Dr.Yellow
Dr.Yellow / 新大阪駅にて

こんにちは、為沢です。
最近、東京への往診に向かうため
新大阪駅から新幹線に乗車することが多いのですが、
偶然、黄色い新幹線が駅に停車しておりました。
この車両は通称「Dr.Yellow」といい、 新幹線区間において
線路のゆがみ具合や架線の状態、信号電流の状況などを
検測しながら走行し、新幹線の軌道・電気設備・信号設備
を検査するための事業用車両であります。
運行状況が時刻表に載っておらず
滅多にお目にかかれないため、鉄道マニアの方の間で
幸せの黄色い新幹線” と呼ばれており、
遭遇した人は何かいいことがあるそうですよ。
本当に何かいいことがあれば嬉しいのですが、
今のところありません(笑)


では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)六十二章と六十三章。
六十二章では、発汗法を行った後、
津を傷つけ血虚になった場合の証治について。
六十三章では、発汗法を行った後、
熱邪が肺に乗じた場合の証治について述べております。


弁太陽病脈証并治(中)六十二章

發汗後、身疼痛、脉沈遅者、
桂枝加芍藥生薑各一兩人参三兩新加湯主之。方二十五。
桂枝三両、去節 芍藥四両 甘草二両、炙 人参三兩 大棗十枚、擘 生薑四両
右四味、以水一斗二升、煮取三升、去滓、溫服一升。
本云、桂枝湯今加芍薬生薑人参。

和訓:
発汗して後、身疼痛し、脉沈遅なるものは、
桂枝加芍薬生薑各一両人参三両新加湯之を主る。方二十五。
桂枝三両、節を去る 芍薬四両 甘草二両、炙る 人参三両 大棗十枚、擘く 生薑四両
右六味、水一斗二升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。
本に云う、桂枝湯今芍薬生薑人参を加うと。


發汗後、身疼痛、脉沈遅者
発汗をあとでも痛みが依然残り、
脈遅沈を示していれば表証が解けていないのではなく、
発汗法を行ったために津が傷ついて血虚となり、
身体を栄養することができないために起こったのである。

桂枝加芍藥生薑各一兩人参三兩新加湯主之
治療は桂枝湯を用いて営陰を和し、
芍薬・生薑をさらに加えて血源を益して
陽気を通じさせるとよい。
人参は胃気を益して津を化し、生血の源を助ける。
そしてこれより血脈を充実させれば治るのである。

提要:
発汗法を行った後、津を傷つけ血虚になった場合の証治について

桂枝加芍藥生薑各一兩人参三兩新加湯
方義

桂枝湯こちらを参照↓
【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上) 十二章・十三章(桂枝・芍藥・甘草・生薑・大棗)

人参
人参

人参
基原:
ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。
人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、
脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と一身の気を主る肺気の充盈する
ことにより、
一身の気を旺盛にし、大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、
脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、
心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、
もっとも主要な薬物である。

提要:
発汗法を行ったあと、津を傷つけ血虚になった場合の証治について

訳:
発汗したあと、身体に疼痛が出現し、脈象が沈遅であれば、
桂枝加芍藥生薑各一兩人参三兩新加湯で治療する。
桂枝三両、皮を除く 芍薬四両 甘草二両、炙る
人参三両、皮尖を除く 大棗十二個、裂く 生薑四両
右の六味は、一斗二升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服する。
別本には、桂枝湯に芍薬生薑人参を加えたもの、とある。


六十三章

發汗後、不可更行桂枝湯、汗出而喘、無大熱者、
可与麻黄杏仁甘草石膏湯。方二十六。
麻黄四両、去節 杏仁五十箇、去皮尖 甘草二両、炙 石膏半斤、砕、綿裹
右四味、以水七升、煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取二升、
去滓、溫服一升。本云、黄耳杯。

和訓:
発汗して後、更に桂枝湯を行うべからず。汗出でて喘し、大熱なきものは
麻黄杏仁甘草石膏湯を与うべし。方二十六。
麻黄四両、節を去る 杏仁五十箇、皮尖を去る 甘草二両、炙る 石膏半斤、砕く、綿で裹む
右四味、水七升を以て、麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、一升を温服す。
本に云う、黄耳杯と。


發汗後、不可更行桂枝湯、汗出而喘、無大熱者
発汗法を行った後でも表証が解けない場合は、
桂枝湯で再度解表を行っていく。
いま汗をかいて喘いでいるが、しかし肌表に大熱はない。
これは熱が盛んで上方の肺を塞いでいるからである。
裏熱があれば桂枝湯を用いることができないので
麻黄杏仁甘草石膏湯で肺の熱を取り、
喘いでいるのを鎮めていけばよい。

麻黄杏仁甘草石膏湯

方義

麻黄
麻黄

麻黄
基原:
マオウ科のシナマオウをはじめとする
同属植物の木質化していない地上茎。
去節麻黄は節を除去したもの。
辛温・微苦で肺・膀胱に入り、
辛散・苦降・温通し、肺気を開宣し腠理を開き
毛窮を透して風寒を発散するので、
風寒外束による表実無汗や肺気壅渇の喘咳の常用薬である。
また、肺気を宣発して水道を通調するとともに、
膀胱を温化して利水するので、
水腫に表証を兼ねるときにも適する。
辛散温通の効能により、
散風透疹・温経散寒にも使用できる。

杏仁
杏仁

杏仁
基原:
バラ科のホンアンズ、アンズなどの種子。
苦味のあるものを苦杏仁、
苦味がなく甘味があるものを甜杏仁と称するが
植物形態的な違いはない。

杏仁は苦辛・温で、肺経気分に入り、
苦降・辛散により下気・止咳平喘するとともに
肺経の風寒痰湿を疏散するので、
外邪の侵襲や痰濁内阻による
肺気阻塞で咳喘・痰多を呈するときに適する。
熱には清熱薬を、寒には温化薬を、
表邪には解表薬を、燥邪には潤燥薬を、
それぞれ加えることにより邪実に対処することができる。
また、質潤で油質を含み、
滑腸通便の効能をもつので、腸燥便秘にも有効である。

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。

石膏
石膏

石膏
基原:
含水硫酸カルシウム鉱石。
組成はほぼCaSO4・2H2Oである。
石膏は辛甘・大寒で、肺・胃の二経に入り、
甘寒で生津し、辛で透発し、
大寒で清熱し清熱瀉火するとともに散熱し、
外は肌表の熱を透発し内は肺胃の熱を清し、
退熱生津により除煩止渇するので、
肺胃二経の気分実熱による
高熱汗出・煩渇引飲・脈象洪大、
肺熱の気急鼻扇・上気喘咳、
胃火熾盛の頭痛・歯齦腫痛
口舌生瘡などに、非常に有効である。

麻黄杏仁甘草石膏湯について
辛凉宣泄と清肺によって肺の壅熱を除き平喘止咳する。
主薬は辛温の麻黄と辛寒の石膏で、麻黄は平喘に石膏は清肺熱に働く。
さらに、辛寒と辛温の配合であって辛寒が大量にあるために、
温性が消失して凉性となり辛味は助長し合うので、
性味が辛凉に変化し、肺の壅熱を宣泄する効果が得られる。
杏仁は肺の宣発を補助するとともに、
苦降で肺気を下降させて止咳平喘をつよめる。
炙甘草は和中と諸薬の調和に働く。
全体で辛凉宣泄・清熱平喘の効能が得られる。

提要:
発汗法を行った後、熱邪が肺に乗じた場合の証治について

訳:
発汗させた後は、再び桂枝湯を用いてはならない。
もし汗が出て息が喘ぎ、発熱がそれ程ひどくない場合は、
麻黄杏仁甘草石膏湯で治療するとよい。処方を記載。第二十六法。
麻黄四両、節を除く 杏仁五十個、皮尖を除く 甘草二両、炙る 石膏半斤、砕く、布で包む
右の四味は、七升の水で、二升減るまで麻黄を煮て、浮かんだ泡を除き、残りの諸薬を入れ、
三升になるまで煮て、滓を除き一升を温服する。別本には黄耳杯に一杯とある。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

為沢

4 コメント

  1. 車で出かけた時、娘がずっと外を見ながらなにやらぶつぶつ。
    しばらくして「あっ、クロッキーだ!やった~」というので何のことか聞いたら
    「黒いナンバープレートに黄色いナンバーの車を見たらイイことがある」んだとか。
    (軽自動車の営業車ですよね)
    ちなみに、普通の軽のことは「キクロ」、普通車の営業車は「ミドッシー」(緑と白だから)と言うのだそうです。
    子供の頃ってこの手のゲン担ぎ?みたいなのありましたよね。

    NHKの夜の番組で漢方治療が取り上げられていました。
    鍼灸のことは触れられてなくちょっと・・・いやかなり残念でしたが東洋医学の特徴である問診、舌診、腹診のことなどはきちんと紹介されていました。
    東洋医学の正しい知識を多くの人に知ってもらえるきっかけになればいいなあと思いました。

    • おコメさんへ
      娘さん、かわいいですね。ナンバープレートの色を見てるんですね。
      僕は子どもの頃「横断歩道の白いところだけ歩いて渡ればいいことアリ」のような
      思いつきのルール作って遊んでましたよ(笑) 何がいいのかよく分かりませんが。

      NHKで漢方治療、四診について特集されていたんですね。
      鍼灸学は漢方治療に属しますが、おそらくおコメさんが見られたのは
      漢方=湯液学についての特集だったんでしょうね。
      鍼灸と湯液の違いは手段であって、その基礎となる考え方はどちらも一緒ですよ。
      しかし、今の主流は西洋医学を基礎とした鍼灸や湯液であるのが現状ですので、
      鍼灸でなくても、本来の東洋医学が紹介されていたとすれば、僕は嬉しいです。

      いつもコメント頂きありがとうございます!

      • 湯液学という言葉は初めて聞きましたがきっと世間一般では漢方薬と言われているものですよね?
        番組は漢方薬メインでした。
        司会の有働アナウンサーが実際に自分の体の不調を治療していく様子を紹介。
        スタジオでもゲストのお笑い芸人2人が診察をうけました。
        出演者から過去に漢方薬を買ったら5万円請求されたことがあった、東洋医学と聞くと怪しい感じがするとのコメント。
        それに答えるように登場した2名の女医さんはどちらも「有名大学付属の漢方専門の先生」で安心感を持たせ、
        実際に有働アナの治療を密着取材していくことで治療の流れがよくわかるようにしていました。初回だけではなくその後3~4回、診察の様子が紹介され治療していくうちに体の様子が変わっていき処方される薬も変わっていく過程もちゃんと説明されていました。
        会計もそこでは5千円程度で、お財布からお金を出して支払いをし、もらった薬を見せてくれるところまで映す丁寧さでした。

        後半には漢方薬の原料の紹介。市場で粉になる前の現物が登場、案の定サソリや
        冬虫夏草や琥珀などの石類も紹介され、スタジオから「石なんか、いいんですか~?」との言葉も飛んでいました。

        土曜の夜の単発のバラエティ形式の番組ではありましたが全く知識のない人にもわかりやすいよう東洋医学の良さを知ってもらおうとする意図は汲み取れ、ゴールデンタイムにNHKもやるな~と少し感心しました。
        鍼灸もちょっとは紹介してほしいと思いましたが、有働さんが腹診したときおなかを直接出さず服の上からで「実際は服の上からは腹診はしません」みたいなテロップが流れたくらいなのでNHK的にも難しかった?のかもしれません。
        お笑い芸人のほうは上半身裸で診察を受けていたので逆に服着ててもできるのに・・・と思いましたが、こちらはむしろ笑いをとる為に脱いでいたようでした。

        気になったのが何種類かの漢方薬が簡単に一般の人の実例とともに「この薬はこういう症状に効く」と説明されていたことです。
        少し前に別のTV局で「麻黄湯がインフルエンザによい」と報道されていた記憶があります。
        その人その人で体質が違うと思うのですが安易にこの病気にはこの漢方薬って決めていいのでしょうか?
        私も風邪を引いたときに葛根湯を飲んだことがありましたが・・・。
        簡単に買える市販の薬程度ならそこまで考えなくてもいいのかな?

        • おコメさんへ
          番組の詳細を教えて頂きありがとうございます。
          文章を拝見したところ、一般大衆向けに分かりやすい構成でまとめた感じですね。
          「漢方薬に石を使うのか?」等は、素朴な疑問で全然構わないのですが、
          「麻黄湯はインフルエンザに効く」という解説は
          西洋医学的な見解であって、東洋医学のそれではないので我々専門家からすると非常に残念です。。
          また、「〇〇病には××」といったコピーは製薬会社が商品を売るために作った宣伝文句であって
          「カゼには葛根湯」も然りです。市販の漢方薬でも体質や病の傾向を把握してから服用しないと全く効かないですよ。
          おコメさんの仰られる通り、体質や病の成り立ちが違えば処方する薬も違って参ります。

          今回は長文のコメント頂きありがとうございました。
          そのNHKの番組の内容は残念ではありましたが、おコメさんには当院の施術を受けて頂き、
          鍼を通して東洋医学の本質がおコメさんに伝わっている事に大変嬉しく思いました。
          本当に嬉しいです。ありがとうございました!

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