今回から病脈について書いていきます。
病脈とは、様々な疾病が脈の変化に反映されたもので、
種類は、最も古い脈学専門書『脈経』では24種、
現在では26種とも28種ともいわれています。
これら殆どの脈は、
脈位(浮・沈)、速度(遅・数)、強弱(虚・実)の組み合わせ
で名付けられています。
今回は浮脈と沈脈について記載します。
中取で最も明らかに捉えられる平脈に対して、
浮いているか沈んでいるかを判断していきます。
原則的に
浮脈=陽脈(陽実・陰虚)
沈脈=陰脈(陰盛・陽虚)
となります。
《浮脈》
軽く触れると捉えられ、重く取ると弱まってしまう、
皮膚の浅い部位に感じられる脈で、
寸関部に表れることが多いです。
主病は表証で、
有力なら表実証・無力なら表虚証となります。
実証と虚証の違いは、
実証では浮中沈共に有力に感じることができて、
特に寸関部での反応が顕著に表れます。
対して虚証は、陰血不足で脈が浮いているだけなので無力となり、
特に関部で明確に表れやすくなります。
表証以外でも慢性疾患による虚弱化で、
浮いて大きく力の無い脈となることがあり、
この場合は重症と捉えられます。
脈が浮いてしまう理由として、
外邪が肌表・ 腠理を侵襲することで
体表を守っている衛気が
外邪と抵抗するためと考えられます。
《沈脈》
重く取ると捉えられて、軽く触れると捉えにくい、
脈位の深い脈で、
主に、関部で明瞭に感じることができます。
主病は裏証で、
有力なら裏実証・無力なら裏虚証となります。
実証と虚証の違いは、
実証では正気が邪に抵抗しているため
重按してもよく触れ、更に骨の方に力を加えても
指に拍動を感じることができます。
虚証では臓腑が虚して陽気が不足したために
脈を浮位に持ち上げる力がなくなってしまいます。
重按したらよく触れるが、
更に力を加えると拍動が消えてしまい、
少し力を緩めても脈力が無力のままです。
脈が沈む理由として、 病邪が裏に入り、
邪が気血を閉じ込めてしまうためと考えられます。
参考文献:
『中医脉学と瀕湖脉学』 たにぐち書店
『中医臨床のための舌診と脈診』 神戸中医学研究会
本多