こんにちは、新川です。
気がつけば11月、
立冬を迎えております。
立冬は、
江戸時代の書物『暦便覧』という暦の解説書によると、
「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」とあり、
暦の上で冬が到来したことを表しております。
ちなみに、
11月7日 は「鍋の日」なのだそうです。
さて今回は、
宣明五気篇についてです。
今回は、宣明五気篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております。
【宣明五気篇 第二十三】
この篇では、
五行学説を運用し、
五蔵の気の各方面の関係、
五脈、五悪、五液などを説明している。
● 飲食物の五味は、
それぞれ最も適応している蔵に帰着する。
酸味は肝に入り、辛味は肺に入り、苦味は心に入り、齦味は腎に入り、甘味は脾に入る。
肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 | |
五味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 齦 |
これがいわゆる五味の入る所(五味所入)である。
●五蔵の邪気はそれぞれ特有の病症をもたらす。
・心気がのびやかでないと噯気(すなわちげっぷのこと)が出る。
・肺気が清純でないと咳嗽が出る。肺気が散じないと多言になる。
・脾気が運ばれないと胃酸過多となる。
・腎気が不足するとあくびやくしゃみが出る。
・胃気が降りないと上逆して、甚だしいときはしゃっくりが出、恐怖感をもつ。
・大腸・小腸が病むと下痢を起こす。
・下焦が病んでその職分を失うと、水液が皮膚に溢れ水腫となる。
・膀胱の気が働かないと、小便が不通となる。それを制御できないときは失禁する。
・胆が病むと怒りやすくなる。
これが五蔵六府の病である。
●五禁
五蔵の病にはそれぞれ禁忌〔すべき気味〕がある。
辛味は気に赴くので、気病のときには辛味を多食してはならない。
鹹味は血に赴くので、血病のときには鹹味を多食してはならない。
苦味は骨に赴くので、骨病のときには苦味を多食してはならない。
甘味は肉に赴くので、肉病のときには甘味を多食してはならない。
酸味は筋に赴くので、筋病のときには酸味を多食してはならない。
これがいわゆる五禁である。多食させてはならない。
●五発
五病の発生。
陰病は骨に発生する。陽病は血に発生する。陰病は肉に発生する。陽病は冬に発生する。陰病は夏に発生する。
これがいわゆる五発である。
●五乱
五蔵が邪気の撹乱を受けると発病する。
邪気が陽に入ると狂となる。
邪気が陰に入ると痺症になる。
邪気が陽に侵入して打ちかかると、頭部疾患を引き起こす。
邪気が陰に侵入して打ちかかると、声が出なくなる症状を引き起こす。
病邪が陽から陰に移るときには病者は穏やかであり、
陰を出て陽に移るときには病者は怒る。
これがいわゆる五乱である。
●五邪の脈
五邪の脈象。
春に秋の脈である毛脈が現れ、
夏に冬の脈である石脈が現れ、
長夏に春の脈である弦脈が現れ、
秋に夏の脈である鉤脈が現れ、
冬に長夏の脈である緩脈が現れる。
これがいわゆる五邪の脈である。
この脈が現れると、予後はみな同じで、いずれも不治の死症である。
●五蔵の蔵すもの
五蔵にはそれぞれが蔵しているものがある。
心蔵は神を蔵する。肺蔵は魄を蔵する。肝蔵は魂を蔵する。脾蔵は意を蔵する。腎蔵は志を蔵する。
肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 | |
五蔵所蔵 | 魂 | 神 | 意 | 魄 | 志 |
これがいわゆる五蔵の蔵しているものである。
●五主
五蔵と関連する体の五つの部分、
心と脈とは相い関連する。
肺と皮毛とは相い関連する。
肝と筋とは相い関連する。
脾と肌肉とは相い関連する。
腎と骨とは相い関連する。
肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 | |
五主 | 筋 | 脈 | 肌肉 | 皮毛 | 骨 |
これがいわゆる五主である。
●五労
五種類の過労が人体に与える損傷。
長くものを視すぎると血を損なう。
長く寝すぎると気を損なう。
長く坐りすぎると肉を損なう。
長く立ちすぎると骨を損なう。
長く歩きすぎると筋を損なう。
これがいわゆる五労が傷る所である。
●五蔵の脈
五蔵が四時に応じる脈象。
肝脈は春に応じて弦。
心脈は夏に応じて鉤。
脾脈は長夏に応じて代。
肺脈は秋に応じて毛。
腎脈は冬に応じて石。
肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 | |
五脈 | 弦 | 鉤 | 緩 | 毛 | 石 |
これがいわゆる五蔵の平脈である。
五味所入。酸入肝、辛入肺、苦入心、鹹入腎、甘入脾。是謂五入。
五気所病。心為噫。肺為咳。肝為語。脾為呑。腎為欠、為嚔。
胃為気逆、為噦、為恐。大腸小腸為泄。下焦溢為水。膀胱不利為癃、不約為遺溺。胆為怒。是謂五病。
五精所并。精気并於心則喜。并於肺則悲。并於肝則憂。并於脾則畏。并於腎則恐。是謂五并。虚而相并者也。
五蔵所悪。心悪熱。肺悪寒。肝悪風。脾悪湿。腎悪燥。是謂五悪。
五蔵化液。心為汗。肺為涕。肝為泪。脾為涎。腎為唾。是謂五液。
五味所禁。辛走気。気病無多食辛。
鹹走血。血病無多食鹹。
苦走骨。骨病無多食苦。
甘走肉。肉病無多食甘。
酸走筋。筋病無多食酸。
是謂五禁。無令多食。
五病所発。陰病発於骨。陽病発於血。陰病発於肉。陽病発於冬。陰病発於夏。是謂五発。
五邪所乱。邪入於陽則狂。邪入於陰則痺。搏陽則為巓疾。搏陰則為瘖。
陽入之陰則静。陰出之陽則怒。是謂五乱。
五邪所見。春得秋脈、夏得冬脈、長夏得春脈、秋得夏脈、冬得長夏脈。
名曰陰出之陽。病善怒、不治。是謂五邪。皆同命、死不治。
五蔵所蔵。心蔵神。肺蔵魄。肝蔵魂。脾蔵意。腎蔵志。是謂五蔵所蔵。
五蔵所主。心主脈。肺主皮。肝主筋。脾主肉。腎主骨。是謂五主。
五労所傷。久視傷血。久臥傷気。久坐傷肉。久立傷骨。久行傷筋。是謂五労所傷。
五脈応象。肝脈絃、心脈鈎、脾脈代、肺脈毛、腎脈石。是謂五蔵之脈。
参考文献:
『黄帝内経素問 上巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア