「公孫」について学んでいきます。
今回は公孫と絡穴の関係について調べました。
「公孫」
足太陰脾経:絡穴
八脈交会穴:衝脈
<主治>
太陰脾経の絡穴であることから、
「理脾和胃」「調養気血」
そのことで、「通調腸腑」「消食化滞」「健脾祛湿利水」「止血」が導き出される。
公孫の命名由来については『中医雑誌』に
「脾は中土に居し、四傍を灌漑する。中央には黄帝がおり、四方を君臨している。
黄帝の性は公孫であり、したがって此れを名とする」
公孫は、足太陰脾経の絡穴であり、衝脈に通じており、通腸和胃、平衡降逆の作用がある。
脾、胃、腸、腹、胸、膈部の疾患を主治する常用穴である。
本穴は、足太陰脾経の経穴であり、脾を治す作用がある。
また足太陰脾経の絡穴は腹内に入り、胃腸を絡い、また衝脈に通じている。
そのため、臨床上では足太陰脾経の経穴、
衝脈に通じる八脈交会穴としてよく用いられる。
<治療範囲>
① 脾、胃、腸病
足太陰脾の経脈は、公孫から別れて出て、走りて足陽明胃経に入る。
またその一支は別れて腹に入り胃腸に絡す。
足太陰脾経は腹に入り、脾に属し、胃に絡す。
またその別経は別れて共に巡り、腹に入り、脾胃を経過し、
上りて心に通じ、咽に結し、舌中を貫く。
足太陰の巡行する胃腸、脾、胸腹部に起こる病変に用いる。
② 衝脈病
※②衝脈病については次回記載します。
<古典考察>
『霊枢』 経脈編
「足太陰之別、名曰公孫。 去本節之後一寸、別走陽明。 其別者、入絡腸胃。
厥気上逆則霍乱。 実則腸中切痛。
虚即誇張。取之所別也。」
足の太陰の別絡は、起点の穴を公孫という。
足の大指の本節の後一寸の処から起こり、別れて陽明経脈に走る。
別れて出たものは、上行して腹に入り、胃腸を絡う。
この絡脈による病として、その厥気が上逆した場合は発病して霍乱となる。
邪気が実した場合は腸中が刀で切られたように疼痛する。
邪気が虚した場合は腹が誇張する。
治療は公孫を取る。
『脈経』
飲食不消、腹苦脹満、体重節痛、大便不利、脈微緩にして長とあり、
慢性疾患への広がりをもたせる。
ただし季夏(太陰暦6月)に公孫を刺せとあり、
脾胃病のなかでも湿熱の存在を疑う余地を残す。
また、胃気が衰え、関脈が絶えんとする状態を主治するともある。
病性を問わず脾病に使えることを提示しているのではないだろうか。
『傷寒論』166条
「傷寒汗発し、もしくは吐し、もしくは下し、解して後、
心下痞鞕し、噫気除ざるものは、
旋覆代赭石湯(せんぷくたいしゃせきとう)これを主る」
傷寒で発汗し、または吐法、下法により、
表は解したが中陽気虚となり痰飲が内停すると、
心下痞鞕や胃気上逆による噫気がおこる。
鍼灸で治療する場合は、脾兪、陰陵泉、公孫、豊隆により
健脾去痰、和胃降逆を図るとよい。
脾胃虚が本来虚していた病人が、表邪によって誘発され発病した。
気逆が比較的重篤で胃虚により痰飲が生じ、肝気が上逆したことにより
生じた症状である。
脾胃の働きを高めれば心下痞を解き、気の昇降が調和されれば
噫気を治療することができる。
[治則] 調肝理気・和胃消痞
その他、心病に用いていることも興味深いです。
痰膈涎悶・煩心・心痛・気膈・胸中刺痛など
次回は、公孫と衝脈との関わりについて学んでいきます。
つづく
《参考文献》
『臨床経穴学』 P.221 李世珍 著
『中医臨床』 第33巻 第4号 p.134 穴性論 著:李昇昊 他
『現代語訳・黄帝内経素問』 中巻 東洋学術出版
『現代語訳・黄帝内経霊枢』 上巻 東洋学術出版
『傷寒論』鍼灸配穴選注 単玉堂 木田一歩 訳