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こんにちは、大原です。
前回(『霊枢』の「終始」 その7)の続きです。
『霊枢』に出てくる「終始」というキーワードの意味を
読み解いていっていますが、その意味を
前回までの記事で大体掴めてきたのではないでしょうか。
では今回も『霊枢』終始篇の内容をみていきましょう。
前回の続きとなると、
人迎の脈(=頸動脈とされています)と
寸口の脈(=手首の脈とされています)とを
比較することで
病がどの経脈にあるのかを探るという内容が
しばらく続きます。
以下がその原文になります。
<原文>
人迎一盛、病在足少陽。一盛而躁、病在手少陽。
(意味:人迎の脈が寸口に比べ一盛の場合は、
病は足の少陽胆経にあります。
一盛であってその脈が躁なれば、病は手の少陽三焦経にあります。)
人迎二盛、病在足太陽。二盛而躁、病在手太陽。
(意味:以下同様)
人迎三盛、病在足陽明。三盛而躁、病在手陽明。
人迎四盛且大且數、名曰溢陽。溢陽為外格。
脉口一盛、病在足厥陰。一盛而躁、在手心主。
(意味:寸口の脈が人迎に比べ一盛の場合は、
病は足の厥陰肝経にあります。
一盛であってその脈が躁なれば、病は手の厥陰心包経にあります。)
脉口二盛、病在足少陰。二盛而躁、在手少陰。
(意味:以下同様)
脉口三盛、病在足太陰。三盛而躁、在手太陰。
脉口四盛且大且數者名曰溢陰。溢陰爲内關。内關不通、死不治。
人迎与太陰脉口倶盛四倍以上、命曰關格。關格者與之短期。
ここでは脈の状態を
「盛」「躁」という文字で表していますが、
これは以下のような意味があるようです。
(以下、『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』第15巻 786ページより)
「盛」:
語源は「四方から中心に寄せ集めるごとく
皿の上に山形にまとめた状態、またまとめる動作」
であり、「衰(おとろえる)」に対する言葉。
「躁」:
右の「喿」には一般に「うわずった」という意味があり、
「躁」は「足を物の表面からあげてせわしく足踏みする状態」を意味する。
ここでは「脈が躁」とあり、
ただ疾いだけでなく、なんとなくうわっ調子でもあり、
ちゃんと揃っていない状態の脈をいう。
さらに、以下、治療のやり方が記されています。
<原文>
人迎一盛。寫足少陽而補足厥陰。二寫一補。日一取之。必切而驗之、疏取之上。氣和乃止。
(読み:人迎一盛は足の少陽を瀉して足の厥陰を補す。
二寫一補。日に一たび之を取る。必ず切して之を驗す。
疏して之を上に取る。気和してすなわち止む。)
(意味:人迎一盛の場合には、足の少陽胆経を瀉し、足の厥陰肝経を補すもので、
瀉法には二穴を補法には一穴を用い、一日一回の治療を行います。
治療した直後には必ず人迎と寸口とに手をあてて
その脈象の変化を点検せねばなりません。
この際使用の穴は適当の間隔をおいて当該経脈の上に取る者であり、
また気の和が調ったならば治療を中止いたします。)
↑『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』第15巻 796ページより抜粋
人迎二盛。寫足太陽補足少陰。二寫一補。二日一取之。必切而驗之、疏取之上。氣和乃止。
(以下、読み、意味は同様)
人迎三盛。寫足陽明而補足太陰。二寫一補。日二取之。必切而驗之、疏取之上。氣和乃止。
脉口一盛。寫足厥陰而補足少陽。二補一寫。日一取之。必切而驗之、疏而取上。氣和乃止。
脉口二盛。寫足少陰而補足太陽。二補一寫。二日一取之。必切而驗之、疏取之上。氣和乃止。
脉口三盛。寫足太陰而補足陽明。二補一寫。日二取之。必切而驗之、疏而取之上。氣和乃止。
所以日二取之者、陽明(本によっては「太陽」)主胃、大富于穀氣。
(読み:日に二たび之を取るゆえんの者は、陽明は胃を主り、大いに穀気に富む。)
故可日二取之也。
(ゆえに日に二たび之を取るべきなり。)
人迎與脉口倶盛三倍以上、命曰陰陽倶溢。如是者不開則血脉閉塞、氣無所行。
(人迎と脈口と倶に盛んなること三倍以上は命じて陰陽俱に溢すと曰う。
この如きの者、開かざるときは則ち血脈閉して気行くところ無し。)
流淫于中、五藏内傷。如此者因而灸之則變易而爲他病矣。
(中に流淫して五臓内に傷る。
この如きの者は、因ってこれに灸するときは則ち変易して他病となるなり。)
凡刺之道、氣調而止。補陰寫陽。音氣益彰、耳目聰明。反此者、血氣不行。
(およそ刺の道は、気調って止む。陰を補し陽を瀉す。
音氣益々彰われ、耳目聰明なり。これに反する者は血氣行かず。)
一番最後の
「およそ刺の道は、気調って止む」に似ている表現が、
『霊枢』の他のところにも出てきてましたね。
参考:『霊枢』の「終始」 その3
続きます。
参考文献
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第15巻 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経 霊枢』上巻 東洋学術出版社
ご興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。