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こんにちは、大原です。
先日、一般の方向けに東洋医学講座を開催させて頂きました。
講座のテーマは五行(木・火・土・金・水)で、
その中で干支に関するお話もさせて頂き、
「干支も五行と関わりがあり、その五行ごとの特性から、
各年の気候がどのようになるかを予測するという考え方があります」
とお話しました。
(このような考え方を五運六気学説といいます。)
では、2018年がどのような気候になるのかを、
干支から割り出してみたいと思います。
(参考→過去ブログ:2017年の運気 その10)
まず、簡単に干支について説明しますと、
干支とは、十干(天干)と十二支(地支)を合わせた言葉です。
十二支は一般的によく知られており、
2018年はいわゆる戌(いぬ)年ですね。
正確には「戌」を「じゅつ」と読みます。
十二支は、12年で1サイクルします。
また、十干は10年で1サイクルするもので、
2018年は戊(つちのえ)(ぼ)となります。
まとめると、
2018年の干支は戊戌(つちのえ・じゅつ)となり、
2019年の干支は己亥(つちのと・がい)となります。
十干
・甲(こう、きのえ)
・乙(おつ、きのと)
・丙(へい、ひのえ)
・丁(てい、ひのと)
・戊(ぼ、つちのえ)
・己(き、つちのと)
・庚(こう、かのえ)
・辛(しん、かのと)
・壬(じん、みずのえ)
・癸(き、みずのと)
十二支
・子(ね、し)
・丑(うし、ちゅう)
・寅(とら、いん)
・卯(う、ぽう)
・辰(たつ、しん)
・巳(み、し)
・午(うま、ご)
・未(ひつじ、び)
・申(さる、しん)
・酉(とり、ゆう)
・戌(いぬ、じゅつ)
・亥(い、がい)
さて、この運気学説ですが、
どのようにして各年の気候の推移を割り出すかと言いますと、
大まかには、以下のような流れになります。
(1)まず、その1年における気候の特徴を割り出す(「歳運」から)
(2)その1年の中の気候の推移を、
1年を5つに分け五運を配して割り出す。(「主運」と「客運」から)
(3)また、1年を6つに分けた季節の気候変化を割り出す。(「主気」と「客気」から)
長くなりますので、今回は(1)のみ考えてみたいと思います。
まずはこの考え方の根拠となる素問の内容を見ていきますので
興味のある方は参照してみてください。
『黄帝内経 素問』天元紀大論篇(第66)より(原文と読み)
・・・
陰陽之氣、各有多少。(陰陽の氣に各おの多少あり。)
故曰三陰三陽也。(ゆえに三陰三陽と曰わく。)
形有盛衰、謂五行之治、各有太過不及也。(形に盛衰ありとは五行の治、各おの大過不及あるを謂うなり。)
故其始也、有余而往、不足随之、(ゆえにその始まるや、有余にして往けば、不足これに随い、)
不足而往、有余従之。(不足にして往けば、有余これに従う。)
知迎知随、氣可与期。(迎を知り随を知れば、氣はともに期すべし。)
・・・
甲巳之歳、土運統之、(甲巳の歳は、土運これを統べ、)
乙庚之歳、金運統之、(乙庚の歳は、金運これを統べ、)
丙辛之歳、水運統之、(丙辛の歳は、水運これを統べ、)
丁壬之歳、木運統之、(丁壬の歳は、木運これを統べ、)
戊癸之歳、火運統之。(戊癸の歳は、火運これを統べる。)
この文章では何を言っているのかというと、
・各年ごとに1年間の気候がどのようになるのかが
十干の10年サイクルで決まっているということ
・各年の気候は、土運・金運・水運・木運・火運という五行の5つの運(=「歳運」)によるということ
・五運には「太過」と「不及」とがあり、最初は太過で次は不及と、交互に繰り返す
「太過」と「不及」という言葉が出てきましたが、
ここでは
太過:五行の運気が強い状態
不及:五行の運気が弱い状態
ととらえて頂くと分かりやすいと思います。
以上より、
具体的に十干がどのように五行に配当されるのか、
すなわち各年ごとの歳運が分かります。
各年ごとの歳運を一覧にすると以下のようになります。
十干と五運(歳運)の関係
・甲(こう、きのえ)=土運太過
・乙(おつ、きのと)=金運不及
・丙(へい、ひのえ)=水運太過
・丁(てい、ひのと)=木運不及
・戊(ぼ、つちのえ)=火運太過
・己(き、つちのと)=土運不及
・庚(こう、かのえ)=金運太過
・辛(しん、かのと)=水運不及
・壬(じん、みずのえ)=木運太過
・癸(き、みずのと)=火運不及
2018年は戊でしたので歳運は火運太過となり、
五行の「火」が強くなるという年だと分かります。
そういえば、今年の夏は大変暑かったですね・・・!
さらに、この火運太過の年はどのような気候で、
どのような症状が出やすいのかが
素問に書かれています。
以下に抜粋しますので、興味のある方は読んでみてください。
(以下1行目だけでも火運太過についてのイメージが湧くかも知れません)
『黄帝内経 素問』氣交変大論篇(第69)より(原文と読み)
歳火太過、炎暑流行、金肺受邪。
(歳火太過なれば、炎暑流行し、肺金、邪を受ける。)
民病瘧、少氣、欬喘、血溢、血泄、注下、嗌燥、耳聾、中熱、肩背熱。
(民は瘧を病み、少気、欬喘し、血溢し、血泄し、注下し、嗌燥き、耳聾し、中熱し、肩背 熱す。)
上応熒惑星。
(上に熒惑星(=火星)に応ず。)
甚則胸中痛、脇支満、脇痛、膺背肩胛間痛、両臂内痛、身熱骨痛、而為浸淫。
(甚しければすなわち胸中痛み、脇支 満し、脇痛み、膺背・肩胛の間痛み、両臂 内に痛み、身熱して骨痛みて浸淫をなす。)
收氣不行、長氣独明。
(收の氣は行らず、長の氣ひとり明らかなり。)
雨水霜寒、上応辰星。
(雨水・霜寒ありて、上に辰星(=水星)に応ず。)
上臨少陰少陽、火燔焫、水泉涸、物焦槁。
(上に少陰・少陽に臨めば、火もて燔焫し、水泉は涸れ、物は焦槁す。)
病反譫妄狂越、欬喘息鳴。
(病めば反って譫妄して狂越し、欬喘して息鳴る。)
下甚、血溢泄不已。
(下ること甚だしく、血 溢泄して已まず。)
太淵絶者、死不治。上応熒惑星。
(太淵絶たる者、死して治らず。上に熒惑星(=火星)に応ず。)
記事が長くなってしまいますが、
ついでに、来年の2019年は土運不及となります。
簡単に言うと、土運が弱くなることで
木運が強くなります。(木は土を克すという、五行の相克関係より)
同様に、土運不及に関する素問の記述を抜粋します。
歳土不及、風廼大行、化氣不令、
(歳土不及なれば、風すなわち大いに行り、化氣は令せず、)
草木茂榮、飄揚而甚、秀而不実。
(草木茂榮し、飄揚して甚だしく、秀でて実らず。)
上応歳星。
(上 歳星(=木星)に応ず。)
民病飧泄、霍乱、体重腹痛、筋骨繇復、肌肉瞤酸、善怒。
(民病めば飧泄して、霍乱し、体重くして腹痛み、筋骨は繇復し、肌肉は瞤酸して、善く怒る。)
蔵氣挙事、蟄蟲早附、咸病寒中、上應歳星鎭星。
(蔵氣 事を挙ぐれば、蟄蟲は早く附き、咸 寒中を病み、上は歳星・鎭星に応ず。)
其穀黅。
(その穀は黅(=黄色の穀物)なり。)
復則收政嚴峻、名木蒼凋、胸脇暴痛、下引少腹、善大息。
(復すればすなわち收政 嚴峻にして、名木も蒼凋し、胸脇は暴に痛み、下 少腹に引きて、善く大息す。)
虫食甘黄、氣客於脾、黅穀廼減、民食少失味。
(虫は甘黄を食い、氣は脾に客し、黅穀すればすなわち減じ、民は食少なくして味を失う。)
蒼穀廼損、上応太白歳星。
(蒼穀すなわち損じ、上に太白(=金星)・歳星(=木星)に応ず。)
上臨厥陰、流水不氷、蟄蟲来見。
(上に厥陰に臨めば、流水は氷らず、蟄蟲 来見す。)
蔵氣不用、白廼不復。
(蔵氣用かざれば、白すなわち復せず。)
上応歳星、民廼康。
(上に歳星に応じ、民すなわち康し。)
2019年は土運が弱く、土運を克す木運が乗じてくることから、
風の気が旺盛で草木は繁茂しますが、
土による生成化育の力が弱いため、
穂が出ても実りにくいとあります。
人の病としては、
土に相当する蔵(=脾)が弱くなりやすいということで、
消化不良、下痢、嘔吐、体重、
また、木に相当する蔵(=肝)が旺盛になりやすいということで、
筋肉がひきつって痛む、怒りやすい
といった症状が多くみられるなどとあります。
以上が、2018年と2019年の歳運をもとにした、
1年間の気候の特徴についてでした。
次回は、1年間を5つに分けてその気候の推移についてを
「主運」と「客運」からみていきたいと思います。
参考文献:
『黄帝内経 素問 下巻』 東洋学術出版社
『内経気象学入門』 緑書房
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
大原