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こんにちは、大原です。
(前回の記事 → 『霊枢』の「終始」 その11)
当初、この記事は
『霊枢』に出てくる「終始」という言葉には
非常に重要な意味がありそうで、
それを紐解いていこうという主旨でした。
すでに、少し前の記事に
そのまとめになるような内容を書かせて頂きましたが
(『霊枢』の「終始」 その6)
「終始篇」は重要な内容が続いてますので
引き続き確認していこうと思います。
今回は
『霊枢』終始篇の最後の方に移りますが、
刺鍼の法則の全般に関わることついて
述べられています。
<原文>
凡刺之法、必察其形氣。
形肉未脱、少氣而脉又躁、
躁厥者必為繆刺之。
散氣可収、聚氣可布。
深居静処、占神往来、閉戸塞牖、魂魄不散、専意一神、(精氣之分)、
毋聞人聲、以收其精。
必一其神、令志在鍼。
淺而留之、微而浮之、以移其神、氣至乃休。
<読み>
凡そ刺の法は、必ず其の形氣を察す。
形肉未だ脱せず、少氣にして脉又躁、
躁厥する者は必ずこれを繆刺することを為す。
散氣は収すべく、聚氣は布すべし。
深居し静かに処て、神の往来を占い、戸を閉じ牖を塞ぎ、魂魄散ぜず、
意を専らにし神を一にして、(精氣の分)、
人聲を聞くことなく、以て收その精を収む。
必ず其の神を一にし、志をして鍼に在らしむ。
浅くしてこれを留め、微にしてこれを浮し、以てその神を移し、氣至って乃ち休む。
刺法の法則が書かれています。始めの意味は
必ずその患者さんの形体的な強弱と元気の盛衰とを診察する。
形体の肌肉は未だ消痩しておらず、
気だけが少気であって
また脈が速くかつ乱れており心はそわそわして頭に乱れがあり
足がひどく冷えているような患者は謬刺の法を用いるべきである。
となり、
見た目(形)はしっかりしていそうな人でも、
気が少ない(少気)場合は、
それに対する治療が必要であると述べられています。
さて謬刺の法ですが、
具体的な説明などは『素問』繆刺論篇(63)にあり、
謬刺とは何かが書かれています。
はじめの部分からみていきましょう。
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『素問』繆刺論篇(63)
黄帝問曰、余聞繆刺、未得其意。
何謂繆刺。(何を謬刺というのか?)
岐伯對曰、
夫邪之客於形也、必先舍於皮毛。留而不去、入舍於孫脉。
留而不去、入舍於絡脉。
留而不去、入舍於経脉。
内連五蔵、散於腸胃。
陰陽倶感、五蔵乃傷。
(邪が入り込むのは必ずまず皮毛からで、
もし邪が留まって去らなければ
孫脈→絡脈→経脈と入り込み、さらには五臓も傷られる。)
此邪之従皮毛而入、極於五蔵之次也。
如此、則治其経焉。
今邪客於皮毛、入舍於孫絡、留而不去、
閉塞不通、不得入於経。
流溢於大絡、而生奇病也。
(邪が大絡に入った場合は奇病が生じる。)
夫邪客大絡者、
左注右、右注左、上下左右、与経相干、而布於四末、
其氣無常処、不入於経兪、命曰繆刺。
(大絡に邪気が入り込んだ場合(行き場所を探して)右往左往し、
上下に行ったり来たり致します。
経絡に正気が満ちておりますと、互いに反発しながら邪気は次第に四肢末端に追いやられます。
(正気と邪気のせめぎあう場所が移動するので)痛む場所も一定でなく
経脈には入り込んでいない。
(絡脉や大絡に邪が留まっている状態を刺しますが、)その場合の刺法を繆刺という。)
とあり、ここまでで謬刺とは
絡脈や大絡に邪が留まって病を生じているときに用いる刺法と
書かれています。以下、謬刺の説明が続きます。
帝曰、願聞繆刺、以左取右、以右取左奈何。
其与巨刺、何以別之。
岐伯曰、
邪客於経、左盛則右病、右盛則左病、
亦有移易者。左痛未已而右脉先病。
如此者、必巨刺之。
必中其経、非絡脉也。
故絡病者、其痛与経脉繆処。故命曰繆刺。
(病が経脈にあるときは巨刺を行い、
病が絡脈にあるときは繆刺を行う。)
帝曰、願聞繆刺奈何。取之何如。
岐伯曰、・・・(以下略)
(繆刺を行うにはどのようにするのか。)
(以下略)
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このあと、繆刺の具体例がいくつか書かれており、
どの例も
「左の病は右に取り、右は左に取る」とあります。
専門学校では繆刺の説明として
「左の病に対しては右を、右の病に対しては左を用いて治療するもの」
と教わると思いますが、
これは繆刺の定義ではなく、
具体的なやり方のみの説明であることが分かりますね。
本題の『霊枢』終始篇に話を戻しますと
繆刺の説明の後、
鍼を用いる治療者の心掛けるべきことが記されています。
長くなりましたので
次回に続きます。
参考文献:
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第15巻 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経素問 中巻』 東洋学術出版社
ご興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。