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前回の記事: (黄帝内経から考える「健康」 その12)
こんにちは、大原です。
前回は、季節はずれの風は
発病因子になるという内容の記述をみていきましたが、
この自然界の風のことを「八風(はっぷう)」といいました。
「八風」とは八方向からの風の意味で、
東西南北とその間の、合計八方向からの風をいいます。
その詳細について
黄帝内経の素問ではなく霊枢(れいすう)に
記述がありますので
みてみましょう。
『黄帝内経 霊枢』 九宮八風篇(77)より
<原文>
風従南方来、名曰大弱風。其傷人也、内舍於心、外在於脉、氣主熱。
風従西南方来、名曰謀風。其傷人也、内舍於脾、外在於肌、其氣主為弱。
風従西方来、名曰剛風。其傷人也、内舍於肺、外在於皮膚、其氣主為燥。
風従西北方来、名曰折風。其傷人也、内舍於小腸、外在於手太陽脉、脉絶則溢.脉閉則結不通、善暴死。
風従北方来、名曰大剛風。其傷人也、内舍於腎、外在於骨与肩背之膂筋、其氣主為寒也。
風従東北方来、名曰凶風。其傷人也、内舍於大腸、外在於両脇腋骨下及肢節。
風従東方来、名曰嬰兒風。其傷人也、内舍於肝、外在於筋紐、其氣主為身湿。
風従東南方来、名曰弱風。其傷人也、内舍於胃、外在肌肉、其氣主体重。
此八風皆従其虚之郷来、乃能病人。
少し長いので、一行目の意味だけ書きます↓
南からの風を大弱風という。
人体の内側を侵す場合は五蔵の心に影響し、外側では脉に影響する。
その氣は熱を主る。
となります。以下、同様の文章が続きますので、
下に表にしてまとめてみました。
また、最後の文は
此八風皆従其虚之郷来、乃能病人。
(この八風、皆其の虚の郷より来れば、すなわちよく人を病ましむ)
とあり、意味としては、
これらの八風は、その季節にふさわしい方角とは
異なる方向からの風(季節外れの風)であり、
人を病にさせることができるのであるとなります。
極端にいえば、夏場にもかかわらず
寒い北風が吹くようなものでしょう。
方角 | 名称 | 影響を受ける臓腑 | 影響を受ける組織 | 性質 |
---|---|---|---|---|
南 | 大弱(だいじゃく)風 | 心 | 脉 | 熱 |
西南 | 謀(ぼう)風 | 脾 | 肌 | 弱 |
西 | 剛(ごう)風 | 肺 | 皮膚 | 燥 |
西北 | 折(せつ)風 | 小腸 | 手太陽脉 | 熱 |
北 | 大剛(だいごう)風 | 腎 | 骨格と肩背部の筋 | 寒 |
東北 | 凶(きょう)風 | 大腸 | 両脇腋の骨及び上肢の関節 | (記載なし) |
東 | 嬰兒(えいじ)風 | 肝 | 筋の連結部 | 湿に苦しむ |
東南 | 弱(じゃく)風 | 胃 | 肌肉 | 体が重くなる |
季節外れの風の吹いてくる方向と、
侵される身体の組織までも
まとめているところが面白いなと思います。
実際にこれが合っているのかどうかは難しいところですが、
例えば、五臓の心は、夏に旺盛になって
それ以外の季節には他の臓腑が旺盛になると考えられており、
熱気の強い(温かい)南風に対して
夏場の旺盛な状態の心ならへっちゃらですが、
それ以外の季節になると心はそれほど強くなく
侵されやすいということになり、
理屈に合っているかと思います。
興味深いですね。
参考文献
『黄帝内経 素問』 東洋学術出版社
『黄帝内経 霊枢』 東洋学術出版社
『意釈黄帝内経 素問』 築地書店