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3月18日(日) :告知!第7回 鍼灸学生の為の勉強会
下野です。
肺経の経脈歌の続きとなりますが、
ここからは
肺の補瀉温涼の薬の内容となります。
今回は補薬に関してになります。
【原文】
肺臓補瀉温涼薬
補:
人参、黄耆、天門冬、阿膠、紫苑、山薬、五味子、
麦門冬、瓜蔞、百部、沙参、馬兜苓、白茯苓。
<瀉薬に続く>
【現代語訳】
肺臓の補瀉温涼薬。
補う薬:
人参、黄耆、天門冬、阿膠、紫苑、山薬、五味子、
麦門冬、瓜蔞、百部、沙参、馬兜苓、白茯苓。
【生薬】
◉人参
ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
効能
①補気固脱
・大病・久病・大出血・激しい吐瀉などで
元気が虚衰して生じるショック状態で脈が微を呈するときに。
・亡陽で四肢の冷え・自汗などを呈するときに。
方剤例 → 参附湯。
②補脾気
・脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振・四肢無力・泥状~水様便などの症候に。
・気虚下陥による内臓下垂・子宮下垂・脱肛・慢性の下痢などの症候に。
方剤例 → 補中益気湯。
・気虚下陥
元気がない・疲れやすい・動くと息切れがする・
四肢がだるく無力・立ちくらみ・頭痛・眩暈などに。
・気虚発熱
発熱・体の熱感・自汗・悪風・口渇があり熱い飲食を欲する・息切れ・元気がない。
③益肺気
肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと憎悪する)・自汗などの症候に。
方剤例 → 人参蛤蚧散。
④生津止渇
・熱性の気津両傷で高熱・口渇・多汗・元気がない・脈が大で無力などに。
・気津両傷による元気がない・息切れ・口渇・皮膚の乾燥・脈が細で無力などに。
方剤例 → 加減復脈湯。
・消渇証の口渇・多尿に。
⑤安神益智
・気血不足による心神不安の不眠・動悸・健忘・不安感などに。
⑥その他
血虚に対し補血薬と用いて益気生血し、
陽虚に対し補陽薬と使用して益気壮陽し、
補血・壮陽の効果を強める。
正虚の表証や裏実正虚に、
解表薬や攻裏薬とともに少量を使用する。
◉黄耆
マメ科のキバナオウギ、ナイモウオウギの根。
性味:甘・温
帰経:脾・腎
効能
①潤肺滋腎・清熱化痰
肺熱傷陰の咳や痰、喀血、呼吸困難に。
方剤例 → 二冬膏。
・肺腎陰虚の咳や痰、血痰、潮熱に。
方剤例 → 滋陰降火湯・月華丸。
・熱病傷陰の口渇などに。
方剤例 → 三才湯。
②潤腸通便
・腸燥便秘に。
◉阿膠
ウマ科のロバやウシなどの除毛した皮を
水で煮て製したニカワ塊。
性味:甘・平
帰経:肺・肝・腎
効能
①補血
・血虚で顔色が悪いやふらつき、めまい、動悸などに。
②滋陰
・陰虚火旺による焦躁や不眠などの症状に。
方剤例 → 黄連阿膠湯。
・熱病の傷陰、もしくは慢性病の肝腎陰虚で、
体が熱い、手足の火照り、寝汗、めまい、ふらつき等に。
方剤例 → 加減腹脈湯・阿膠鶏子黄湯。
③止血
・鼻出血、喀血、吐血、血尿、血便、月経過多などに。
方剤例 → 芎帰膠艾湯・寿胎丸。
④清肺潤燥
・肺陰虚の咳や痰、血が混じる痰に。
方剤例 → 補肺阿膠湯。
・燥熱傷肺の咳や呼吸促迫、口渇などに。
方剤例 → 清燥救肺湯。
◉紫菀
キク科シオンの地下部分。
性味:辛・苦・温
帰経:肺
効能
①潤肺下気・化痰止咳
・外感の咳嗽で、痰が出せない時に。
方剤例 → 止嗽散
・陰虚労熱の咳嗽や血痰に。
方剤例 → 紫菀湯。
・慢性の咳嗽に。
方剤例 → 紫菀百花散。
・肺気虚の寒咳に。
方剤例 → 済生紫菀湯。
◉山薬 (薯蕷)
ヤマノイモ科ナガイモの外皮を去った根茎。
性味:甘・平
帰経:脾・肺・腎
効能:
①補脾止瀉
・脾虚の食欲不振や元気がない、泥状便、水様便等に。
方剤例 → 参苓白朮散・啓脾湯。
②養陰扶脾
・脾陰虚の食欲不振や食後の脹腹、口の乾き等に。
方剤例 → 一味薯蕷飲・珠玉二宝粥・慎柔養真湯・玉液湯・資生湯。
③養肺益陰・止咳
・肺虚の慢性咳嗽や呼吸困難に。
④補腎固精・縮尿・止帯
・腎虚の遺精に。
方剤例 → 六味地黄丸・八味地黄丸・知柏地黄丸・左帰飲・右帰飲。
・腎虚の頻尿に。
方剤例 → 縮泉丸。
・腎虚の白色帯下に。
方剤例 → 秘元煎。
◉ 五味子(五味)
マツブサ科チョウセンゴミの成熟した果実。
性味:酸・温
帰経:肺・心・腎
効能
①斂肺止咳・定喘
・肺虚、肺腎両虚の慢性咳嗽や呼吸困難に。
方剤例 → 五味子湯・麦味地黄丸。
・肺寒の咳嗽に。
方剤例 → 五味細辛湯・小青竜湯。
②固表斂汗
・陰虚の盗汗や陽虚の自汗に。
方剤例 → 柏子仁丸。
③益腎固精
・腎虚の遺精や頻尿、尿失禁に。
方剤例 → 桑螵蛸丸。
④渋腸止瀉
・脾腎陽虚の五更泄瀉、慢性の下痢に。
方剤例 → 四神丸。
⑤益気生津・止渇
・気陰両傷の口渇や疲労感、動悸などに。
方剤例 → 生脈散・清暑益気湯。
・気陰両虚の消渇に。
方剤例 → 玉液湯・黄耆湯・麦門冬飲子。
◉麦門冬
ユリ科のジャノヒゲの塊根。
性味:甘・微苦・微寒
帰経:肺・心・胃
効能
①清熱潤肺・止咳
・肺熱傷陰や肺陰虚の咳や痰、血痰に。
方剤例 → 麦門冬湯・沙参麦冬湯・二冬膏・竹葉石膏湯。
②養胃生津
・胃陰不足の口渇や舌の乾燥に。
方剤例 → 益胃湯・養胃湯。
・熱病の傷津耗気で口渇、気力がない、脈細等を呈するときに。
方剤例 → 生脈散・加減復脈湯。
③清心除煩
・心陰虚の不眠や焦燥に。
方剤例 → 天王補心丹。
・温熱病の営分証に。
方剤例 → 清営湯・清宮湯。
④潤腸通便
・津液の虛による便秘に。
方剤例 → 益液湯。
◉瓜蔞
ウリ科シナカラスウリなどの全果実。
又は果実の皮殻、種子、種子から油分を除いたもの。
性味:甘・寒
帰経:肺・胃・大腸
効能
①清熱化痰
・痰熱の咳嗽や粘質の痰、胸が苦しいなどに。
方剤例 → 栝楼枳実丸・清気化痰丸。
・小児の呼吸困難や呼吸促迫に・
②利気寛胸・降濁散結
・痰濁阻滞の胸痛に。
方剤例 → 栝楼薤白半夏湯。
・痰熱互結の胸痛や胸苦しい、咳嗽などに。
方剤例 → 小陥胸湯。
③消腫散結
・肺化膿症の咳嗽、血痰、胸痛などに。
方剤例 → 治肺癰方。
・乳腺炎や皮膚化膿症の初期の腫れや痛みに。
方剤例 → 治父癰方・栝楼牛蒡湯・神効栝楼散。
④潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 栝楼散。
・食滞便秘に。
方剤例 → 栝楼丸。
◉百部
ビャクブ科植物の肥大根。
性味:甘・苦・微温
帰経:肺
効能
①潤肺止咳
・外感の咳嗽に。
方剤例 → 止嗽散。
・肺虚の久咳に。
方剤例 → 百部湯。
・肺熱の咳嗽に。
方剤例 → 百部散。
・風寒の咳嗽に。
方剤例 → 百部丸。
・肺結核の咳嗽や血痰に。
方剤例 → 治肺結核咳痰血方。
・小児の百日咳に。
②殺虫
・シラミやトリコモナス、蟯虫、回虫に。
◉沙参
セリ科の浜防風の皮を去った根部。
性味:甘・微苦・微寒
帰経:肺・胃
効能
①清肺熱・養肺陰
・温・燥による咳、咽や鼻の乾燥、痰、発熱等。
方剤例 → 桑杏湯
・燥熱傷陰や肺陰虚の咳、血痰、体の熱感等。
方剤例 → 沙参麦冬湯
②養胃生津
・熱病の傷津による口渇に。
方剤例 → 養胃湯・益胃湯
◉馬兜鈴(兜苓)
ウマノスズクサ科のマルバウマノスズクサ、
ウマノスズクサの成熟した果実。
性味:苦・微辛・寒
帰経:肺・大腸
効能
①清肺降気・止咳平喘
・肺熱の咳嗽や呼吸困難に。
方剤例 → 馬兜鈴湯。
・肺陰虚の慢性的な咳嗽、呼吸促迫、血痰などに。
方剤例 → 補肺阿膠湯。
②清腸消腫
・腸熱による痔や下血、肛門痛などに。
◉茯苓
サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。
性味:甘・淡・平
帰経:心・脾・肺・腎・胃
効能
①利水滲湿
・水湿停滞の尿量減少や浮腫に。
方剤例 → 四苓散・五苓散。
②健脾補中
・脾虚の食欲不振や元気がない、腹鳴、水様便などに。
方剤例 → 四君子湯・啓脾湯・参苓白朮散。
・脾虚の水湿停滞で悪心や嘔吐、めまいなどに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯・六君子湯・小半夏加茯苓湯。
③寧心安神
・心神不寧の不眠や動悸などに。
方剤例 → 帰脾湯・安神定志丸。
数年前、
仲良くなった名前も知らぬおじさんが乗っていたJAGUAR。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
下野