こんにちは、大原です。
前回(鍼灸甲乙経を読む その39)の続きです。
前回までの内容は
『霊枢』陰陽清濁篇(第40)が
もとになっていましたが、
今回の内容からは
『霊枢』決氣篇(第30)がもとになります。
では原文からみていきましょう。

<原文>

「人有精、氣、津、液、血、脉、何謂也?」

「両神相搏、合而成形、常先身生、是謂精。
上焦開發、宣五穀味、熏膚充身澤毛、若霧露之漑、是謂氣。
腠理發泄、汗出溱溱、是謂津。
穀入氣滿、淖澤注于骨、骨屬屈伸、出洩補益腦髓、皮膚潤澤、是謂液。
中焦受汁、變化而赤、是謂血。
壅遏營氣、令無所避、是謂脉也。

<読み方>
曰く
「人に精、氣、津、液、血、脉、有り、何の謂いぞや?」
曰く
「両神相搏あいはくし、合して形を成す、常に身に先んじて生ずるもの、これを精という。
上焦開発し、五穀の味をべ、膚を熏じ身を充し毛を澤すること、霧露の漑するごとき、これを氣という。
腠理発泄し、汗出づること溱溱たり、これ津という。
穀入りて氣滿ち、淖澤として骨に注ぎ、骨屬屈伸し、出でて洩れ脳髓を補益し、皮膚潤澤する、これ液という。
中焦汁を受け、変化して赤し、これ血という。
營氣を壅遏して、避くる所無からしむる、これ脉というなり。

<意味>
「人には、精、氣、津、液、血、脉、というものがあると聞いているが、
それぞれどういう意味なのか?」

「(易に、男女精をまじえて万物化生するとありますごとく、)
両神が和合することによって一人の人間が生まれるのでありますが、
その人間の身が形づけられる直前の状態、
それを精といいます。

上焦がその蓋を開き、中のものを取り出して五味をあまねく身体中に宣布し、
皮膚をくすべ、生体を育成し充実し、毛をうるおすことは、
あたかも霧や露が地上のものをあまねくうるおし
どこもかしこも行きわたらぬ所のないように
至るところにいっぱいに満たすのと同じように
身体中にあまねく満たすもの、
それを気といいます。

腠理が開いて汗が溱々と出て参ります。
これを津といいます。

穀物(飲食物)が胃に入り化生して気が全身に充満いたしますと、
ドロドロとして骨に注ぎ、骨格や関節の屈伸によって
横に引っ張られるようにして脳をうるおし、
脳髄を補益したり皮膚を潤沢にしたりいたします。
これを液といます。

中焦は汁を受け取り、変成して赤色の液といたします。
これを血といいます。

営気の行動をさえぎりとどめて一定の枠内に制限し、
勝手に横の方にはみ出ることのないようにいたします。
これを脈というのであります。」

続きます。

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参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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