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どうも下野です。
引き続き肺の補瀉温涼の薬の内容となり、
今回は瀉薬に関してになります。
【原文】
肺臓補瀉温涼薬
瀉:
葶藶、防風、枳穀、檳榔、桑白皮、通草、沢瀉、琥珀、
赤茯苓、紫蘇葉、枳実、麻黄、杏仁、蘿蔔子。
<温薬に続く>
【現代語訳】
肺臓の補瀉温涼薬。
瀉す薬:
葶藶、防風、枳穀、檳榔、桑白皮、通草、沢瀉、琥珀、
赤茯苓、紫蘇葉、枳実、麻黄、杏仁、蘿蔔子。
【生薬】
◉葶藶子
アブラナ科のクジラグサ、ヒメグンバイナズナなどの
成熟した種子。
性味:辛・苦・寒
帰経:肺・膀胱・大腸
効能:
①瀉肺平喘
・痰飲壅肺の咳嗽や呼吸困難、喘鳴などに。
方剤例 → 葶藶大棗瀉肺湯。
②行水消腫
・水飲停留腸間の腹水や腹満、口渇などに。
方剤例 → 已椒藶黄丸。
・結胸の胸水、便秘、尿量減少などに。
方剤例 → 大陥胸丸。
◉防風
セリ科のボウフウの根および根茎。
帰経:辛・甘・微温
性味:肝・脾・膀胱
効能:
①散風解表
・風寒表証の発熱・悪寒・頭痛・身体痛などの症候時に用いる。
方剤例 → 川芎茶調散。
②勝湿止痛
・風寒湿痺の関節痛・筋肉のひきつりに用いる。
方剤例 → 防風湯。
③祛風止痛
・破傷風など、外風による痙攣・ひきつりに用いる。
方剤例 → 玉真散。
◉枳穀
ミカン科のダイダイ、イチャンレモンの成熟果実。
性味・帰経・効能は
枳実と同じあるが、
作用が緩和で理気寛中や
胸腹の気滞による痛みに適す。
日本産では夏代や温州ミカンがこれに当たる。
◉檳榔
ヤシ科の檳榔樹の成熟した種。
性味:苦・辛・温
帰経:胃・大腸
効能:
①行気消積・瀉下
・食積気滞の腹満や腹痛、便秘等に。
方剤例 → 木香檳榔丸。
・湿熱下痢のテネスムスに。
方剤例 → 芍薬湯。
②利水消腫
・脚気の腫脹や痛みに。
方剤例 → 鶏鳴散・九味檳榔湯。
・実証の水腫に。
③殺虫
・線虫や回虫の虫積に。
④その他
・マラリア等に。
◉桑白皮(桑皮)
クワ科カラグワのコルク層を除去した根皮。
性味:甘・寒
帰経:肺
効能:
①瀉肺平喘
・肺熱の咳嗽や呼吸困難などに。
方剤例 → 瀉白散・五虎湯。
②利水消腫
・肺気壅実の浮腫や尿量の減少に。
方剤例 → 五皮散。
◉通草(つうそう)
ウコギ科カミヤツデの茎髄。
性味:甘・淡・寒
帰経:肺・胃
効能:
①清熱利水
・湿熱下注の排尿痛や排尿困難に。
方剤例 → 通草湯。
・湿温初期の悪寒、発熱、怠さなどに。
方剤例 → 三仁湯。
②通気下乳
・乳汁の分泌不全に。
方剤例 → 通乳湯。
◉沢瀉
オモダカ科のサジオモダカの皮を取り除いた茎。
性味:甘・淡・寒
帰経:腎・膀胱
効能:
①利水滲湿・泄熱
・水湿停滞の尿量減少や水腫、水様下痢などに。
方剤例 → 四苓散・五苓散。
・湿滞有熱に。
方剤例 → 猪苓湯。
・湿熱下注の排尿痛や排尿困難、尿の混濁に。
方剤例 → 五淋散。
②除痰飲
・痰飲停留のめまいに。
方剤例 → 沢瀉湯・半夏白朮天麻湯。
③その他
・腎火を泻す。
方剤例 → 六味地黄丸。
◉琥珀
古代のカエデ、マツなどの樹脂が、
長期間地層に埋没して化石化したもの。
性味:甘・平
帰経:心・肝・肺・膀胱
効能:
①鎮驚安神
・心神不寧の動悸や不眠、不安感に。
方剤例 → 琥珀定志丸・琥珀多寐丸。
・癇癪、驚きや恐れ、小児驚風に。
方剤例 → 琥珀抱竜丸・琥珀寿星丸。
②行気散瘀
・血瘀気滞の無月経や腹腔内腫瘤に。
方剤例 → 琥珀散。
③利水通淋
・膀胱湿熱の排尿痛や排尿困難、血尿に。
方剤例 → 琥珀散。
◉茯苓
サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。
性味:甘・淡・平
帰経:心・脾・肺・腎・胃
効能
①利水滲湿
・水湿停滞の尿量減少や浮腫に。
方剤例 → 四苓散・五苓散。
②健脾補中
・脾虚の食欲不振や元気がない、腹鳴、水様便などに。
方剤例 → 四君子湯・啓脾湯・参苓白朮散。
・脾虚の水湿停滞で悪心や嘔吐、めまいなどに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯・六君子湯・小半夏加茯苓湯。
③寧心安神
・心神不寧の不眠や動悸などに。
方剤例 → 帰脾湯・安神定志丸。
《附 赤茯苓》
マツホドの菌核で内側の肉部が淡紅色のもの。
効能
・滲利湿熱の効能があり、
湿熱下注の排尿痛や排尿困難に用いる。
◉紫蘇
シソ科のシソ。
また、近縁植物の葉。
性味:辛・温
帰経:肺・脾・胃
効能:
①散寒解表
・風寒表証の頭痛・悪寒・発熱など。
方剤例 → 加味香蘇散。
・胸苦、痞え、食欲不振など。
方剤例 → 香蘇散。
・咳嗽、息苦しいなど。
方剤例 → 杏蘇散。
②理気寛中
・脾胃の気滞による腹満、嘔吐、悪心などに。
方剤例 → 霍香正気散。
・痰凝気滞の梅核気。
方剤例 → 半夏厚朴湯。
③行気安胎
・気滞、気鬱の胎動不安、悪阻に。
方剤例 → 黄連蘇葉湯、順気飲子。
④解魚蟹毒
・魚貝類の中毒による悪心、嘔吐など。
◉枳実
ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
効能:
①破気消積
・調胃湿熱積滞の腹痛や便秘、或いは下痢などに。
方剤例 → 枳実導滞丸。
・熱結の便秘や腹満、腹痛に。
方剤例 → 大承気湯。
・気滞血瘀の腹痛や腹満などに。
方剤例 → 通導散・枳実芍薬散。
②化痰消痞
・胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しいや呼吸促迫に。
方剤例 → 導痰湯・滌痰湯。
・痰濁阻滞胸陽の胸痛や胸の痞えなどに。
方剤例 → 枳実薤白桂枝湯。
・寒疑気滞の胃痛や上腹部の痞えに。
方剤例 → 橘皮枳実生姜湯。
・飲食停滞・脾胃不運の上腹部の痞えや腹痛、食欲不振に。
方剤例 → 枳実消痞丸・枳朮丸。
span style=”font-size: 18px;”>◉麻黄
マオウ科のシナマオウなどの
同属植物の木質化していない地上茎。
性味:辛・微苦・温
帰経:肺・膀胱
効能:
①発汗解表
・外感風寒の悪寒や発熱、無汗、頭痛、関節痛などに。
方剤例 → 麻黄湯。
②宣肺平喘・止咳
・外邪による肺気不宣の呼吸困難、咳嗽に。
方剤例 → 三拗湯。
・寒飲の肺気不宣に。
方剤例 → 小青竜湯。
・壅熱による肺気不宣に。
方剤例 → 麻杏甘石湯・五虎湯・定喘湯。
③利水消腫
・表証を伴った水腫に。
方剤例 → 麻黄加朮湯・甘草麻黄湯。
・内熱の自汗や口乾、発熱などに。
方剤例 → 越婢湯・越婢加朮湯。
・裏寒の冷えや脈沈に。
方剤例 → 麻黄附子湯。
④その他
・遊走性の皮疹に。
・風寒湿痺の疼痛などに。
方剤例 → 陽和湯。
◉杏仁
バラ科ホンアンズ、アンズの種子。
性味:苦・辛・温・小毒
帰経:肺・大腸
効能:
①止咳平喘
・外感や痰濁の実邪による咳嗽や呼吸困難に。
・風寒による喘咳や多痰に。
方剤例 → 杏蘇散・桂枝加厚朴杏仁湯。
・肺熱の喘嗽に。
方剤例 → 麻杏甘石湯・五虎湯。
・肺燥の喘咳に。
方剤例 → 桑杏湯。
②潤腸通便
・老人や産後血虚の腸燥便秘に。
方剤例 → 五仁丸・麻子仁丸・潤腸湯。
③その他
・肺気を宣通して水道通調する。
方剤例 → 三仁湯・杏仁滑石湯。
◉蘿蔔子
アブラナ科ダイコンの成熟種子。
性味:辛・甘・平
帰経:脾・胃・肺
効能:
①消食化積・行滞除脹
・食積気滞の腹満や曖気、呑酸、腹痛など。
方剤例 → 保和丸。
・湿をともなえば茯苓、熱なら連翹、脾虚なら白朮を加える。
②降気化痰
・多痰の咳嗽や呼吸困難に。
方剤例 → 三子養親湯。
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<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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下野