こんにちは、大原です。
鍼灸甲乙経の第1巻も、もう大詰めです。
それでは前回の続きです。
(前回:鍼灸甲乙経を読む その50)
<原文>
曰
「官五具五色奈何?」
曰
「青黒爲痛、
黄赤爲熱、
白爲寒、是爲五官。」
曰
「以色言病之間甚奈何?
曰
「其色麤以明者爲間、沈夭者爲甚。
其色上行者、病益甚、
其色下行如雲徹散者、病方已。
五色各有藏部、有外部、有内部。
其色從外部走内部者、其病從外走内、
其色從内部走外部者、其病從内走外。
病生於内者、先治其陰、後治其陽。反者益甚。
病生於外者、先治其陽、後治其陰。反者益甚。
用陽和陰、用陰和陽。
審明部分、萬擧萬當。
能別左右、是謂大道。
男女異位、故曰陰陽。
審察澤夭、謂之良工。
沈濁爲内、浮清爲外、
黄赤爲風、青黒爲痛。
白爲寒、黄而膏潤爲膿。
赤甚者爲血、
痛甚爲攣、寒甚爲皮不仁。
各見其部、
察其浮沈、以知淺深。
察其澤夭、以觀成敗。
察其散搏、以知近遠。
視色上下、以知病處。
積神於心、以知往今。
故相氣不微、不知是非。屬意勿去、乃知新故。
色明不粗、沈夭爲甚。
不明不澤、其病不甚。
其色散駒駒然、未有聚其病。
散而氣痛、聚未成也。
腎乘心、心先病、腎爲應。
色皆如是。
男子色在面王、爲小腹痛、下爲卵痛。
其圜直爲莖痛。
高爲本、下爲首。狐疝躰陰之屬也。
女子色在面王、爲膀胱字子處病。
散爲痛、搏爲聚。
方圓左右、各如其色形。
其隨而下至胝爲淫、有潤如膏状、爲暴食不潔。
左爲右、右爲左。
其色有邪、聚空満而不端面色所指者也、
色者、青黒赤白黄、皆端滿。
有別郷者、
別郷赤者、其色亦亦大如楡莢、在面王、爲不月。
其色上鋭、首空上向、下鋭下向。在左右如法。
以五色命藏、
青爲肝、赤爲心、白爲肺、黄爲脾、黒爲腎。
肝合筋、心合脉、肺合皮、脾合肉、腎合骨也。
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<読み>
曰く
「五具五色を官することいかん?」と。
曰く
「青黒は痛と為す、
黄赤は熱と為す、
白は寒と為す、是れを五官と為す」と。
曰く
「色を以て病の間甚を言うはいかんにするか?」と。
曰く
「その色の麤以て
明なる者は間と為し、
沈夭なる者は甚と為す。
その色上行する者は、病ますます甚だし、
その色下行すること雲の徹散するが如き者は、病まさに已まんとす。
五色にはおのおの臓部あり、外部あり、内部あり。
その色外部より内部に走る者、その病外より内に走る、
その色内部より外部に走る者、その病内より外に走る。
病内に生ずる者、まずその陰を治し、後にその陽を治す。
反する者ますます甚となる。
病外に生ずる者、まずその陽を治し、後にその陰を治す。
反する者ますます甚となる。
陽を用いて陰を和し、陰を用いて陽を和す。
審らかに部分を明らかにすれば、萬擧萬當なるべし。
よく左右を別つ、是れを大道と謂う。
男女は位を異にす。故に陰陽というなり。
審らかに澤夭を察する、これを良工と謂う。
沈濁を内と為し、浮清を外と為し、
黄赤は風と為し、青黒は痛と為す。
白は寒と為し、黄にして膏潤なるを膿と為す。
赤甚しき者を血と為し、
痛甚しきを攣と為し、寒甚しきを皮不仁と為す。
おのおの其の部に見る、
其の浮沈を察し、以て浅深を知る。
其の澤夭を察し、以て成敗を観る。
其の散搏を察し、以て近遠を知る。
色の上下を視て、以て病處を知る。
神を心に積みて、以て往今を知る。
故に氣を相ること微ならずんば、是非を知らず。
意を屬して去ることなければ、乃ち新故を知る。
色明らかにして粗ならず、沈夭なるを甚と為す。
明ならず澤ならざるは、其の病甚ならざるなり。
其の色が散じ駒駒然たり、未だ聚まることあらず。
其の病散じて氣痛むなり。聚いまだ成らざるなり。
腎、心に乗ずるは、心まず病み、
腎、應を為すなり。
色は皆、是の如きなり。
人の身体に現れている色の状態によって、
どこに病が潜んでいるのかを察する診断術、
いわゆる望診術について
記されています。
色の状態とは、具体的に、
色の種類やその明るさ、光沢の有無、
どのように色が移っていっているのか、など、
詳細に診る必要があると書かれています。
続きます。
参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原
興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。