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下野です。
前回
東洋医学の面白い?不思議な古典籍 其ノ三
で『千金翼方』に記されている”禁経”という呪術による治療を
ご紹介しましたが、
どうせなので
現代では迷信的に思えてしまう
治療方法が記された『千金翼方』をもう少しご紹介します。
今回は「針灸中 小腸病第四」の記載内容で、
それが下記のものになります。
針邪鬼病圖訣法
凡百邪之病、源起多途、其有種種形相、示表癲邪之端、而見其病、
或有默然而不聲、 或複多言而謾語、或歌或哭、或笑或吟、
或眠坐溝渠、
啖食糞穢、或裸露形體、或晝夜游走、
或 扁鵲曰、百邪所病者、針有十三穴。
凡針之體、先從鬼宮起。
次針鬼信、便至鬼壘、又 至鬼心、未必須並針、止五六穴即可知矣。
若是邪蟲之精、便自言說、論其由來、往驗有實、立得精靈、未必須盡其命、求去與之。
男從左起針、女從右起針、若數處不言、便遍針也。
依訣而行、針灸等處並備主之。
第一初下針、從人中名鬼宮、在鼻下人中左邊下針、出右邊。
第二次下針、手大指爪甲下三分、名鬼信。入肉三分。
第三次下針、足大指爪甲下、入肉二分、名鬼壘、五指皆針。
第四次下針、在掌後膻紋入半解、名鬼心。
第五次下針、在外踝下白肉際、火針七、三下名鬼路。
第六次下針、入發際一寸、大椎以上火針七、三下名鬼枕。
第七次下針、去耳垂下五分、火針七、三下名鬼床。
第八次下針、承漿從左刺出右、名鬼市。
第九次下針、從手膻紋三寸兩筋間針度之、名鬼路、此名間使。
第十次下針、入發際直鼻上一寸、火針七、三下名鬼堂。
第十一次下針、陰下縫灸三壯、女人玉門頭三壯、名鬼藏。
第十二次下針、尺澤膻紋中內外兩紋頭接白肉際七、三下名鬼臣、此名曲池。
第十三次下針、去舌頭一寸、當舌中下縫、刺貫出舌上。
仍以一板膻口吻、安針頭令舌不得動、名鬼封。
上以前若是手足皆相對、針兩穴。
若是孤穴、即單針之。
割と長い文章でしたね。
ここで出てくる「鬼」という漢字、
太古の時代には祟りであったり、
日本ではもののけを現すものであり、
医療の中では
原因のよくわからない病に使われていたようです。
ただ時代が経つにつれ、
東洋医学でも病気の原因や症状のメカニズムが解明され、
その文字も医書から消えてきました。
上の文章は、
実は精神疾患の治療法を示したものであり、
後世に編纂される
『鍼灸聚英』『鍼灸大成』にも引き継がれることとなりました。
すでに『内経』が編纂された後の
唐代の名医 孫思邈が
なぜ「鬼」の文字を使用したか。
それは孫思邈が医道だけでなく、
仏教や道教にも精通していたからだとされ、
そのため前回ご紹介した「禁経」も記されたとされています。
画像引用:『重刻孫真人千金翼方 30巻序目』(京都大学附属図書館所蔵)
<参考文献>
『千金翼方校釈』 人民衛生出版社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。