こんにちは、大原です。
前回の続きです。
(前回:鍼灸甲乙経を読む その61

今回も文章が長いので
先に要約しますと、
ここでは
手足の経脈における血気の多少によって
身体の特定の部位・組織に影響が出るということが書かれています。
具体的には以下のような関係になります。(前回記事も含める)

足の陽明胃経 上部:頬の髭
足の陽明胃経 下部:陰毛
足の少陽胆経 上部:頬のひげ
足の少陽胆経 下部:すね毛
足の太陽膀胱経 上部:眉
足の太陽膀胱経 下部:かかと
手の陽明大腸経 上部:鼻下のひげ
手の陽明大腸経 下部:手や脇の下の毛
手の少陽三焦経 上部:眉・耳
手の少陽三焦経 下部:手の甲
手の太陽小腸経 上部:顎ひげ、顔
手の太陽小腸経 下部:掌

以下、本文と意味になります。

足少陽之上、血氣盛則通鬚美長、
血多氣少則通鬚美短、
血少氣多則少鬚、
血氣皆少則無鬚、
感於寒濕則善痺、骨痛爪枯。

足の少陽胆経上部の方に気血が盛んなときには
両頬の髭は上の耳髭まで連なり美しくして長くあります。
血が多く気の少ない場合には髭は美しくて短いものであります。
血が少なく気の多い場合には髭は少ないものであります。
血気ともに少ないときには髭がありません。
このような人は寒湿を感受しますと
よく痹病を発生し骨が痛んで
爪甲が乾枯するような症状をおこします。

足少陽之下、血氣盛則脛毛美長、外踝肥。
血多氣少則脛毛美短、
外踝皮堅而厚。血少氣多則胻毛少、
外踝皮薄而軟。血氣皆少則無毛、外踝痩無肉。

足の少陽胆経の下の方に血気が盛んでありますと、
脛毛が美しくて長く外踝は肥えます。
血が多くて気の少ないときにはすね毛は美しくて短く外踝の皮が固くて厚いです。
また血が少なくて気の多いときにはすね毛は少なく外踝の皮は薄く柔らかく、
血も気も皆少ないときは毛はなく外踝はやせて肉がありません。

足太陽之上、血氣盛則美眉、眉有毫毛。
血多氣少則惡眉、面多少理。
血少氣盛則面多肉、血氣和則美色。

足の太陽膀胱経の上部の方に
血気が盛んなときには眉が美しく特にきわだって長い毛があります。
血が多くて気の少ないときには眉は醜くく顔には小じわが多くなります。
血が少なく気が多いときには顔の肉が多くなります。
血気がよく調和いたしますと顔色が美しくなります。

足太陽之下、血氣盛則跟肉滿、踵堅。
氣少血多則痩、跟空。
血氣皆少則喜轉筋、踵下痛。

足の太陽膀胱経の下部の方が
血気が盛んですと踵の肉は満ちて堅くなります。
気が少なく血の多いときには踵は痩せて肉は落ち、
血気みな少ないときにはよくこむらがえりをおこしたり、
また踵の下が痛みます。

手陽明之上、血氣盛則上髭美。
血少氣多則髭惡、
血氣皆少則無髭。

手の陽明大腸経の上部に血気が盛んであると鼻下のひげが美しく、
血が少なく気が多いときにはこのひげは醜いものです。
血気皆少ないときには髭のないものもあります。

手陽明之下、血氣盛則腋下毛美、手魚肉以温。
氣血皆少則手痩以寒。

手の陽明大腸経の下部において血気が盛んでありますと
腋下の毛の状態が美しく手の骨の肉が充実して温かいものであります。
気血の少ないときには手は痩せ衰えていつも冷えています。

手少陽之上、血氣盛則眉美以長、耳色美。
血氣皆少則耳焦惡色。

手の少陽三焦経の上部に血気が盛んなときには
眉が美しくて長く耳の色沢がきれいです。
血も気も少ないときには耳がやつれて肉づきも色沢もみにくくなります。

手少陽之下、血氣盛則手捲多肉以温。
血氣皆少則寒以痩以寒。
氣少血多則痩以多脉。

手の少陽三焦経の下部に血気が盛んでありますと
手の甲の肉付きがよく、また、温かいです。
血も気も少ないときには手の甲の肉づきは悪く、また、冷たくなります。
もし気が少なく血が多いときには手の甲はやせて青すじがたくさん出るようになります。

手太陽之上、血氣盛則有多髯、面多肉以平。
血氣皆少則面痩惡色。

手の太陽小腸経の上部に血気が盛んなときには、
あごひげが多く顔の肉づきがよくて平らです。
血も気も少ないときには顔は痩せて色沢は悪くなります。

手太陽之下、血氣盛則掌肉充滿。
血氣皆少則掌痩以寒。

手の太陽小腸経の下部に血気が盛んなときには手のひらの肉が充満し、
血も気も少ないときには、
たなごころの肉はやせて冷たいものであります。

続きます。


参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

大原

 

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