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こんにちは、大原です。
今回は、前回の記事の内容の続きになります。
(前回: 鍼道秘訣集を読む その28  十九.実之虚 & 二十.虚之実

「實實」と「虛虛」の2本立てです、
一気に読んでいきましょう。


二十一.實實

<實實>
實實ジツジツノ腹ハ臍ノ上下共ニ邪氣アリ加様ノ人ハ
大病ヲコルカ又ハ心痛シンツウ大食傷何ニモキウナル煩ヒ
トン死ナドスル物也大木ノ雪ニ枝ヲルルガ如シ
サンズル針勝引カチヒキノ針専ニスベシ
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二十二.虚虚

<虛虛>
是腹ハ臍ノ上下皆ウツケタル腹最モ悪敷アシシ負引ノ
針ニテ小邪ヲ引出シ療治スベシ虚勞等キヨロウトウニ此
腹アリ加様ナル療治ニ功者ノ能シルル物ナリ
病ニシルシセントスレバ病人ニ草臥来リ易シ
扨ハ病者退屈タイクツシヤスシ中中ナカナカ以テ治療六箇ムツカ
敷此體シクコノテイノ病人本道モ針醫モ上手下手アラワルル物也


現代の読み方にしていきます。

<実実>
実実の腹は、臍の上下共に邪氣あり。
加様の人は大病起こるか、又は心痛、大食傷、
何れにも急なる煩い、頓死などする物なり。
大木の雪に枝折るるが如し。
散ずる鍼、勝ち引きの鍼、専らにすべし。

———————————————————————————

<虚虚>
この腹は臍の上下皆虚(うつけ)たる腹、最も悪敷(あしし)。
負引きの針にて小邪を引出し療治すべし。
虚労等に此の腹あり。
加様なる療治に功者の能知る物なり。
病に効(しるし)を見せんとすれば、病人に草臥(くたびれ)来り易し。
扨(さて)は病者退屈しやすし。
中中(なかなか)以て治療六箇敷(むつかしく)、
此の体(てい)の病人、本道も鍼医も上手・下手あらわるる物なり。


意味を考えてみます。

「実実」の腹とは、臍の上・下、ともに邪気があるものをいう。
このような人は、
大病が起こる可能性、心痛、ひどい食あたりなど、
急死してしまうほどの急性な症状・病気を患うことを示している。
大木に雪が積もって枝が折れてしまうようなものである。
治療では、散ずる鍼、勝ち引きの鍼を主として用いるべきである。
———————————————————————————
「虚虚」の腹は、臍の上・下、全部が力の無い状態で、最も良くない状態である。
治療では、負け引きの鍼によって、深くにある小さな邪を浮き上がらせるようにする。
虚労(五臓すべてが弱っている状態)などにこの腹がみられる。
この場合の治療は難しいので治療者の能力を窺い知れるものである。
さらに、このような状態の病人はなかなか治りにくく
症状が長く続く傾向にあるので治療も難しい。
このような病人は、内科医も鍼医も、
技術が上手の者、そうでない者の差が現れるものである。

続きます。


〜Back Number〜
鍼道秘訣集を読む その1 →  鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
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鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11
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鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 → 九.相曳之針
鍼道秘訣集を読む その19 → 十.止針
鍼道秘訣集を読む その20 → 十一.胃快ノ針
鍼道秘訣集を読む その21 → 十二.散針
鍼道秘訣集を読む その22 十三.鍼不抜抜事
鍼道秘訣集を読む その23 十四.鍼痛
鍼道秘訣集を読む その24 十五.知必死病者習
鍼道秘訣集を読む その25 十六.吐針
鍼道秘訣集を読む その26 十七.瀉針
鍼道秘訣集を読む その27 十八.車輪之法
鍼道秘訣集を読む その28 十九.実之虚 & 二十.虚之実


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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