どうも、為沢です。
先日、NASA(米航空宇宙局)が公開した
土星探査機カッシーニが捉えた土星の画像です。
CGちゃうん?と思うほど美しい画像ですが
見れば見るほど遠近感がおかしく見えませんか?
大気が存在しない宇宙では
空気の揺らぎがなく全てが鮮明に見え、
遠くの物も鮮明に見えるが故に、
目が錯覚を起こし遠近感にズレが生じる…
ことは知っていたのですが
この写真を見ると正にそれを実感した気分です。
勉強になりました。(いつも宇宙ネタばかりですみません…)
では、今回の傷寒論は
弁太陽病脈証并治(中)の三十二章と三十三章。
三十二章では二陽の合病で下痢になった場合に
ついて述べ、三十三章では太陽と陽明の合病で
嘔をみる場合の証治について述べております。
弁太陽病脈証并治(中)三十二章
太陽与陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。方二。
和訓:
太陽と陽明の合病のものは、必ず自ら下利す。葛根湯之を主る。
・太陽与陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。
太陽と陽明の二経が同時に発病したので、
太陽と陽明の合病といい、
邪の所在は太陽位を本位として同時に
その勢いを陽明位に現すものである為、
陽明経に連なる大腸が失調して、
下痢を生じている状態であるが
原因は表にあるので、
葛根湯で表実を治すことで裏症は治る。
・葛根湯(こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:太陽病脈証并治(中)三十一章)
提要:
太陽と陽明の合病で下痢が出現した場合の治法を述べている。
訳:
太陽経と陽明経とが同時に邪を受けて発病すると、
必ず下痢が出現し、これは葛根湯で治療する。
三十三章
太陽与陽明合病者、不下利、
但嘔者、葛根加半夏湯主之。方三。
葛根四兩 麻黄三両、去節 甘草二兩、炙芍藥二両
桂枝二兩、去皮生薑二兩、切 半夏半升、洗大棗十二枚、擘
和訓:
太陽と陽明との合病、下利せず、
但だ嘔するものは、葛根加半夏湯之を主る。
葛根四兩 麻黄三兩、節を去る 甘草二兩、炙る
芍薬二兩 桂枝二兩、皮を去る 生薑二兩、切る 半夏半升、洗う 大棗十二枚、擘く
右八味、水一斗を以て、先ず葛根、麻黄を煮て、二升を減じ、白滓を去り、諸薬を内れ
煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。
覆いて微かに汗するに似たるを取る。
・太陽与陽明合病者、不下利、但嘔者、葛根加半夏湯主之。
ここでいう「嘔」と三十二章の「下痢」は同じ機序によって起こる。
これは裏が不和になった状態で”太陽病内合陽明”と呼ばれる状態であり
この影響が大腸に出れば下痢、胃に出れば嘔となる。
方義
・葛根湯(こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(中)三十一章)
・半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
ここでは、降逆止嘔に働き胃気を和降する。
・葛根加半夏湯について
葛根湯で太陽と陽明の表邪を解すとともに、
降逆・止嘔の作用をもつ半夏を加えることで、
二陽の表邪を治すと同時に胃気上逆による悪心嘔吐も治す。
提要:
太陽と陽明の合病で嘔をみる場合の証治について
訳:
太陽と陽明の合病で、下痢はしないが嘔がある場合は、
葛根加半夏湯が主治する。処方を記載。第三法。
葛根四両 麻黄三両、節を除く 甘草二両、炙る 芍薬二両
桂枝二両、皮を除く 生薑二両、切る 半夏半升、洗う 大棗十二個、裂く
右の八味は、一斗の水で、先に葛根と麻黄を、水が二升減るまで煮て、
浮かんだ泡を除き、残りの諸薬を入れて、
三升になるまで煮て、滓を除き、一升を溫服し、わずかに汗ばむほどに覆う。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
為沢