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過去のブログ
迎随の補瀉と経絡
迎随の補瀉に見る「令和」?
補瀉迎随の論
ご存知「迎髄の補瀉」について、
昨年ブログで少しずつ考えてきました。
もう一度基本に戻って
『霊枢』の内容から
迎髄の補瀉についてを考えてみたいと思います。
————————————————
『霊枢』九鍼十二原論篇(第1)より 後半部分
<原文>
往者為逆、
来者為順、
明知逆順、正行無問。
迎(逆)而奪之、悪得無虚。
追而済之、悪得無実。
迎之隨之、
以意和之、鍼道畢矣。
<読み>
往(い)く者を逆となし、
来たる者を順とし、
明らかに逆順を知れば、正行して問うこと無し。
迎いて(逆いて)これを奪わば、悪(いず)くんぞ虚無きを得ん。
追いてこれを済(すく)わば、悪(いず)くんぞ実無きを得ん。
これを迎え、これに隨い、
意を以てこれを和すれば、鍼道畢(お)われり。
—————————————————–
上から
紐解いていきますと、
『霊枢』小鍼解篇(第3)より
往者為逆:
往者為逆者、言気之虛而小。小者逆也。
(「往者為逆」とは、気の虛にして小なるを言う。小なるは逆なり。)
来者為順:
来者為順者、言形気之平。平者順也。
(「来者為順」とは、形気の平なるを言う。平なるは順なり。)
明知逆順、正行無問:
明知逆順正行無問者、言知所取之処也。
(「明知逆順、正行無問」とは、取る所の処を知るを言うなり。)
・正行:その通りに実行して
・無問:問うこと無し
・言知所取之処也:どのような場合にはどのような処置をするかということを知っている
(『鍼灸医学大系』解説より)
<意味>
明確にこの逆順の状態を知り、
それに従って(その通りに)、
なんら躊躇することなく(問うこと無く)
処置を実行して
少しの疑問もないのである。
迎(逆)而奪之:
迎(逆)而奪之者、写也。
(「迎(逆)而奪之」とは、写するなり。)
「迎」も「逆」も説文解字によると全く同じ意味であり、
⇒⇦のように、向こう側から来るものに向かって、こちらから出向いていく意。
(『鍼灸医学大系』解説より)
<意味>
来たる邪気を迎えてこれを奪すれば(瀉すれば)、
悪得無虚:
悪:いずくんぞ(反語) (どうして・・・か)(辞書より)
→どうして、虛が無くなることがあろうか。いや、あるだろう。
<意味>
必ず虚となるであろう。
追而済之:
追而済之者、補也。
(「追而済之」とは、補するなり。)
<意味>
往く邪気を追ってこれを益すれば(補すれば)、
悪得無実:
悪:いずくんぞ(反語) (どうして・・・か)(辞書より)
→どうして、実が無くなることがあろうか。いや、あるだろう。
<意味>
必ず実となるであろう。
→すなわち、ここでの意味は
正常な状態になるということでは無く、
邪実に対して補法を行うと
実証となってしまうということが
書かれている。
迎之隨之、
以意和之、鍼道畢矣。
<意味>
これを迎え、あるいはこれに随う刺法を行う場合には、
術者の意(気持ち)もまたこれに
和さねば(調和しなければ)なりません。
以上で鍼の道の一段落(概要)であります。
(『鍼灸医学大系』解説を参考)
—————————————————————
以上、意味の部分だけをつなげると、
以下のようになります。
(注:最初の文章の主語は、おそらく
ひとつ前の文章の「上工」になると思いますので
最初に「上工は」を補っています。)
<意味>
(上工は)明確にこの逆順の状態を知り、
それに従って(その通りに)、
なんら躊躇することなく(問うこと無く)
処置を実行して少しの疑問もないのである。
来たる邪気を迎えてこれを奪すれば(瀉すれば)、
必ず虛となるであろう。
往く邪気を追ってこれを益すれば(補すれば)、
必ず実となるであろう。
これを迎え、あるいはこれに随う刺法を行う場合には、
術者の意(気持ち)もまたこれに
和さねば(調和しなければ)なりません。
以上で鍼の道の一段落(概要)であります。
さて、<意味>を読んで頂くと分かりますが、
一般的にいわれている
「迎髄の補瀉」の内容と合致しません。
「実」の意味は「邪実」であり、
それを「正気が充実している」の誤った意味に解釈すれば
「迎髄の補瀉」の内容に合致しそうではあります。
なぜこのように解釈されてきたのか、
単に誤って解釈されたのか、
実際の臨床における手技に無理矢理原文の解釈を合わせたのか、
分かりませんが、
この原文の内容が
「迎随の補瀉」の根拠となっているとすると、
原文の意味をそのまま解釈した場合、
その根拠が乏しくなってしまうと
いえるのではないでしょうか。
続きます。
■参考文献
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢①』 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『霊枢講義』 学苑出版社
電子辞書 CASIO EX-word xd-n7300
興味がございましたら、ぜひ参考文献もお読みください。