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こんにちは、大原です。
前回の続きで、今回は鍼灸甲乙経第1巻
「第8、自然の四海と相応する人の四海との関係」
になります。
(前回記事 鍼灸甲乙経を読む その26

この内容は
『黄帝内経 霊枢』の「海論篇(33)」が
もとになっているようです。
ではいつも通り原文から見てみましょう。

<原文>
人有四海、十二經水者、皆注于海。
有髓海、有血海、有氣海、有水穀之海。
胃者為水穀之海、其輸上在氣街、下至三里。
衝脉者爲十二經之海、其輸上在于大杼、下出于巨虚之上下廉。
膻中者爲氣之海、其輸上在于柱骨之上下、前在人迎。
腦爲髓之海、其輸上在其蓋、下在風府。
凡此四海者、得順者生、得逆者敗。
知調者利、不知調者害。


「四海之逆順奈何?」

「氣海有餘則氣滿胸中、悗急息、面赤。
不足則氣少不足以言。
血海有餘則常想其身大、怫鬱也。
然不知其所病。不足則常想其身小、狹然不知其所病。
水穀之海有餘則腹滿。不足則飢不受穀食。
髓海有餘則輕勁多力、自過其度。不足則腦轉耳鳴、脛●痠眩冒、目無所見、懈怠安臥。」
(●は「月(にくづき)」に「行」)


「調之奈何?」

「審守其輸、而調其虚實、無犯其害。順者得復、逆者必敗。」

<読み>
人に四海あり、十二經水なる者、皆海に注ぐ。
髓の海あり、血の海あり、氣の海あり、水穀の海あり。

胃なる者、水穀之海となす、その輸は上は氣街にあり、下は三里に至る。
衝脉なる者、十二經の海となす、その輸は上は大杼にあり、下は巨虚の上下廉に出ず。
膻中なる者、氣の海となす、その輸は上は柱骨の上下にあり、前は人迎にあり。
脳、髓の海となす、その輸は上はその蓋にあり、下は風府にあり。
およそこの四海なる者、順を得る者は生き、逆を得る者は敗れる。
調することを知る者は利し、調することを知らざる者は害せられる。

曰く
「四海の逆順とはいかんなることか?」
曰く
「氣海有餘なるものは則ち氣胸中に満ち、悗急息ばんきゅうそくして、めん赤し。
不足なるものは則ち氣少くもって言うに足らず。
血海有餘なるときは則ち常にその身大なることを想う、
怫鬱ふつうつなり。然り、その病むところを知らず。
不足なれば則ち常にその身小なることを想う、
挟然きょうぜんとしてその病む所を知らず。

水穀の海有餘なるときは則ち腹つ。
不足するときは則ちゆるも穀食を受けず。
髓海有餘なるときは則ち輕勁多力にして、自らその度に過ぐ。
不足なるときは則ち脳転じ耳鳴り、
脛●さん眩冒げんぼうし、目見るところ無く、懈怠けたい安臥あんがす。」
(●は「月(にくづき)」に「行」)


「これを調うるにはいかんにするか?」

「審らかにその輸を守りてその虚實を調う。
その害するを犯すことなかれ。
順なる者は復することを得、逆する者は必ず敗す。」

<意味>
人には四つの海があり、十二経水はすべて海に注ぎます。
髓海、血海、氣海、水穀の海が人体の四つの海です。

胃は水穀の海であり、その輸穴は上は氣街にあり、下は三里穴にあります。
衝脉は十二經の海であり、その輸穴は上は大杼にあり、下は巨虚の上下廉に出ずるものです。
膻中は氣の海であり、その輸穴は上は柱骨の上下(督脈の唖門穴と大椎穴)にあり、前は人迎穴にあります。
脳は髓の海であり、その輸穴は上はその蓋(頭頂の百会穴)にあり、下は風府穴にあります。
この四つの海の作用が正常なら生き、正常に反するようなら敗亡します。
正常さを失った場合に適切に調整することを知る者は有利となりますが、
知らない者はそこなわれてしまいます。

「四つの海の正常な状態、正常では無い状態とは
どのような状態であるか?」

「氣海が有余な者は気が胸中にいっぱいになって、
急に息がつまって気の遠くなるような思いがし、顔は赤くなります。
不足な者は氣が少いためにものを言うことも満足にはできません。

血海が有余なときは、体が重滞で軽快でないような感覚があり、
むかっ腹を立てたいような気持ち(怫鬱)ではありますが
外見上では病気があるようには見えないものです。
不足の場合は、平常の体の様子は軽くて痩せたように感じ、
胸部を締め付けられるような感じがしますがどこが悪いのか見分けがつきません。

水穀の海が有余なるときは腹部が満張し、
不足するときは腹が減って飢えていても飲食物がのどを通りません。

髓海有余なるときは身は軽く足は強く体力は強盛で、
同じ年頃の者に比べて標準を超えている。
不足のときは脳がおかしくなってぐるぐる回るようなめまいがしたり
耳鳴りがしたり、
脛(すね)がだるくなったり、
目がくらんで物が見えなくなったり
こころがゆるんで怠け者になったり、ごろごろねそべったりするようになります。」


「さて、これを調治するにはどうしたらよいか?」

「明らかに四海と通ずる上下の兪穴をよく見守ってその虚實を調えねばなりません。
その際、調えるのに妨げとなるようなことをしてはいけません。
正しい法則に基づいて治療すれば健康が回復しますが
法則に反するような治療をしますと必ずダメになってしまいます。」

続きます。


参考文献
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

いつも参考にさせて頂いてます。

 

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