こんにちは、大原です。
前回の続きです。
前回は、「陰と陽とを基準に、人には5種類ある」
という内容でした。
鍼灸甲乙経を読む その55
今回は、その具体的な内容についてです。

<原文>
太陰之人、貪而不仁、下齊湛湛、好内而惡出、心抑而不發、不務於時、動而後之、此太陰之人也。
少陰之人、小貪而賊心、見人有亡、常若有得、好傷好害、見人有榮、乃反慍怒、心疾而無恩、此少陰之人也。
太陽之人、居處于于、好言大事、無能而虚説、志發于四野、擧措不顧是非、爲事如常自用、事雖敗而無常悔、此太陽之人也。
少陽之人、諟諦好自貴、有小小官、則高自宜、好爲外交、而不内附、此少陽之人也。
陰陽和平之人、居處安靜、無爲懼懼、無爲欣欣、婉然從物、或與不爭、與時變化、尊則謙謙、譚而不治、是謂至治。

古之善用鍼艾者、視人五態乃治之、盛者寫之、虚者補之。

<読み>
太陰の人は、貪にして仁ならず。
下齊湛湛、ることを好みて出づることを悪み、心抑して発せず。時に務めず、動はこれを後にす。これ太陰の人なり。

少陰の人は、小しく貪して賊心あり。
人のうしなうところ有るを見て、常に得るところ有るがごとし。傷するを好み害するを好む。人の榮有るを見て、乃ち反て慍怒し、心疾にして恩無し。これ少陰の人なり。

太陽の人は、居處、大事を言うを好み、無能にして虚説す。
志を四野に発し、擧措は是非を顧みず。事を為すこと常のごとく自ら用い、事敗るといえども而も常に悔無し。
これ太陽の人なり。

少陽の人は、諟諦にして自ら貴ぶを好み、小小の官有るときは、則ち自らの宜しきを高ぶり、外交を為すを好みて内附ならず、これ少陽の人なり。

陰陽和平の人は、居處は安靜、懼懼たること無く、欣欣たること無く、婉然として物に従い、或は與に争わず、時と與に変化し、尊ばれるときは則ち謙謙とし、譚して治せず。これを至治という。

古の善く鍼艾を用いる者は、人の五態を視て乃ちこれを治す。
盛んなる者はこれを寫し、虚なる者はこれを補す」と。

→読み方からもなんとなくニュアンスが分かりますが、
5つ目の「陰陽和平の人」以外の、
「太陰の人」、「少陰の人」、「太陽の人」、「少陽の人」が
陰陽のバランスが崩れているということですね。

<意味>
太陰の人は、貪欲で情け深いところがなく、
外面的には謙虚でその態度も真実味あふれて重厚なようであるが内心は陰険なところがある。
自分の方に取り入れることは好きではあるが、他人に出してやることは大嫌いであり、
心は非常に柔和な様子で、顔色はもとより言語行動にも決してあらわすことはない。
常時専心物事に従事するということはなく何事も先に立っては事を決せず、
いつも他人の動向を見てから自分の行動を決するというのが太陰の人の性状であります。

少陰の人は、少々貪欲であり、人をそこのわんとする(傷つける、害する)心がある。
人が何かをうしなうことがあると自分は得したような気持ちとなり、人を傷つけることや人のじゃますることが好きで、人に良いことがあるとそれをねたみ、むかむかして怒り出すようなことがあります。心はあらあらしく残暴で、人に同情しこれをいつくしむというような心がない。
これが少陰の人の性状である。

太陽の人は、日常生活に於ける立ち振る舞いが行き当たりばったりで計画性がなく、
大きな事を言うのが好きで能もないのにほらをふき、あたりの人のおもわくなど意にも止めず傍若無人にふるまい、日常の動作については良いも悪いもわきまえず、何事をなすにも他人の意見を聞こうとせず、自分の勝手気ままにことをして、それに失敗してもへっちゃらで反省しようとも思わない。
それが太陽に属する人の性格であります。

少陽の人は、そのやることが精細でよく再三研究するが、
また自分で自分をとうといものであるとするようなところがあり、
ちょっとした役人になっても威張りくさって高ぶり、外交的で引っ込み思案ではありません。
それが少陽に属する人の性格であります。

陰陽和平の人は、日常における生活起居の状態は非常に安静であって、
きょろきょろするような恐懼の状態もなければ、過分な息をはずませてよろこぶようなこともなく、
いつもしなやかでやさしく仕事にも接し、他と争うようなこともなく、
時勢に反抗せず、よく時の流れに従って変化し、人から尊ばれれば自らはへりくだって対応し、
何事も話合いによって丸く治め、これという政治手段を用うることもありません。
しかしそれが最良の政治というものでありましょう。

古の善く鍼灸療法をを用うる名医は、
すべて前述したような五種類の人の形態を観察して、
それによって治療を実施したもので、
陽が盛んで陰の虚しているものに対しては陽を瀉して陰を補し、
陰が盛んで陽の虚しているものに対しては陰を瀉して陽を補す
というような治療をいたしました
」と。

→いにしえの鍼灸治療では、
その人が
先の5つのどれにあてはまるのかを見極め、
その陰と陽のバランスを補瀉によって整えて
治療すると記されています。
以下、より具体的な治療の内容について続きます。

寒いですが、空気が澄んでいますね

参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

大原

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