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こんにちは、大原です。
前回(『霊枢』の「終始」 その6)は
『霊枢』終始篇(第9)のはじめの部分から、
「終始」の意味についての解説をみていきました。
その解説からも分かったように、
「終始」には単に「初めから終わりまで」という意味だけではなく
もっと広い深い意味が込められており、
『霊枢』では
その意味を理解しておくことが鍼治療においては必要であると、
繰り返し述べられているということです。
重要なことなので何度も出てきているのでしょう!
では前回の続きをみていきましょう。
<原文>
謹奉天道、請言終始。
終始者経脉為紀。
持其脉口人迎、以知陰陽有余不足、平與不平。
天道畢矣。
所謂平人者不病。
不病者脉口人迎應四時也。
上下相應而倶往来也。
六経之脉不結動也、
本末之寒温之相守司也。
形肉血氣必相稱也。
是謂平人。
少氣者脉口人迎倶少而不稱尺寸也。
如是者則陰陽倶不足、補陽則陰竭寫陰則陽脱。
如是者可將以甘薬、不可飲以至剤。
如此者弗灸。
不已者因而寫之則五藏氣壞矣。
<読み>
謹みて天道を奉じ、請う、終始を言わん。
終始は経脉を紀を為し、
其の脉口、人迎を持し、以て陰陽の有余不足、平と平ならざるを知る。
天道畢んぬ。
所謂平人とは病まざるなり。
病まざる者は、脉口、人迎、四時に応ずるなり。
上下相応じて倶に往来するなり。
六経の脉、結動せざるなり。
本末の寒温の相守司するなり。
形肉血氣必ず相稱うなり。
是を平人と謂う。
少氣なる者は、脉口、人迎倶に少にして尺寸に稱わざるなり。
是のごとき者は則ち陰陽ともに不足して、
陽を補するときは則ち陰竭き、陰を寫するときは則ち陽脱す。
是のごとき者はまさに甘薬をもってすべく、
飲ましむるに至剤をもってすべからず。
このごときは灸すべからず。
已まざるものは、
因りてこれを寫するときは則ち五蔵の氣壊れるなり。
<語句の意味>
「謹みて」:細かに言動に気を配ること。
「天道」:最高の教訓で、ここでは陰陽の働きによって起こりつつある自然界変化の規律をいう。
「六経の脉、結動せざるなり。」:
「結」→脈が結ばれることで、時々止まってうたない脈があること。
「動」→ひどく動ずること。
つまり平人は「結」「動」の脈を打たない。
<訳>(『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第15巻 796ページより引用)
日常起こりつつある宇宙自然の現象、その間にある規律等を
つぶさに観察検討し、
それにもとづいて医学上における終始の問題について申し上げます。
終始の状態を把握するためには、
人体に存する十二の経脈を手がかりとして
その寸口部と人迎部に手をあてて、
その拍動する脈象によって、陰陽の有余不足、
正常であるか正常でないかを知るということが
その主要なものであります。
いわゆる平人というのは、病んでいないもののことであります。
病んでいない人というのは、
脈口部における拍動、人迎部における拍動が
よく四季(春夏秋冬)の季節に応じているもので、
上人迎部の脈と下寸口の脈とがよくつり合って往来するものであります。
三陰三陽六経の脈動中、どの経脈にも結滞もなければ、
変動するものもなくて正常に拍動し、内臓と手足の寒温についても異常なく、
生体の各器官はそれぞれ定められた自分の役割を守って順調に活動し、
外、肉体と、中を流動する血気とは凡てよく調和がとれているもので、
そのような状態を保っている者を平人いうものであります。
また、少気なる者というのは、
脈口部の拍動も人迎部における拍動も
ともにかすかであって、
また寸口部でうつ脈と尺部でうつ脈とが
同じようには把握できないものであります。
このような者は、つまり陰も陽もともに不足しているもので、
このような者に対し、陽を補するときには
陰に属する五臓の気は渇き、
もしまた陰(病邪)を瀉するときには
陽に属する六腑の気は虚脱状態になってしまいます。
このような病人に対しては、
甘薬を服用させてその回復をはかり、
補するにしても瀉するにしても強い薬剤を飲ませてはいけません。
このような病人に対しては灸をすることもいけません。
だからといって、このような状態の病人に対し、
瀉法を用いるときには、五臓の気は、バラバラに敗れおちてしまい、
其の生命危し。
はじめの「天道」とは
日常起こりつつある宇宙自然の現象、その間にある規律等
と言い換えているようです。
・・・「終始」の意味を適確に表現することは難しいと思いますが、
そのニュアンスを読み解いていくことが大事ですね。
続きます。
参考文献
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第15巻 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経 霊枢』上巻 東洋学術出版社
ご興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。