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こんにちは、為沢です。
今回は張景岳の『質疑録』の第十八章「論痢不専屬湿熱」です。
和訓:
瘧、痢は夏秋に發し、本は溽暑に因る、豈に湿熱に非ずや?
但し炎蒸の令は天に出づ、苟くも能く天の氣に順えば、安んぞ能く病の有らんや?
惟だ熱に因って凉を求め、縦恣に過ぎればなり、則ち病は人に由るなり。
故に凡そ風寒を外に感ずる者は、其の邪は経に在りて、病は瘧と爲ること多し;
生冷が内を傷する者は、其の邪は臓に在り、病は痢と爲ること多し。
痢の来たるは、暑湿の欝の久しきは、則ち湿熱と爲す、然るに瓜果生冷、
凉風冰水は、未だ必ずしも鬱積せずして、加えるに飲食を以て相犯し、
触して痢を成すこと有り、則ち痢は未だ寒湿を本として災を生ぜし者、
豈に必ず専ら湿熱を以て患を爲さんや?
・溽湿=湿気が多くて蒸し暑い様子。
瘧病と痢疾は夏から秋にかけての蒸し暑いときに多く発生するので
湿熱による疾病であるとされているが、湿熱によるものでないと言えるのか?
・蒸し暑さは自然の摂理であるので、それ自体が病因であるわけではなく、
その気候に順応した生活をしていれば病になることはあろうか?
・天候が暑いからといって清涼を求め、
欲しいだけ清涼を取って病になったものは
天候が原因ではなく、人為的なものである。
・外表から風寒を感受し、その邪が経絡に存在すれば瘧疾となることが多く
生冷の飲食物を食べたものはその邪から腸胃に存在し痢疾を起こすことが多い。
・痢疾の原因が暑熱が内部に長期に鬱積したものは湿熱によるものである。
・瓜果などの生冷の物を取り、氷や冷水で涼を得たり、
飲食の不摂生で起きた痢疾は。寒湿でもって腸胃を損傷し
起こったものであり、他に何が言えるだろうか?
・痢疾が全て湿熱によるものとどうしてできようか?
原文:
瘧、痢發於夏秋、本因溽暑、豈非湿熱?
但炎蒸之令出於天、苟能順天之氣、安能有病?
惟因熱求凉、過于縦恣、則病由於人矣。
故凡風寒感于外者、其邪在経、
病多爲瘧;生冷傷于内者、其邪在臓、病多爲痢。
痢之来也、暑湿郁久、則爲湿熱、然有瓜果生冷、
凉風冰水、未必鬱積、加以飲食相犯、触而成痢、
則痢未有不本于寒湿生災者、豈必専以湿熱爲患哉?
参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『格致餘論注釈』医聖社
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社
『宋本傷寒論』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・素問』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・霊枢』東洋学術出版社
『校釈 諸病源候論』緑書房
『景岳全書』台聯國風出版社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢