こんにちは。
本院受付の日下です。
今回は五味の一つ、辛味の持つ(散・行)の内の行の続きを書いていきます。
前回の記事では行気について書いていき、
方剤として使われるシーンとしては、
1.そこに気滯が生まれている
2.気滯が生まれやすい状況を予防する
シーンがあるとご紹介しました。
今回は2のご紹介です。
今は中薬学をテーマにしていますが
方剤を絡めた方が説明しやすいので
少し方剤学の分野の話にもなります。
また、辛味も内容に含まれますが、それに限った話ではない事をご了承ください。
一例を出すと帰脾湯の木香です。
薬対論 P220を見ると木香は人参との組み合わせの説明で
「辛苦、温通の効能があり、芳香燥列の気で、全身の気機(人体内の動く気のめぐり)を疏通す ることができる。
〔組み合わせの効能〕滋膩呆滞(生気がない、鈍い)を取り除く効果がある。
また、人参の効能 範囲が広がり、気滞を兼ねる気虚に使用してもよい。」
とあります。
この理解には辛苦と甘味、昇降浮沈を絡める必要があり、
まだご紹介していない分野も含まれるため説明仕切れません。
ただ、辛味に理気作用によって人参といった補剤の停滞を防いでいる一面も含まれる内容です。
岡本一抱子は医学三蔵弁解 P146にて
「補剤というものは集めて泄らさないようにするものです。
人参 白朮 黄耆 甘草の甘薬は、補渋するだけであれば反って気分の流行することを得にくいものです。
めぐらなければ充たしにくく、充ちなければ補とは言えません。ですから木香があり、補中しながら升降の気を通行させて いるわけです。」
と言いましたが、この内容には一部辛味の理気作用が含まれるものだと思います。
同書籍にて補中益気湯の陳皮の辛味についても触れられています。
《参考資料》
・薬対論 南山堂
・医学三蔵弁解 たにぐち書店 岡本一抱子著