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【お知らせ】年末年始の鍼灸施療
こんにちは、大原です。
前回の続きです。
(前回の記事 鍼灸甲乙経を読む その53)
今回は『素問』五藏生成論篇(10)にある内容になりますが、
前回(『素問』脉要精微論篇(17))と同じく
五色の色についての
良い色と良くない色についてになります。
このように、『鍼灸甲乙経』では
『素問』や『霊枢』に書かれている内容で
関連深いところを繋げ合わせ編集していますね。
<原文>
青如草茲者死。
黄如枳實者死。
黒如炱者死。
赤如衃血者死。
白如枯骨者死。此五色之見死也。
青如翠羽者生。
赤如雞冠者生。
黄如蟹腹者生。
白如豕膏者生。
黒如烏羽者生。此五色之見生也。
生於心如以縞裹朱。
生於肺如以縞裹紅。
生於肝如以縞裹紺。
生於脾如以縞裹栝樓實。
生於腎如以縞裹紫。
此五藏所生之外榮也。
凡相五色之奇脉、
面黄目青、面黄目赤、面黄目白、面黄目黒者、皆不死也。
面青目赤、面赤目白、面青目黒、面黒目白、面赤目青、皆死也。
<読み>
青きこと草茲のごとき者は死す。
黄なること枳實のごとき者は死す。
黒きこと炱のごとき者は死す。
赤きこと衃血のごとき者は死す。
白きこと枯骨のごとき者は死す。
これ五色の死を見すなり。
青きこと翠羽のごとき者は生く。
赤きこと雞冠のごとき者は生く。
黄なること蟹腹のごとき者は生く。
白きこと豕膏のごとき者は生く。
黒きこと烏羽のごとき者は生く。
これ五色の生を見すなり。
<意味・解釈>
さて、ここでは五色における
「死」をあらわす色と
「生」をあらわす色が述べられています。
「死」をあらわす色は、前回の記事で
「くすんだような色である」とされていましたが、
今回の内容をまとめると
青:草茲(そうじ:密生した草木のさえない暗い青色)
黄:枳實(きじつ:カラタチの実)
黒:炱(たい:すす、光沢のない黒)
赤:衃血(はいけつ:腐って凝り固まった血液)
白:枯骨(ここつ:ひからびた骨、光沢の無い灰白色)
となり、
やはりくすんだ色で光沢のないものとされています。
反対に「生」をあらわす色は、
青:翠羽(すいう:かわぜみの羽。光沢のある青色をなす。)
赤:雞冠(けいかん:にわとりのトサカ)
黄:蟹腹(かにの腹)
白:豕膏(しこう:ぶたのあぶらで、つやつやしている)
黒:烏羽(からすば:カラスの羽。光沢のある黒色である)
というものが喩えとなっています。
「かわぜみ」という鳥がどんな鳥か
ネットで検索してみると、
綺麗な青い鳥の画像を拝見できました。
羽ばたいているところを実際に見てみたいものです。
大阪でも鶴見緑地公園など池のある公園などで
見ることができるようです。
そういえば「幸せの青い鳥」という童話がありましたね・・・
「え、カニの腹って光沢があったかな?」と
疑問を抱いたりする方もいらっしゃるかも知れませんが、
ここではおそらく生きている蟹の腹を
指しているのだと思います。
カニ料理の蟹のお腹は、
くすんだ色をしていたり、
妙に明るい色であることが多いです。
さて、五色の色の「死」「生」についてまとめましたが、
なぜか「死」と「生」で
色の順番が違いますね。
これはなぜでしょうか?
・・・まったく分かりませんが、
「死」「生」の順番で書かれているので、
始めに書いてある色ほど
要注意ということかも知れません。
つまりはじめの
青:草茲 = くすんだ暗い青
が現れた場合が
最も死に近い色であるということなのかも知れません。
<読みの続き>
心に生ずるは縞をもって朱を裹むがごとし。
肺に生ずるは縞をもって紅を裹むがごとし。
肝に生ずるは縞をもって紺を裹むがごとし。
脾に生ずるは縞をもって栝樓實を裹むがごとし。
腎に生ずるは縞をもって紫を裹むがごとし。
これ五蔵生ずる所の外榮なり。
<意味>
五臓において、
健康なる心によって生ずる顔色というものは
あたかも純白の絹布をもって朱を包んだものを外から見るかのようなものである。
健康なる肺によって生ずる皮膚の色は
あたかも純白の絹布をもって紅を包んだものを外から見るかのようなものである。
健康なる肝によって生ずる爪の色は
あたかも純白の絹布をもって紺を包んだものを外から見るかのようなものである。
健康なる脾によって生ずる唇の色というものは
あたかも純白の絹布をもってカラスウリの実を包んだものを外から見るかのようなものである。
健康なる腎によって生ずる髪の色というものは
あたかも純白の絹布をもって紫を包んだものを外から見るかのようなものである。
以上が五臓によって、体表に目立って出現する部位とその色沢である。
<読みの続き2>
およそ五色の奇脉を相るに、
面黄にして目青く、
面黄にして目赤く、
面黄にして目白く、
面黄にして目黒き者は、皆死せざるなり。
面青くして目赤く、
面赤くして目白く、
面青くして目黒く、
面黒くして目白く、
面赤くして目青き者は、皆死するなり。
最後の内容は、
「面黄」すなわち顔色が黄色であれば、
胃の気があるということであるため
死ぬということはない、
これに対して顔色が青や赤や黒であれば
黄色以外の色であり胃の気の無い状態を現しているため
一般的に死をまぬがれず、すなわち
面青で目が赤く、面赤で目白く、面青で目黒く、面黒で目白く、面赤で目青きものは
すべて死する」
という内容になります。
五色篇(第15)は以上になります。
次回は第1巻のラスト
「人の陰陽五態と陰陽二十五種の異なる形・性情・血気の関係」(第16)です。
参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
大原