こんにちは、大原です。
前回の続きです。
(前回: 鍼灸甲乙経を読む その58)
今回からは
『霊枢』の「陰陽二十五人(64)」の内容が
主となります。
ここまでは陰と陽とが基準でしたが
ここからは五行(木・火・土・金・水)が出てきます。
黄帝問曰
「余聞陰陽之人於少師、少師曰
『天地之間、不離於五、故五五二十五人之形、血氣之所生、別而以候』
從外知内何如?」
(少師から「天地の間、宇宙の内は万物はことごとく五行の法則によって
5つに分類されるもので、人もまたこれに応ずるものである。
一般に五五二十五というのは人の分類の一般的なやり方であるが、
血気の生ずるところ、また、外部から候して内部を知るにはどのようにするのか
ということをお聞かせ願いたい。」)
岐伯対曰
「先立五形、金木水火土、別其五色、異其五形、而二十五人具也。」
(まず五行の法則にしたがって金木水火土の5つに分類し、
その5つの形の人をさらに5つの型に分類すると二十五人という、
ひとそろいができるのであります。)
木形之人、
比於上角、蒼色、小頭長面、大肩平背、直身、小手足、好有才、好勞心、少力、多憂勞於事。
奈春夏、不能秋冬。
感而病生、主足厥陰佗佗然。
大角之人、比於左足少陽、少陽之上遺遺然。
右角之人、比於右足少陽、少陽之下隨隨然。
釱角之人、比於右足少陽、少陽之上鳩鳩然。
判角之人、比於左足少陽、少陽之下括括然。
(木型の人は五音の上角に比すべき仲間であり、
体形の特徴は、皮膚の色は蒼白、頭は小さく顔はおも長で肩は広く、
背はまっすぐで、身体は小がらでありますが
手足の格好はよく調和がとれており、才能があり、心を労しやすく
力は少なく、憂の多い事々に苦労しがちの性格です。
春夏の季節には平気でよく能え得るのですが、
秋冬には能えられないで病機にかかりやすいのです。
そしてひとたび病にかかると、
主に足の厥陰肝経の走行にあたる部分が
力が抜けたような状態となります。)
大角之人、比於左足少陽、少陽之上遺遺然。
(大角の人は、左足の少陽胆経に比すべきもので、
少陽胆経の上部の方が活力がぬけたように
柔らかくぐったりするものであります。)
右角之人、比於右足少陽、少陽之下隨隨然。
(右角の人は、右足の少陽胆経に比すべきもので、
その下部の方が固く盛り上がったようなしこりを
生ずるものであります。)
釱角之人、比於右足少陽、少陽之上鳩鳩然。
(釱角の人は、右足の少陽胆経に比べられてよいもので、
少陽胆経の上部の方が固く盛り上がったようなしこりを
生ずるものであります。)
判角之人、比於左足少陽、少陽之下括括然。
(判角の人は、左足の少陽胆経に比べられてよいもので、
少陽胆経の下部の方が何かを以てくびれているような
感じのあるものであります。)
長くなりましたので、
今回は五行の「木」の人についてだけで、
他(火・土・金・水)は次回に続きます。
ちなみに「角」という字が後半に続けて出てきていますが
これは五音の1つです。
以下、角や五音についての解説を抜粋します。
「古代中国においては角徴宮商羽という五種の音階があり
音調のごとく清濁高下の間にあるものを角と名づけ、
その角よりも次に高く、次に清なるものを徴と為し、
最も下にあり最も濁なるものを宮と為し、
次に下で次に濁なるものを商と為し、
最も高く最も清なるものを羽と為した。
したがって、
羽徴角商宮 となるのである。
音調の清濁高下は、
音律の基本となる黄鐘の宮音を根拠とし
これを増損長短することによって十二階と成し、
さらにこれが変化は非常に多いものである。
角音であれば、
その角音の中に正があり偏和太少の区別があり、
さらに分けて上角・大角・左角・釱角・判角に比類し
もって五行の五行の中毎一行を説明するものである」
参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
大原