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【原文】
本腑補瀉温涼薬
温:
人参、乾姜、肉桂、呉茱萸、半夏、生姜、胡椒、丁香、糯米、桃花石。

<大腸涼薬に続く>

【現代語訳】
大腸経の補瀉温涼薬
温薬:
人参、乾姜、肉桂、呉茱萸、半夏、生姜、胡椒、丁香、糯米、桃花石。


【生薬】
◉人参

人参
人参

ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
効能
①補気固脱
・大病・久病・大出血・激しい吐瀉などで
元気が虚衰して生じるショック状態で脈が微を呈するときに。
・亡陽で四肢の冷え・自汗などを呈するときに。
方剤例 → 参附湯。

②補脾気
・脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振・四肢無力・泥状~水様便などの症候に。
・気虚下陥による内臓下垂・子宮下垂・脱肛・慢性の下痢などの症候に。
方剤例 → 補中益気湯。
・気虚下陥
元気がない・疲れやすい・動くと息切れがする・
四肢がだるく無力・立ちくらみ・頭痛・眩暈などに。
・気虚発熱
発熱・体の熱感・自汗・悪風・口渇があり熱い飲食を欲する・息切れ・元気がない。

③益肺気
肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと憎悪する)・自汗などの症候に。
方剤例 → 人参蛤蚧散。

④生津止渇
・熱性の気津両傷で高熱・口渇・多汗・元気がない・脈が大で無力などに。
・気津両傷による元気がない・息切れ・口渇・皮膚の乾燥・脈が細で無力などに。
方剤例 → 加減復脈湯。
・消渇証の口渇・多尿に。

⑤安神益智
・気血不足による心神不安の不眠・動悸・健忘・不安感などに。

⑥その他
血虚に対し補血薬と用いて益気生血し、
陽虚に対し補陽薬と使用して益気壮陽し、
補血・壮陽の効果を強める。
正虚の表証や裏実正虚に、
解表薬や攻裏薬とともに少量を使用する。

乾姜かんきょう

乾薑
乾薑

ショウガ科のショウガの根を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
効能:
①温中散寒
・脾胃虚寒の腹部冷痛、腹鳴、未消化下痢、嘔吐などに。
方剤例 → 理中湯(人参湯)。

②回陽通脈
・陽気衰微、陰寒内盛の亡陽虚脱で、
四肢の冷えや脈が微弱の時に。
方剤例 → 四逆湯・通脈四逆湯。
・脾腎陽虚の未消化下痢、四肢の冷え、脈が微弱で、
虚陽上浮によるのぼせ、煩燥に。
方剤例 → 白通湯。

③温肺化痰・化飲
・肺の寒飲による咳嗽や呼吸困難、希薄な痰、背部冷感などに。
方剤例 → 苓甘五味姜辛湯・苓甘姜味辛夏仁湯・小青竜湯。

肉桂にっけい

肉桂『中医臨床のための中薬学』より
肉桂『中医臨床のための中薬学』より

クスノキ科のニッケイ、又は同属植物の幹皮。
性味:辛・甘、大熱
帰経:肝・腎・心・脾・胃
効能:
①温中補陽
・腎陽虚の四肢の冷えや寒がる、腰膝酸軟、
陽萎、頻尿、排尿困難、夜間尿など。
方剤例 → 桂附八味丸・右帰飲・右帰丸。
・脾腎陽虚の食欲不振や腹痛、泥状~水様便などに。
方剤例 → 桂令丸・桂附理中丸。

②散寒止痛
・虚寒の胃痛や腹痛、疝痛などに。
・虚寒の月経痛に。
方剤例 → 理陰煎。
・寒痺の腰痛に。

③温痛経脈
・慢性の皮膚潰瘍、寒冷腫瘍、化膿傾向に乏しい慢性炎症などに。
方剤例 → 陽和湯・托裏散。
・経寒血滞の無月経や月経痛、下腹部の冷痛などに。

④その他
・補気・補血の方剤に少量配合することで、
陽気を温化して気血双補を強める。
方剤例 → 十全大補湯・人参養栄湯。

呉茱茰ごしゅゆ

呉茱萸
呉茱萸

ミカン科のニセゴシュユ、ホンゴシュユの未成熟な果実。
性味:辛・苦・熱・小毒
帰経:肝・腎・脾・胃
効能:
①暖肝・散寒止痛
・肝胃虚寒による濁陰上逆の頭痛、悪心、嘔吐や、
肝寒犯胃の上腹部痛、悪心、嘔吐などに。
方剤例 → 呉茱茰湯・丁茰理中湯。
・寒滞肝脈の四肢の冷えや両側の疝痛などに。
方剤例 → 導気湯・当帰四逆加呉茱茰生姜湯。
・下焦虚寒の月経痛や月経周期の遅れに。
方剤例 → 温経湯・艾附暖宮丸。
・寒湿脚気上逆の腹満や腹痛、下痢などに。
方剤例 → 呉茰木瓜湯。

②下気止嘔
・胃寒の嘔吐、乾嘔、腹痛、よだれが多いなどに。
方剤例 → 呉茱茰湯。
・肝火犯胃の胸の痛み、呑酸、嘔吐などに。
方剤例 → 左金丸・栀茰丸。

③その他
・脾腎陽虚の下痢(五更瀉)に。
方剤例 → 四神丸。

半夏はんげ

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃
効能:
①燥湿化痰
・湿痰の咳嗽や痰が多い、胸苦しいなどに。
又は痰濁のめまいや動悸、不眠症などに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯。
・上記に熱証を伴うもの。
方剤例 → 温胆湯・清気化痰丸。
・風痰による嘔吐、頭痛、めまいなどに。
方剤例 → 玉壺丸・青州白丸子。

②降逆止嘔
・胃寒や痰飲の嘔吐に。
方剤例 → 小半夏湯・小半夏加茯苓湯。
・胃虚の嘔吐に。
方剤例 → 大半夏湯・乾姜人参半夏丸。
・胃熱の嘔吐に。
方剤例 → 黄連橘皮竹筎半夏湯・温胆湯。

③消痞散結
・痰熱の心窩部の痞えに。
方剤例 → 半夏瀉心湯。
・痰熱の小結胸で心窩部に圧痛があるときに。
方剤例 → 小陥胸湯。

④その他
・老人の虚秘に。
方剤例 → 半硫丸。
・生半夏を、皮膚化膿症に用いる。

生姜しょうきょう

生薑
生薑

ショウガ科のショウガの根茎。
性味:温・辛
帰経:肺・脾・胃
効能:
①散寒解表
・風寒表証に辛温解表薬の補助として発汗を増強する。
方剤例 → 桂枝湯。

②温胃止嘔
・胃寒による嘔吐に。
方剤例 → 小半夏湯。
・胃熱の嘔吐にも。
方剤例 → 橘皮竹筎湯。

③化痰行水
・風寒による咳嗽・白色で希薄な痰に。
方剤例 → 杏蘇散。

④解毒

胡椒こしょう

胡椒『中医臨床のための中薬学』より
胡椒『中医臨床のための中薬学』より

コショウ科コショウの未成熟果実。
又は成熟果実の皮を去ったもの。
性味:辛・熱
帰経:胃・大腸
効能:
①温中散寒・行気止痛
・胃寒の上腹部痛や嘔吐に。

②その他
・調味料として食欲増進や、解毒作用がある。

◉丁香

丁香『中医臨床のための中薬学』より
丁香『中医臨床のための中薬学』より

フトモモ科チョウジノキの花蕾。
性味:辛・温
帰経:肺・脾・胃・腎
効能:
①温中降逆
・胃寒の迄逆や嘔吐に。
方剤例 → 柿蒂湯・丁香柿蒂湯。
・脾胃虚寒による食欲不振や嘔吐、下痢などに。
方剤例 → 丁香散。

②下気止痛
・奔豚気逆の胸腹の痛みに。
・胃寒の上腹部の痛み。
・ヘルニアなどの下腹部の疼痛に。
方剤例 → 丁香楝実丸。

③温腎助陽
・腎陽虚のインポテンツや陰部の冷感、帯下などに。


コーヒー缶
コーヒー缶

GEORGE HAYASHI氏のデザイン。
格好良かったので、思わず記録に残しました!


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『現代語訳◉黄帝内経霊枢 上巻』 東洋学術出版
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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