こんにちは、大原です。
「迎隋の補瀉」について、
今までブログで
『黄帝内経 霊数』に書かれている内容を見てきました。
過去のブログ:① 迎随の補瀉と経絡
過去のブログ:② 迎随の補瀉に見る「令和」?
今回は、江戸時代の鍼灸の古典
『鍼灸重宝記』の補瀉・迎随を見てみましょう。
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『鍼灸重宝記』 「補瀉迎随の論」より
手法の補瀉、虚実の補瀉あり、
まづ針先を口にふくみ温めて、
右の肘を向へはり、
手先を内へかがめ、大指さきを前に向ひ、
呼気に随ひて食指を添え
大指にて和かにひねり下すとき、
咒して曰く
五帝上真六甲玄霊気付至陰百邪閉理、と三篇念ず。
入こと二三分、
留まること五六分、
経に随い病に随いてひねり下し
進退動揺せしめて気を至らしめ、手を振い鍼をはぢく、
徐々にして吸にしたがいて針を出し、孔を閉じよ、
是手法の補なり。
瀉は肘をさげて我が前に付、
手先を向うへ無し大指を先に向けて吸にしたがひてひねり下す、
大指を添え食指にて捻るとき
咒して曰く、
帝扶天形護命成霊、と誦すること三遍、
入ること三分、留ること五六呼にして、
経に迎ひ病に迎ひて撚り下す、
気至て左手にて針の口を開き
呼にしたがいて針を出す、
孔を閉ざるがよし、
咒を念ずる時は一心針に念をよするぞ、
是手法の瀉なり。
婦人はこれに変ず補法を瀉とし瀉法を補とす。
虚実の補瀉は不足を補い瀉は有余を瀉す、
不足は痞をなし、麻をなす。
有余は腫をなし、痛をなす。
(以下、続く)
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主な漢字の意味ですが、
・咒(じゅ、まじない) = まじないや呪文のこと。
・大指(おおゆび) = 親指。
・食指(しょくし) = 人差し指。
となります。
上の記述の補瀉の違いを
分かりやすく一覧にして比較してみましょう。
<手法の補>
・まず針先を口にふくみ温める。
・右の肘を向へ張って、手先を内へかがめ、親指の先を前に向ける。
・呼気に従ってひねり下す。
・食指を添え大指にて和かにひねり下す。
・刺入のときに「五帝上真六甲玄霊気付至陰百邪閉理」と三回唱える。
・入こと二三分、留まること五六分。
・経に随い病に随いてひねり下す。
・進退動揺せしめて気を至らしめ、手を振い鍼をはじく。
徐々に、吸にしたがいて針を出す。
・針を抜いた後は、孔を閉じる
<手法の瀉>
・肘をさげて我が前に付け、手先を向うへ無し大指を先に向ける。
・吸気に従ってひねり下す。
・大指を添え食指にてひねる。
・刺入のときに「帝扶天形護命成霊」と三回唱える。
・入ること三分、留ること五六呼。
・経に迎ひ病に迎ひてひねり下す。
・気至りて左手にて針の口を開き、呼にしたがいて針を出す。
・針を抜いた後は、孔を閉じない。
・咒を念ずる時は一心針に念を寄せる。
呪文のようなものもあって
怪しいかも知れませんが、
呼吸の用い方や、
刺入の後に孔を塞ぐか塞がないか、
などは、鍼灸の補瀉のやり方が
書かれている現代の本にも
掲載されている内容ですね。
参考文献
『鍼灸重宝記』 医道の日本社