腹證を按ずるの法


夫れ、腹證を按ずるの法は、
先ず、病人を平かに臥さしめ、
志気を正しくせしめ、さて医者も、
亦、平かに坐し、呼吸を正し志気を臍下に収め、あたかも、
武夫の兵(きれもの)を執りて敵に向かうが如く、
大病を怖れず、死生に眩せず、
富貴に屈せず、貧賤も悔らず、
その病敵を治してその疾苦を救わんと、
心を専一にして診察すべし。
是れ疾医、病者を診察するの大法なり。
凡そ、腹證を候うの法は、右の如く病者に臨み、
先ず、右手の掌を除かに胸心(むね)へ当て、
一息して呼吸を定め静かにし、
心をしずめて、胸膈の毒を候う。
中央より診して左右に及ぶ。
而して後、心下へ柔かに指を下して、
三指(食指・中指・無名指)の頭にて按ずべし。
次に肋骨の端へ指頭をかかげ入れて
苦満の有無を候い、次に腹中、次に左右の小腹、
次に臍穴、次に左右の臍傍、
次に臍下と、順々に診察すべし、
これ診腹の次第なり。
かくの如くにして後、外證を察し、諸患の有無を問うべし。


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