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こんにちは、為沢です。

今回は張景岳ちょうけいがくの『質疑録しつぎろく』の第十五章「論《原病式》病機十九条」の其の二です。



和訓:
病機の大要の如きは、各れ其の屬する司る。
其の太過の化す所の病に在れば盛と為す。
盛とは真氣なり。其の受邪の化す所の病に在れば虛と為す。
虛とは、仮氣なり。故に其の病の化すことの有れば、
其の氣の仮なるを恐る、故に有者は亦必ず之を求むべし。
其の病の化することの無ければ、
其の邪の中に隱れるを恐る、凡そ寒の勝りて火と化し、
燥の勝りて風と化し、及び寒の伏して反って躁となり、
熱の伏して反って厥すの類なり、故に無者は亦必ず之を求むべし。
其の病の化の盛に似る者は、其の盛の未だなるを恐る、故に盛者は亦必ず之を責むべし。
其の病の化の虛に似る者は、其の虛の未だ真ならざるを恐る、
故に虛者は亦必ず之を責むべし。
此の一十六字は、病機の要為り、今全て之を去れり、
猶も舟有りて舟を操るの工の無きがごとく、
兵有りて兵を將るの帥の無きがごとし。
實に智士の一失ならん!


・『素問』の十九条の病機は全て「皆属於…」と書かれている。
大過の気によって起こった病を「盛」と称し、「盛」とは真気である。
また、邪を受けて起こった病を「虚」とするが、「虚」とは仮気である。

・「盛」とは正気が盛んであるものであり、
「虚」とは正気が虚しているものである。

・もしも病に正気が盛んであるようにみえても、
よく診察すると虚していることがある。
外見に現れていても、その内面をよくみるべきであるということ=「有者亦必求」

・その病に外見上ほとんど変化がないように見えても
その内面に深く邪がひそんで様々な変化を起こしていることがある。

・寒勝化火
寒が強くて火の性質を呈すること。

・燥勝化風
燥邪によって全身性の反応を起こすこと

・寒伏反躁
寒の性質は沈静であるのに浮燥があること。

・熱伏反厥
厥逆は寒によって起こるのに、反って熱で厥逆が起こること。

・無者亦必求
表面に現れていることだけにとらわれず、内面もよく観察して見極めるべき。

・その病が盛にみえても、盛ではないこともある。
盛と思い込んでいる者は、この思い込みを責めなければいけない。

・その病が虚であるようにみえても、実は虚ではないことがある。
虚と思い込んでいる者は、この思い込みを責めなければならない。

・この十六字は十九条の病機を総括している重要なものである。
それなのに、劉河間はこの十六字を捨て十九条だけ取り上げているのは、
あたかも船舶に舵とりがいないのと同じであり、
軍隊に統率者がいないのと同じではないか。
何とあの有能多才な劉河間ともあろう人がこんな失敗をするなんて!


原文:
如病機大要、各司其屬。其在太過所化之病為盛。
盛者、真氣也。其在受邪所化之病為虛。
虛者、假氣也。故有其病化者、恐其氣之假、故有者亦必求之。
無其病化者、恐其邪隱於中、凡寒勝化火、燥勝化風、
及寒伏反躁、熱伏反厥之類、故無者亦必求之。
其病之化似盛者、恐其盛之未的、故盛者亦必責之。
其病之化似虛者、恐其虛之未真、故虛者亦必責之。
此一十六字、為病機之要、今全去之、
猶有舟無操舟之工、有兵無將兵之帥矣。
實智士之一失也!


参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『格致餘論注釈』医聖社
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社
『宋本傷寒論』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・素問』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・霊枢』東洋学術出版社
『校釈 諸病源候論』緑書房
『景岳全書』台聯國風出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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