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こんにちは、大原です。
今年度の鍼灸の国家試験も終わり、
受験された方は今月下旬の合格発表を
首を長くして待たれている事と思います。
「今年は難しかった」という声を聞きましたが、
受験された皆さん、いかがでしたでしょうか?
自己採点で、合否結果はある程度予測できると思いますが、
正式な合否を確認するまでは気が抜けないですね。
さて、今回も東洋医学系の過去問をみてみたいと思います。
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第23回あん摩マッサージ指圧師国家試験問
(平成27年2月21日(午後)実施)
問93より
心と表裏関係にある腑の生理作用はどれか。
1.水穀の受納
2.清濁の分別
3.胆汁の貯蔵
4.糟粕の伝化
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さて、いかがでしょうか?
試験に合格されるレベルの方にとっては
簡単な問題だと思います。
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解説していきますと、
心の表裏関係にあたる腑とは
小腸です。
選択肢1〜4それぞれは
何かの腑の生理作用について述べていますが、
1→胃
2→小腸
3→胆
4→大腸
となります。
というわけで、
正解は2.小腸となりますね。
さて、試験に合格するだけでしたら
これで問題ないのですが、
なぜ小腸は清濁を分別するという選択肢が正解になるのか
考えてみたいと思います。
(「学校の教科書に載っているからいいじゃないか」という声も
聞こえそうですが(^_^;)
現代の東洋医学の礎になっているのが
「黄帝内経(こうていだいけい)」という東洋医学の古文書となります。
五臓六腑の生理や病理、自然と人との関係など
様々な内容が記されています。
この黄帝内経には、
「小腸は清濁を分別する」という記述は直接的には書かれていません。
書かれているのは「小腸は『受盛(じゅせい)の官』といい、
胃に入った飲食物の消化・吸収を行っている」という内容です。
(注:この「消化・吸収」という言葉も微妙かも知れませんが、
現代的にこのように表現した方が分かりやすいかと思いました。)
黄帝内経は、
後世の医家によって注釈が加えられた書物が多く刊行されましたが、
1624年には張介賓(ちょうかいひん)という医者が
30年の年月をかけて「類経(るいきょう)」という書物を記し終えました。
その記述量の多さから、
黄帝内経を含め、これまでの医学の
集大成のような内容であったことが窺えます。
その中の「小腸」の生理作用についての記述を
抜粋してみます。
小腸居胃之下、
受盛胃中水穀而分清濁、
水液由此而滲于前、
糟粕由此而帰于後、
脾気化而上昇、
小腸化而下降、
故曰化物出焉。
〜『類経』 蔵象類・十二官 より〜
(『黄帝内経素問』 霊蘭秘典論篇の注釈)
念のため漢文の読み方も加えてみます。
小腸居胃之下、(小腸は胃の下に居り、)
受盛胃中水穀而分清濁、(胃中の水穀を受盛して清濁を分ける。)
水液由此而滲于前、(水液はこれより前に滲み、)
糟粕由此而帰于後、(糟粕はここより後に帰る。)
脾気化而上昇、(脾気は化して上昇し、)
小腸化而下降、(小腸は化して下降する。)
故曰化物出焉。(ゆえに化物出づという)
2行目に「(小腸は)清濁を分ける」と書かれていますね。
現代の中医学において、
小腸が清濁を分けるとしているのは
ここの内容が根拠となっていることが分かります。
東洋医学概論の内容が、
どこからきているのかを考えることは
意義深いことだと思いますがいかがでしょうか。