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涼しげに池を泳ぐ鯉
涼しげに池を泳ぐ鯉

こんにちは、大原です。
一年半前に書いた記事の続きになります。
前回の記事はこちら↓
金匱要略 臓腑経絡先後病脈証(第1)9条〜11条

それでは、
臓腑経絡先後の病の脈証(第1)より、
続きの12条からみていきます。

<条文1-12>
問曰、脉脱入臟即死、入腑即愈、何謂也。
(問いて曰く、(※1)脈脱は臓に入れば即ち死し、腑に入れば即ち愈ゆ、何の謂いぞや。)
「脈脱は、体内の深い部分に原因がある場合は死に、浅い部分にある場合は癒えるとは、どういうことだろうか?」

※1「脈脱」:力が無くなっている脈のこと。脈絶の意。今日でいう心筋梗塞や急性心停止などに該当すると思われる。

師曰、非為一病、百病皆然。
譬如浸淫瘡、
従口起流向四肢者、可治。
従四肢流来入口者、不可治。
(師曰く、一病為るに非ず、百病皆然り。たとえば(※2)浸淫瘡(しんみそう:全身性の温疹の一種)の如き口より起こりて流れ四肢に向かう者は治(ち)すべし。四肢より流れ来て口に入る者は、治(ち)すべからず。)
「師匠がおっしゃるには、これは一種類の病だけの話ではなく、あらゆる病に言えることである。
たとえば温疹の一種である浸淫瘡の場合もそうであるが、口から始まって手足に拡がっていくものは治り、手足から始まって口に入っていくものは治らない。」

病在外者可治。
入裏者即死。

(病、外に在る者、治すべし。
裏に入る者は即ち死す。)
「病が外に在る場合は治すことができるが、
外から内に入るものは治せないのである。」

※2「浸淫瘡(しんいんそう)」:次第に拡がっていく皮膚病の意。
(「浸淫(しんいん)」:水に浸けるとパーッと拡がっていく状態を示す)

<条文1-13>
問曰、陽病十八、何謂也。
(問いて曰く、陽病十八とは、何の謂ぞや。)
「陽の病に18の症があるといいますが、どのようなものでしょうか?」

師曰、頭痛、項、腰、脊、臂、脚掣痛。
(師曰く、頭痛、項(こう)、腰(よう)、脊(せき)、臂(ひ)、脚(きゃく)掣痛(せいつう)。)
「頭痛、項痛、腰痛、背痛、臂痛、脚が引きつれて痛む、というものである。
(これら6つの症状が三陽にあるため、6×3=18になる)」

陰病十八、何謂也。
(陰病十八とは、何の謂ぞや。)
「陰の病にも18の症があるといいますが、どのようなものでしょうか?」

師曰、欬、上氣、喘、噦、咽、腸鳴脹満、心痛拘急。
(師曰く、欬、上氣、喘、噦、咽、腸鳴脹満、心痛拘急。)
「咳嗽、呼吸困難、吃逆(きつぎゃく:しゃっくり)、噎気(いっき:むせぶこと)、腸が鳴って腹が張る、胸がひきつれて痛む、というものである。(これら6つの症状が三陰にあるため、6×3=18になる)」

五臟病各有十八、合為九十病、人又有六微、微有十八病、合為一百八病。
五労、七傷、六極、婦人三十六病不在其中。

(五臟に病各十八有り、合して九十病と為す、人に又六微有り、微に十八病有り、合して一百八病と為すも、※3五労、七傷、六極、婦人三十六病は其の中に在らず。)
「陰病は18あると述べたが、さらに押し広げて考えると、五臓にそれぞれ病があるため18×5=90の病となる。また、六微を腑の病と考えると、腑の病は18あると述べたが、1腑ごとに18の病があるから六腑で108となる。
ところで、五労、七傷、六極と、婦人の36の病はこの中に入れない。」

※3
五労:久視傷血・久臥傷気・久坐傷肉・久立傷骨・久行傷筋(『素問 宣明五気篇(23)』)
七傷:食傷・憂傷・飲傷・房室傷・飢傷・労傷・経絡営衛気傷(『金匱要略 血痹虚労病篇(6)』
六極:気極・血極・筋極・骨極・肌極・精極 (極ははなはだしい疲弊の意)
婦人三十六病:十二癥・九痛・七害・五傷・三固(『諸病源候論』)

清邪居上、濁邪居下、大邪中表、小邪中裏、䅽飥之邪、従口入者、宿食也。
(清邪は上に居り、濁邪は下に居る。
大邪は表に中り、小邪は裏に中る、※4䅽飥(こくたく・こくじん)の邪、口より入る者は宿食なり。)
「(風邪の)清いものは上に居り、(湿邪の)濁ったものは下に居る。
風は体表にあたって病ましめ、湿は裏にあたって病ましめる。
食物が口から病むものは宿食(しゅくしょく:飲食物の胃腸での停滞)である。」

※4䅽飥(こくたく・こくじん)の邪:飲食の邪

五邪中人、各有法度。
風中於前、寒中於暮、湿傷於下、霧傷於上。風令脉浮、寒令脉急。
霧傷皮腠、湿流関節、食傷脾胃、極寒傷経、極熱傷絡。

(五邪は人に中るに、各法度有り。
風は前に中り、寒は暮に中り、湿は下を傷り、霧は上を傷る。
風は脉を浮ならしめ、寒は脉を急ならしめ、霧は皮腠を傷り、湿は関節に流る、食は脾胃を傷り、極寒は経を傷り、極熱は絡を傷る。)
「五臓が人を侵すにも法則がある。
風は朝、寒は日暮れに体を侵し、湿は下半身を侵し、霧は上半身を傷る。
風邪は脈を浮ならしめ、寒は脈を緊急ならしめる。
霧は皮膚のきめを傷り、湿は関節に侵入し、食は胃腸を破り、極端な寒は経を、極端な熱は絡を傷る。

この13条の解釈については諸説あるようです。
その他の説につきましては、
ぜひ参考文献を参照してみてください。

<参考文献>
『金匱要略講話』 創元社
『金匱要略も読もう』 東洋学術出版社
『基礎中医学』 燎原

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

大原

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