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こんにちは、大原です。
今回から、鍼道秘訣集の下巻に移ります。
そして、今回は「實之虛」と「虛之實」の2本立てです!
一気に読んでいきましょう。


十九.實之虛

ジツノ虚ト  フハラホソヨリ上ハ實シテ臍ヨリ下ハウツケ
  キ力ヲ云加様ノ腹ハ上氣シ又ハイキ短ク食
後ニネムリ来リ又ハ氣クツヤスクタメ息アクヒシカタ
ムネイタム事アリ大方ノ人腹持悪敷ハラモチアシシナド  フ
  ノ腹也本道ニテ云ハバ脾胃腎虚ヒイジンキヨナトド
立ベシ兩ノ脾ノ募兩ノ肺先ハイサキ胃ノニ針スベシ

 
左二針ノ穴ヲアラワ

 ノ ノ腹之圖]

圖ノ如ククロキ處ハ皆邪實ミナジヤジツ傷寒表証等シヤウカンヒヤウシヤウトウ  シ
此勝引ノ針  モ吉大食傷ナト腹痛アルハ大法如此也


二十.虛之實

キヨジツノ腹ハ右ノ腹トチカヒ臍ヨリ  モ皆實邪ミナシツジヤニシテ
臍ヨリ上ハウツホ也併無病ナル人ノ腹ニ如是ア
ルハ吉既ニワツラフ腹ニ  キ斯ハ腹クタル腰痛コシイタムカ小便
不通淋病リンヒヤウ大便ケツスルカ女ハ腰氣コシケアルカ月水
サルトトコホラ疝氣瘀血センキオケツ等ノ煩ヒ傷寒ノ裏証又ハ
シツ受寒ウケヒヘタル人必ズコノノ腹ニシテ足ノ病アル物也
圖書ズカクニ不及療治ハ兩腎丹田タンテン臍ノ兩ホウシヤウ
モンニ針シテ吉是處ヲ見合セ邪氣ノツヨキ方ニ針ス


現代の読み方にしていきます。

<実の虚>
実の虚と言う腹は、臍(へそ)より上は実して、臍より下は虚(うつけ)力無きを言う。
加様の腹は上氣し又は息短く、食後に眠り来たり。
又は氣屈し易く、ため息あくびし、肩胸痛む事あり。大方の人、腹持ち悪敷など言うはこの腹なり。
本道にて言わば、脾胃腎虚などと見立たてるべし。
両の脾の募、両の肺先、胃の腑に針すべし。
左に針の穴を証(あらわ)す。

[実の虚の腹之図]

図の如く黒き所は皆邪実なり。
傷寒表証等、これの如し。勝ち引きの針、最も吉。
大食傷など、腹痛あるは大法これの如きなり。
———————————————————————————–

<虚の実>
虚の実の腹は右の腹と違い、臍より下も皆実邪にして臍より上は虚(うつお)なり。
併せて無病なる人の腹にこの如きあるは吉。
既に煩う腹にかくの如きは、
腹下るか腰痛むか、小便不通、淋病、大便結するか、女は腰氣(こしけ)あるか月水滞らざるか、

疝氣(せんき)瘀血(おけつ)等の煩い、傷寒の裏証又は湿を受け、寒えたる人必ずこの腹にして足の病ある物なり。
図書くに及ず。
療治は両腎、丹田、臍の両傍、章門に針して吉。この所を見合せ、邪氣の剛(つよ)き方に針す。


意味を考えてみます。

<実の虚>
「実の虚」という腹は、臍より上は実し、臍より下は虚すなわち力が無いような状態をいう。
このような腹の人は、気が上がっているか呼吸が浅く、食事の後に眠気が来る。
または気持ちが屈しやすく、ため息やあくびをしやすく、肩や胸が痛むことがある。
大抵の「腹持ちが悪い」という人はこのような腹なのである。
弁証立てて表現すると脾胃腎虚などと診立てるのであろう。
治療では両方の脾募、肺先、胃の腑に鍼をすべきである。
次の図に鍼をする経穴(治療場所)を表す。

図で黒く塗って示しているところは邪実である。
傷寒の病で表証の場合は、このような腹になる。
勝ち引きの鍼が最も適する。
食あたりや腹痛の場合の治療は、大方この治療のようになる。

<虚の実>
「虚の実」というのは、先ほどの「実の虚」の腹とは違い、
臍より下は皆邪で実していて、臍から上は虚お(空洞のような感じ)である。
病の無い人がこのような腹である場合は、気力が充実した良い状態である。
何かしら病がある場合には、腹を下しているか、腰痛があるか、
小便の出が悪いか、淋病(性感染症)か、便秘か、女性の場合は帯下やおりものなどがあるか
月経が来ていないか、下腹部が痛むか、血液の流れがうまくいっていないか、といった状態や、
また、寒邪を深くに受けたか湿邪を受けたことで寒気が入り込んだ場合に
この腹の状態になって、また足にも不調をきたしているものである。
図に描くまでもない。
治療は両腎、丹田、臍の両傍、章門に鍼をすると良く、
これらを診て邪氣の強い所に鍼をする。

続きます。


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鍼道秘訣集を読む その1 →  鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
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鍼道秘訣集を読む その19 → 十.止針
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鍼道秘訣集を読む その21 → 十二.散針
鍼道秘訣集を読む その22 十三.鍼不抜抜事
鍼道秘訣集を読む その23 十四.鍼痛
鍼道秘訣集を読む その24 十五.知必死病者習
鍼道秘訣集を読む その25 十六.吐針
鍼道秘訣集を読む その26 十七.瀉針
鍼道秘訣集を読む その27 十八.車輪之法


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

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是非参考文献を読んでみて下さい。

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