こんにちは、大原です。
『霊枢』には
鍼を用いるために必要な、
あらゆる内容が書かれています。
2千年以上前のものとされているため、
その文章の読解には骨が折れることが多いです。
さて、その『霊枢』の中で、
わりと多く出てくる重要なキーワードがあります。
それは「終始」という言葉です。
『霊枢』九鍼十二原篇(第1)においては
その初めの部分で
このようにあります。
九鍼十二原篇(第1) はじめの部分の読み
「黄帝、岐伯に問いて曰わく、
余、万民を子とし、百姓を養いてその租税を収める。
余はその給せずして疾病にあるに屬くを哀れむ。
余は毒藥を使被らしむることなく、用砭石を用うるなからんことを欲す。
微鍼をもって、その経脉を通じ、その血氣を調え、
その逆順出入の會を営し、後世に伝うべからしめんと欲す。
必ず明らかにこれが法をつくり、
終りて滅びず、久しくして絶えざらしめ、
用いやすく忘れ難きこれが経紀を為し、
その章を異にし、その表裏を別ち、
これが終始を為し、おのおの形あらしめ、まず鍼経を立てん。
願わくば、その情を聞かん。」
ここは最初の篇のはじめの部分なので、
『霊枢』自体のはじめの部分であるとも言えます。
この訳を『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』(第14巻)の
内容をもとにして
書きますと
「余は微鍼すなわち極めて細い鍼を用いて、
何の苦痛も感ずることなく経脈の障害を除去してその流通を良くし、
気血陰陽のバランスをよく調節し、かつ各経穴を
適切良好に運用することによって病気を治すという
区隔、経穴を設定して、これを後世に伝えたいと思うのである。
たとえ今世が終わっても滅びることのない、
永久に絶えないような立派な治療の方式を作りたい。
そして
その方法は誰にでも容易に用いることができるものであり、
また忘れがたいような治療方法の定石を作り、
一節一節ちゃんと一定の方針のもとに順序を立てて区分し、
また病気が生体の表裏いずれの部分にあるかを弁別し
これが「終始」としてなり、
鍼の道を書いた教えを確立完成しようと思うのである。
それにはどうしたら良いのか、その真の内容を聞かせて欲しい。」
となります。
「終始」というところは
あえて訳の説明の詳細を書いていませんが、
前後の文脈から
非常に深い意味がありそうだと
分かるかと思います。
さらに、
その「終始」という言葉が重要である根拠として、
『霊枢』には、この「終始」についてだけを
述べているような篇があります。
・・・それは終始篇(第9)ですが、
名前からしてその通りですね。
では、まずは終始篇(第9)の
初めの一文をみてみましょう。
原文
「凡刺之道、畢于終始、明知終始、五藏爲紀、陰陽定矣。」
読み
「およそ刺の道は終始に畢る。
明らかに終始を知り、五蔵を紀と為し、陰陽定まる。」
訳(『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』(第15巻)758ページより抜粋)
「およそ刺鍼法の法則というものは、
終始ということをもって全てを覆い尽くされるものである。
術者は終始の原理を十分認識して、
それに基づいて施術を行わなければならない。
このためには五臓六腑の状態というものを糸口にとして
整理して陰陽を定めるものである。」
しょっぱなから「終始」と二回出てきました。
「終始」とは、刺鍼の道と切っても切れない関係にあります、
と述べられています。
その前後は抽象的な言葉が並んでいるので、
その言葉の意味合いを汲み取って訳されています。
「終始」とはどのような意味なのか、
少しずつ考えていきましょう。
続きます。
参考文献
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第14巻 雄渾社
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第15巻 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経 霊枢』上巻 東洋学術出版社
ご興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。