<近日開催予定のイベント>
2月11日(日):参加申込み受付中!【第五回 一般向け東洋医学養生講座 】
こんにちは、大原です。
今年のはり師国家試験・きゅう師国家試験は
2月25日(日)に行われます。
<厚生労働省HPより>
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/harishi/
今日は1月24日ですので、1ヶ月後が本番ですね。
体調に気を付けて、
試験勉強のラストスパートを乗り切っていきましょう。
さて、今回も東洋医学系の
試験問題を解いてみたいと思います。
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<はり師きゅう師国家試験問題>
第25回 午後問題 (2017年の問題です。)
問題117 次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。
「82歳の女性。主訴は腰痛。頻尿があり、くしゃみなどで失禁することがある。」
1.腎陽虚
2.腎精不足
3.腎不納気
4.腎気不固
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さて解いてみましょう。
いかがでしょう、
解けましたか?
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さて、選択肢をみますと
どれも五臓の「腎」に関わるもので、
どれが正解なのか迷ってしまう問題だと思います。
教科書ベースで、
選択肢を一つひとつみていきましょう。
1.腎陽虚
→腎陽の不足によって温煦作用、気化作用が低下し陽虚の証候が起こる。
主症状:腰のだるさ、寒がり、四肢の冷えがあり、
腎の機能失調に加えて明確な寒証の症状の有無が弁証・鑑別のポイントとなる。
2.腎精不足
→腎精が不足した状態であり、精の機能が減退する病症である。
成人では髄海の滋養不足、生殖機能の減退があり、
寒熱の偏重がないことが弁証・鑑別のポイントとなる。
3.腎不納気
→納気が失調し、吸気を深く吸い込むことができず、
呼吸困難・息切れ・呼多吸少(呼気が多く、吸気が少ない)などが起こる。
4.腎気不固
→固摂が失調し、本来留めておくべきものを留めることができず、流れ出してしまうため、
遺尿・頻尿・流産・早産などが起こる。
これらの選択肢からすると、
頻尿や、くしゃみをきっかけに頻尿をおこしてしまうということから、
解答は「 4 」でしょう。
他の選択肢が消去できる理由は、
1.腎陽虚 → 寒証の所見について記述がない
2.腎精不足 → 随階の滋養不足(目眩・健忘・耳鳴りなど脳が滋養されないことによる症状)についての記述がない
3.腎不納気 → 呼吸(吸気)に関する症状についての記述がない
というところでしょうか。
皆さん解けましたでしょうか?
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さて、時間のある方はもう少し深く考えてみましょう。
問いの文の設定では、
最初に、「主訴は腰痛」とあります。
腰の問題は、五臓の「腎」と関わりが深いと考えられたりしますが、
これは素問の
「腰は腎之府である」という記述が根拠となっています。
両腎は腰の内部にあるという位置関係が
大きな理由であると解釈されているようです。
関連する内容も一緒に、原文を抜粋します。↓
『素問 脉要精微論篇(第17)』より
夫五藏者、身之強也。
頭者、精明之府。頭傾視深、精神将奪矣。
背者、胸中之府。背曲肩隨、府將壞矣。
腰者、腎之府。転揺不能、腎将憊矣。
膝者、筋之府。屈伸不能、行則僂附、筋将憊矣。
骨者、髄之府。不能久立、行則振掉、骨將憊矣。
得強則生、失強則死。
ここでは、五臓(五府)は
身体が健康であるための基礎であることが記されています。
腎に関係するところでは、
「転揺不能」=「腰を回したり動かすことができない」のは、
「腎将憊矣」=「腎が疲れ切ってしまった」ためである
と書かれています。
「憊(はい)」の字は、現代でも
「疲労困憊(ひろうこんぱい)」などといって使われたりしますね。
さて、主訴が腰痛であり、腎に何かしら問題があるということですが、
選択肢の方ももう少し考えてみましょう。
「3.腎不納気」 と、「4.腎気不固」ですが、
教科書的に、これらはどちらも「腎気虚」に属します。
腎気が失調し、
どのような症状を呈するかによって
病証が「腎不納気」か「腎気不固」かに分かれるようです。
「1.腎陽虚」ですが、
腎陽の不足があるとうことですが、
温煦作用とは気の作用の一つですので、
温煦作用が低下しているということは
気虚がかなり進行しているとも考えられます。
以上から、腎気の虚が
どのような程度なのか、
どのような症状を呈しているかによって
病証名が変わっているということになります。
そのため、どの病証においても
腎気の虚が主であることから、
同じような症状・所見が現れても
おかしくないと考えられるとも思います。
ですが、択一試験においては
最も答えとしてふさわしい選択肢を選びましょう。
参考文献
『新版 東洋医学概論』 東洋療法学校協会
『黄帝内経 素問』 東洋学術出版社