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こんにちは、大原です。
前回の続きです。

(前回の記事:金匱要略 瘧病脉證并治(第4) その2

<原文>
瘧多寒者。名曰牡瘧ぼぎゃく蜀漆散しょくしつさん主之。

●蜀漆散方
 蜀漆 洗去腥
 雲母 燒二日夜
 龍骨 等分
右三味。杵為散。未發前。以漿水服半錢。
温瘧。加蜀漆半分。臨發時。服一錢匕。

<読み>
ぎゃくかん多き者は名づけて牡瘧ぼぎゃくと曰う。
蜀漆散しょくしつさんこれを主る。
●蜀漆散の方
 蜀漆しょくしつ (洗って腥を去る)
 雲母うんも (二日夜焼く)
 龍骨りゅうこつ (等分)
右三味、きて散と為し、未だ発せざる前に漿水しょうすいをもって半錢を服す。
温瘧おんぎゃくには蜀漆半分を加え、発する時に臨みて一錢匕いっせんぴを服す。

<意味>(『金匱要略講話』より)
ぎゃくの病で冷えが多いものは、牡瘧ぼぎゃくといい、蜀漆散しょくしつさんがよい。
右の3種類を粉にして発作がおこる前に半銭を服用する。
温瘧にはさらに蜀漆半分を加えて発作時に一錢匕いっせんぴを服用する。

 一錢匕いっせんぴとは (『傷寒論解説』より)
漢代の貨幣の五銖銭をもって、散末をすくってこぼれない程度。
薬の軽重によって一定しないが、約1.0㌘とする。



附外臺祕要方

牡蠣湯。治牡瘧。
 牡蠣 四兩熬
 麻黄 去節四兩
 甘草 二兩
 蜀漆 三兩
右四味。以水八升。先煮蜀漆麻黄。去上沫。得六升。内諸藥。
煮取二升。温服一升。若吐則勿更服。

<読み>
外台秘要げだいひようの方を附す。

牡蠣ぼれい湯は牡瘧ぼぎゃくを治す。
 牡蠣 (四両、熬る)
 麻黄 (四両、節を去る)
 甘草 (二両)
 蜀漆 (三両)
右四味、水八升をもって、ず蜀漆・麻黄を煮て、上沫じょうまつを去り、
六升を得て、諸薬をれ、煮て二升を取り、一升を温服す。
すれば則ち更に服するなかれ。

柴胡去半夏加括蔞湯。治瘧病發渇者。亦治勞瘧。
 柴胡 八兩
 人參 黄芩 甘草 各三兩
 括蔞根 四兩
 生薑 二兩
 大棗 十二枚
右七味。以水一斗二升。煮取六升。去滓。再煎取三升。温服一升。日二服。

<読み>
柴胡去半夏加括蔞湯さいこきょはんげかかろうとうは、瘧病ぎゃくびょうかつを発する者を治す。また労瘧ろうぎゃくを治す。

 柴胡 (八両)
 人參 黄芩 甘草 (各三両)
 括蔞根 (四両)
 生薑 (二両)
 大棗 (十二枚)
右七味、水一斗二升をもって煮て六升を取り、
滓を去り、再び煎じて三升を取り。一升を温服す。日に二服す。

柴胡桂薑湯。治瘧寒多。微有熱。或但寒不熱。
 柴胡 半斤
 桂枝 三兩去皮
 乾薑 二兩
 括蔞根 四兩
 黄芩 三兩
 牡蠣 二兩熬
 甘草 二兩炙
右七味。以水一斗二升。煮取六升。去滓。再煎取三升。温服一升。日三服。初服微煩。復服汗出便愈。

<読み>
柴胡桂薑湯は、瘧、かん多く、すこしく熱有り、あるいはただ、寒して熱せざるを治す。
 柴胡 (半斤)
 桂枝 (三両、皮を去る)
 乾薑 (二両)
 括蔞根 (四両)
 黄芩 (三両)
 牡蠣 (二両、る)
 甘草 (二両、炙る)
右七味、水一斗二升をもって、煮て六升を取り、滓を去り、再び煎じて三升を取り、一升を温服す。
日に三服す。初め服して微煩びはんし。また服して汗出でて便すなわゆ。

<解説>
「熬(い)る」:火にかけて、水気がなくなるまで煮つめる。
また、鍋などに入れて火であぶる。

(以下、『金匱要略講話』より)
『外台秘要(げだいひよう)』という古典から、
①牡蠣湯
②柴胡去半夏加括蔞湯
③柴胡桂薑湯
の三つの薬方をもってきて述べている。

②にある「労瘧」とは慢性になってもので、
小柴胡湯の半夏の代わりに括蔞根が入ったものを用いる。
マラリヤのひどい場合とマラリヤが長引いてなかなか熱がとりきれない場合の
ときのものに用いるのであろう。
肺結核で治らないとき、熱がとれないときに、
これを労瘧とみなして、この方をよく使っていた。

③は柴胡桂枝乾薑湯である。
初めて飲むと「微煩し」すなわち気持ちが悪くなるが、
もう一杯飲むと汗が出て治るとある。
傷寒・金匱の柴胡剤の薬方の中で
一番陰に近い方の薬方である。

瘧病脉證并治(第4)は以上になります。
次回から
中風歴節病脈証並治(第5)に入っていきます。

『金匱要略講話』
『金匱要略講話』

 


<参考文献>
『金匱要略講話』
『傷寒論解説』 創元社
『金匱要略も読もう』 東洋学術出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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