていきます。
素問五常政大論篇の最後の方に毒についての記載があるので少しご紹介していきます。
現代語訳 黄帝内経素問下巻 P212
「黄帝がいう「有毒の薬物と無毒の薬物には、服用方法に一定の規則はあるのか。」
岐伯がいう「病気には長期化したものと発病直後のものとの区別があり、処方には大きなものと小さなものとの区別があるので、有毒の薬と無毒の薬との服用方法にも当然一定の規則があります。およそ、強度の毒性をもつ薬は、病の十分の六を除去し、それ以上服用してはいけません。平常の毒性を持つ薬は、病の十分の七を除いて除去し、それ以上服用してはいけません。」
同書籍 P206
「【注釈】毒ー有毒の物質を指すが、薬物もその中に含まれる。上古の人々は、有毒の物質は、全て作用が過激化した五行の気によって生み出されるとみなした。」
意釈神農本草経
「はげしい病には、それ相応に、毒薬、すなわち作用の激しい薬物を用いる。」
つまり、毒薬=激しい五行の気によって生み出された薬 であり、激しい病の時に使う薬。
と言えます。
そういった時に、方法はいくらかありますが一つが甘味のものと一緒に用いる方法です。
代表的な中薬では甘草が該当し、
国訳本草綱目 第四巻 P1
「諸薬の中でも甘草は君の地位にあるもので、七十二種の乳石の毒を治し、一千二百般の草木の毒を解し、あらゆる薬を調和するの功がある」
甘草以外にも蜂蜜もその様な功を持ち、
中医臨床のための中薬学 P 15
「蜜炙:蜂蜜とともに炙る。甘平の蜂蜜は補中・緩急・潤肺・解毒などに働くので、補中益気・潤肺止咳の効能を増強したり、薬性・毒性を緩和するなどの目的で行う。」
甘味によって激しい薬物の性質を緩和して受け入れやすくしていると思われます。
そう考えると超烈な薬の代表格である四逆湯(附子・乾姜・炙甘草)に含まれる甘草は地味に見えて、無くてはならない大切な存在と言えます。
参考資料
意釈神農本草経 築地書店 浜田善利、小曽戸丈夫共同編著
国訳本草綱目第四巻 春陽堂
現代語訳黄帝内経素問下巻 東洋学術出版社 石田秀実監訳
中医臨床のための中薬学 東洋学術出版社 神戸中医学研究会編著