引き続き甘味の持つ力、補について書いていきます。
前回は甘温と脾について書きました。
その中で、
脾胃学説の臨床 P204
「「甘」には甘温と甘涼の区別があるが、陽不足のものは甘温がよく、陰不足のものには甘涼が良い。」
とご紹介しました。
今回は陰不足の甘涼が良いとの内容を掘り下げていきます。
この理解は葉天士が
同書籍 P206
「葉天士はまた「胃は陽土となす。宜しく涼し、宜しく潤すべし」といっている。」
といった内容にも繋がります。
葉天士は温病学の発展に大きく貢献した人物です。
その中でも
中国医学の歴史 P629
「胃の腑の生理的作用についての認識をさらに深め、「胃は納食を主り、脾は運化を主る。脾は宜しく昇らば則ち健かにして胃は宜しく降らば則ち和す。」「脾は剛燥なるを喜び、胃は柔潤なるを喜ぶ」などの観点から「養胃陰」の法の創始をなし、李杲(東垣)による脾胃学説を発展させる上で大きな影響を与えた。」
と紹介される様に胃陰虚の治法を創作した点を評価されています。
具体的には
中医臨床大系 温病学 P134
「邪熱已退・肺胃傷陰
本証は、気分の後期ですでに消退したが、肺胃傷陰を招いている症候である。低熱は陰虚内熱の象である。口咽の乾燥と口渇は肺胃傷陰により、津液が欠乏していることを示している。乾咳は肺陰の欠損によって肺が乾き、気が逆行するからである。舌紅苔少、脈の細または細数は、肺胃傷津の象である。」
といった様に温病のダメージで肺胃の陰分がやられた時に使います。
この様な時に同じ甘味でも甘温の生薬を使うと増悪します。
該当する生薬は麦門冬・沙参など滋陰薬に属するものに多く含まれます。
参考資料
中医臨床大系温病学 人民衛生出版社
中国医学の歴史 川井正久訳 東洋学術出版社
脾胃学説の臨床 (財)東洋医学国際研究財団