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こんにちは、大原です。
前回に続いて湿の病についてです。
(前回の記事:金匱要略 痙湿暍病脈証治(第2)④

<条文2-22>
病者一身盡疼。發熱。日晡所劇者。名風濕。
此病傷於汗出當風。或久傷取冷所致也。
可與麻黄杏仁薏苡甘草湯。

●麻黄杏仁薏苡甘草湯方
麻黄去節.半兩.湯泡.甘草一兩.炙.薏苡仁半兩.
杏仁十箇.去皮尖.炒.
右剉麻豆大.毎服四錢匕.水盞半.煮八分.去滓.温服.有微汗避風.

<読み>
病者一身ことごといたみ、発熱、日晡所劇にっぽしょはげしき者は、名づけて風湿と名づく。
此の病は汗出でて風に当るに傷れ、或いは久しくれいを取るに傷れて、致す所也。
麻黄杏仁薏苡甘草湯まおうきょうにんよくいかんぞうとうを与うべし。

麻黄:節を去る、半両、湯泡。
甘草:一両、炙る。
薏苡仁:半両。

杏仁:十箇、皮尖を去り、炒る。
右、麻豆大に剉み、毎服四錢匕、水盞半、八分に煮て、滓を去り、温服す。微汗有れば風を避く。

「日晡所」とは日暮れ頃をいい、この時間帯に身体中が痛くなって熱が出る病を風湿と名づける。
風湿は汗が出て、その汗を風にあてて乾かしたり、あるいは寒い目にあって、
それが原因で起こる病気である。
麻黄杏仁薏苡甘草湯はこの風湿に用いられる他、水虫や皮膚病にもよく使われる。

発熱して氷枕で冷やし続けたところ、熱は下がったが、首が動かなくなったという人がいて、
葛根湯で治るだろうと思って用いても効かず、
条文の「冷を取る」で、麻黄杏仁薏苡甘草湯を用いたところ、
すーっと治ったという話がある。
氷枕で冷やし続け、冷えが入り込んだために首が動かなくなっていたのである。

<条文2-23>
風濕脉浮。身重。汗出惡風者。防已黄耆湯主之。

●防已黄耆湯方.
防已一兩.甘草半兩.炒.白朮七錢半.黄耆一兩一分.去蘆.
右剉麻豆大.毎抄五錢匕.生薑四片.大棗一枚.水盞半.
煎八分.去滓.温服.良久再服.喘者.加麻黄半兩.胃中不和者.加芍藥三分.氣上衝者.加桂枝三分.下有陳寒者.加細辛三分.服後當如蟲行皮中.從腰下如冰.後坐被上.又以一被繞腰以下.温令微汗差.

<読み>
風湿ふうしつ、脉浮、身重く、汗出で、悪風おふうの者は、防已黄耆湯ぼういおうぎとう之を主る。

防已黄耆湯方ぼういおうぎとうほう
防已:一兩。
甘草:半兩、炒る。
白朮:七錢半。
黄耆:一兩一分。蘆を去る。
右を麻豆大にきざみ、毎抄五錢匕、生薑四片、大棗一枚、水盞半さんはんにて八分に煎じ、かすを去り、温服す。良久ややひさしゅうして再服す。
喘する者には麻黄半両を加う。
胃中和せざる者は芍藥三分を加う。氣上衝きじょうしょうの者には桂枝三分を加う。下陳寒ちんかんある者には細辛三分を加う。
服して後、まさに蟲の皮中を行くが如し。腰より下冰の如し。後被上に座し、又一被を以て腰下にめぐらし、温めて微しく汗せしむればゆ。

防已黄耆湯は、表が虚して水毒が停滞する場合に使うと良い。
『腹證奇覧翼』という書物に、防已黄耆湯についての記述があり興味深い。
内容としては、
「防已黄耆湯は水気が皮膚にあって腫れるものを治す。
これは表が虚しているための水気である。
多くは若い女性にみられ、卒(にわか)に肥満をなして
のぼせが強く、両頬紅にして、経水短少、心気鬱して開かざるもの此の証あり。
医、もしその経行不利なるを見て謝って通経破血の剤を投ぜば、
いたずらに効を奏せざるのみならず、かえって禍端を啓くことあらん。・・・(略)」

臨床的に、防已黄耆湯は水太りのような人ではなく
やせているような人の方が効果が見られたりすることもある。

条文の終わりの方で、
服薬した後に、皮膚に異常感覚が出て、腰から下がうんと冷えるとある、とあるが、
ここの記述は疑問が残り、他の証が紛れ込んだという説もある。

続きます。


<参考文献>
『金匱要略講話』 創元社
『金匱要略も読もう』 東洋学術出版社
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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