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こんにちは、大原です。前回の続きです。
(前回の記事:
金匱要略 百合狐惑陰陽毒病ノ証治(第3)より)
今回から、瘧病脉證并治(第4)になります。
それでは冒頭部分からみていきます。
師曰。瘧脉自弦。
弦數者多熱。弦遲者多寒。
弦小緊者下之差。
弦遲者可温之。
弦緊者可發汗鍼灸也。
浮大者可吐之。
弦數者風發也。以飮食消息止之。
(読み)
師の曰く、瘧の脉は自ら弦。
弦数なる者は熱多く、弦遅なる者は寒多し。
弦小緊なる者はこれを下せば差ゆ。
弦遅なる者はこれを温むるべし。
弦緊なる者は汗を発し、鍼灸すべきなり。
浮大なる者はこれを吐すべし。
弦数なる者は風発なり。飲食をもって消息してこれを止む。
「瘧」とは、現在でいうマラリヤのことで、
江戸時代にはオコリと呼ばれていたようです。
マラリヤの脈は「弦」になり、
その中でも色々種類があることが記されています。
数脈は熱があり、遅脈は寒があることを示します。
風発とは外邪からくる感冒のようなものとのことです。
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病瘧以月一日發。當以十五日愈。設不差。當月盡解。如其不差。當云何。
師曰。此結爲癥瘕。名曰瘧母。急治之。宜鱉甲煎丸。
(読み)
瘧を病み、月の一日をもって発すれば、当に十五日をもって愈ゆべし。
設し差えずんば、当に月尽きて解す。
如し其れ差えざれば、当に云何すべき。
師の曰く、此れ結ぼれて癥瘕を為す。名づけて瘧母と曰う。
急にこれを治せ。鱉甲煎丸に宜し。
マラリヤにかかって
月の1日に起こったものは15日くらい経てば治るのが普通であるが、
治らなかったら1ヶ月くらい経って治るが、
それでも治らない場合はどういうのかというと、
これは慢性のマラリヤになっている場合で、
マラリヤが結んでツモール(腫瘍)になっている。
「癥瘕」というのは硬くなっているということであり、
これを瘧母という。早く治さなければならない。
それには鱉甲煎丸が良い。
鱉甲煎丸は、材料的に集めにくいのが多いが、
この処方は全体的に瘀血を流す薬が多いため、駆瘀血作用があるとすると
マラリヤに限らず腫れのあるものに使ってみても良いかも知れない。
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●鱉甲煎丸方
鱉甲 十二分炙
烏扇 三分燒
黄芩 三分
柴胡 六分
鼠婦 三分 熬
乾薑 三分
大黄 三分
芍藥 五分
桂枝 三分
葶藶 一分熬
石韋 三分去毛
厚朴 三分
牡丹 五分去心
瞿麥 二分
紫葳 三分
半夏 一分
人參 一分
蟅蟲 五分熬
阿膠 三分炙
蜂窠 四分炙
赤消 十二分
蜣蜋 六分熬
桃仁 二分
右二十三味。爲末。取鍛竈下灰一斗。清酒一斛五斗。浸灰。候酒盡一半。著鱉甲於中。煮令泛爛如膠漆。絞取汁。
内諸藥。煎爲丸。如梧子大。空心服七丸。日三服。
●鱉甲煎丸の方
鱉甲 十二分、炙る
烏扇 三分、焼く
黄芩 三分
柴胡 六分
鼠婦 三分、熬る
乾薑 三分
大黄 三分
芍藥 五分
桂枝 三分
葶藶 一分、熬る
石韋 三分、去毛
厚朴 三分
牡丹 五分、心を去る
瞿麦 二分
紫葳 三分
半夏 一分
人參 一分
蟅蟲 五分、熬る
阿膠 三分、炙る
蜂窠 四分、炙る
赤消 十二分
蜣蜋 六分、熬る
桃仁 二分
右二十三味、末となし、鍛竈下の灰一斗、清酒一斛五斗を取り、灰に浸し、
酒尽くること一半を候って、鱉甲を中に著け、煮て泛爛膠漆の如くならしめ、絞って汁を取り、
諸藥を入れ、煎じて丸となし、梧子の大きさの如くし、空心に七丸を服す。日に三服す。
方剤学の本によると、
この鱉甲煎丸の主治である瘧母について
「瘧邪(マラリアなど)が少陽に長期間停滞して正気が次第に衰え、
気血の運行が滞り寒熱痰湿の邪を生じ、
邪が気血と結んで有形になり脇下に停留するのが瘧母である。
寒熱不調・飲食不化・臓腑失調などさまざまな原因で
気血が凝滞して有形の塊形を形成するのが癥積である。
原因は異なるが、いずれも堅硬で固定性の腫瘤であり、ほど同様のものと考えてよい」
と、瘧母の成因について述べられ、
さらに鱉甲煎丸の方意は
「主薬の鱉甲は肝経に入って軟堅化癥し、
灰は消癥祛積に、
酒(「黄酒」を用いる)」は活血通経に働いて補助し、活血化瘀・軟堅消癥の効能を表す。
赤消・大黄・蟅蟲・蜣蜋・鼠婦・紫葳・凌霄花(紫葳のこと)・牡丹・桃仁・蜂窠は、破血遂瘀・消癥に、
厚朴・射干(烏扇のこと)・葶藶・半夏は行気消痰に、
瞿麦・石韋は利水祛湿に、
柴胡・芍薬は疏肝に働き、痰湿と気血の凝滞を除く。
乾薑・桂枝は温中散寒に、
黄芩は清熱に働いて、寒熱を調整するとともに、辛開苦降の効果をあげる。
人參・阿膠は補気養血して正気を扶助する。」
以上から、
破血遂瘀・消癥に働く生薬が
最も多く配合されていることが分かります。
続きます。
<参考文献>
『金匱要略講話』 創元社
『中医臨床のための中薬学』
『中医臨床のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原