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こんにちは、為沢です。
今回は張景岳の『質疑録』の第十六章「論怪病多属痰」の其の二です。
和訓:
即ち怪病と云う者に、人の廟に入り冢に登り、
飛戸、鬼撃、客忤の如きが有り、
亦た本は人の氣血の虚弱にして、邪が虚に乗じて入り、
譫妄邪祟を為すがごとく見ゆ、
若し神霊の凭る所の有りとなさば、而ること怪と為すのみ!
故に《霊枢》に亦た有るの黄戸鬼、青戸鬼、
白戸鬼、赤戸鬼、黒戸鬼の症は、
何ぞ一つとして五臓の素より虚して、見形を為すに非ざらんや。
庸工は病機に暁かならざれば、一たび不識の症に遇えば、
輒もすると怪病なりと謂い、即ち痰を以て推测を為す、
而して“怪病は痰に屬すること多し”と曰う。
・入廟登冢…「廟」「登」は墳墓のことを指す。
墳墓にみだりに近づくことによる祟りから来る病のこと。
・飛戸…心腹で刺すような痛み、喘息し脹満する、気が心胸に上衝する
・鬼撃…胸脇が締めつけるような痛みで横になれない、吐血、衄血、下血する
・客忤…小児が突然の刺激(大きな音や知らない人や物事)に驚き、
顔色が青くなる、軽度の痙攣、下痢、涎沫を吐す
(いずれも『諸病源候論』に記載されている)
一般的に怪病とされるものは、墳墓を犯した祟りや
飛戸、鬼撃、客忤などの症状はもともとはその人の気血が虚弱であり、
その虚に乗じて邪が侵入し、譫妄や錯視などの症状を呈するものであり、
それを何かの祟りだというのは奇怪なことである。
・『黄帝内経』に書かれてある
黄戸鬼、青戸鬼、白戸鬼、赤戸鬼、黒戸鬼などの症状も
五臓の気血が虚して起こった病症である。
・それなのに凡庸な医者は自分が理解できない病に遭うと
怪病だと言い、安易に痰飲の病症だと推測して
除痰袪湿の湯液に頼ろうとする。
・「怪病は痰飲の病に属することが多い」など
とんでもないことを言う。
原文:
即有云怪病者,如人入廟登冢、飛戸、鬼撃、客忤、
亦由本人氣血虚弱、邪乗虚入、見爲譫妄邪祟、
若有神霊所凭、而爲怪耳!
故《霊枢》亦有黄戸鬼、青戸鬼、
白戸鬼、赤戸鬼、黑戸鬼之症、
何一非五臓素虚、而爲之見形也。
庸工不暁病机、一遇不識之症、輒謂怪病、即以痰爲推测、
而曰:“怪病多属痰”。
参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『格致餘論注釈』医聖社
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社
『宋本傷寒論』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・素問』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・霊枢』東洋学術出版社
『校釈 諸病源候論』緑書房
『景岳全書』台聯國風出版社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢