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こんにちは、大原です。
前回の記事で
人はその精気をどこから受け、
また、どのような気を営気とし、どのような気を衛気とするのか?
という問いがあり、それに対する答えの部分の記述を
さらっと書いて終わってしまってました。
(前回記事:鍼灸甲乙経を読む その33
大事なところですので、
復習の意味も兼ねて
『鍼灸医学体系 黄帝内経 霊枢』を参照してみます。

(通解)
人の精気は、飲食物に依存するものでございます。
穀物が胃に入り、消化されて穀気となり肺に伝与されるもので、
五臓六腑はみなこの供給を受けて、各任務を達成しうるにであります。
その気の内で
雑穀を含まぬエキスともみるべきもの(清なるもの)をとなし、

雑穀などが水分にひっついて濁なるものをとなすのであります。

「清なるもの」→営
「濁なるもの」→衛
という関係は前回も書きましたが、
ここではその具体的な意味合いを
解釈して訳されていることが分かります。

さて、前回の続きも少しだけみていきましょう。

<原文>

「老人之不夜瞑、少壯之人不晝瞑者、何氣使然?」

「壯者之氣血盛、其肌肉滑、氣道利、営衞之行不失其常、故晝精而夜瞑。」

「願聞営衞之所行、何道従始?」

「営出于中焦、衞出于上焦。
上焦出于胃上口、並咽以上、貫膈而布胸中、走腋、循太陰之分而行、
還注手陽明、上至舌、下注足陽明、常與営倶行於陽二十五度、為一周。
故日夜五十周而復始、太會於手太陰。」

<読み>
曰く
「老人のめいせざる者、少壯の人の昼めいせざる者は、何の氣しかららしむるか?」
曰く
「壯者の氣血は盛んに、その肌肉は滑。氣道利し(『霊枢』では「通じ」)、
営衞の行、その常を失せず、ゆえに昼精にして夜瞑す。」

曰く
「願くは聞かん、営衞の行く所、いずれの道より始まるか?」
曰く
「営は中焦より出て、衞は上焦(『霊枢』では「下焦」)より出ず。

上焦は胃の上口より出で、咽に並んでもって上り、膈を貫いて胸中に布す。
腋に走り、太陰の分に循って行き、

還って手陽明に注ぎ、上って舌に至り、下りて足陽明に注ぎ、
常に営とともに陽を二十五度行り、一周となす。

故日夜五十周にして復び始まり、手の太陰に太会す」

<意味>
「老人になると夜によく熟睡できず、
少壮の人は白昼熟睡することができないというのは、
何の気がそうさせているのか?」
「壮者の氣血は旺盛であり、その肌肉は滑利、氣道は早く、
営気・衛気の運行は正常であるため、
ゆえに昼間は心身ともに精鋭であって
夜はよく熟睡することができるのである。」
「営・衛の行く所は、いずれの道から始まるのだろうか?説明願いたい」
「営は中焦より出て、衛は上焦から出るものであります。

上焦は胃の上口から出で、
食道に並んで上り、
膈を貫いて胸中にうすくぴったりとひっついて拡がる。
腋に至り、手の太陰肺経の通路に循って行き、
返って手の陽明大腸経に至り、
上行して舌に至り、下行して足の陽明胃経と交わる。
このようにして常に営気とともに陽を二十五回して、全身を周る。
それゆえに、日夜五十周して復び始まり、
手の太陰肺経で会するのであります。」

さて、衛気の出るところについて、
もととなっている『霊枢』営気篇(第16)では「下焦から出ず」となっており、
甲乙経では「上焦から出ず」に修正されています。
これはなぜでしょうか?
衛気に関しての記述は他にもいくつかありますが、
例えば「衛気者、所以温分肉、充皮膚、肥腠理、司開闔者也。」(『霊枢』本蔵篇(47))
(衛気は分肉を温め、皮膚を充たし、腠理を肥やし、開闔を司るゆえんの者なり)
とあり、その働きは体表におけるものが主であることが記されており、
臓腑では肺(上焦)との関わりが強いといえます。
その働きを衛気の出所として修正されたのかも知れません。

また、中医学では衛気の生成においては
肺、脾、腎、すなわち、上焦、中焦、下焦の3つが関わるとされ、
作用としては上焦と関係が深いですが、
生成に関しては下焦からの力も必要であるという意味では
『霊枢』の記述も間違いではないでしょう。

その作用に着目するか、生成に着目するかによって、
違った表現になったということかも知れません。

増税前に店内で一杯頂きました。
増税前に店内で一杯頂きました。(タリーズコーヒーにて)

参考文献
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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