WORLD PRESS PHOTO 2011
WORLD PRESS PHOTO 2011  出典:朝日新聞社より

こんにちは、為沢です。
先日「世界報道写真展2011」
という写真展を観に行きました。
毎年開催されている写真展で、
45の国と地域、約100都市で開催される
世界最大規模の写真展です。
大阪での展示は終わりましたが、
9/21〜10/16に京都にある
立命館大学国際平和ミュージアムで開催されます。
興味のある方は是非御覧下さい。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)三十一章。
葛根湯の証治について述べております。


弁太陽病脈証并治(中)三十一章

太陽病、項背強几几、無汗、惡風、葛根湯主之。
葛根
四兩 麻黄三両、去節 桂枝二兩、去節
生薑三両、切 甘草二兩、炙芍藥二兩大棗十二枚、擘
右七味、以水一斗、先煮麻黄、
葛根、減二升、去白沫、内諸藥、
煮取三升、去滓、溫覆一升、覆取微似汗、
餘如桂枝法、
將息及禁忌。諸湯皆倣此。

和訓:
太陽病、項背強ばること几几として、
汗無く悪風するは、葛根湯之を主る。
葛根四兩 麻黄三兩、節を去る 桂枝二兩、皮を去る
生薑三兩、切る 甘草二兩、炙る 芍薬二兩 大棗十二枚、擘く
右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、白滓を去り、諸薬を内れ
煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。覆いて微かに汗するに似たるを取り、
余は桂枝の法の如く将息及び禁忌す。諸薬は皆此れに倣え。


太陽病、項背強几几、無汗、惡風、葛根湯主之。
桂枝加葛根湯証
【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上)十四章
を参照)の
項背強几几は”反汗出悪風”で、葛根湯証での項背強几几というのは、
”無汗悪風”で邪が表に実するために起こったものである。
両者の鑑別のポイントは、
桂枝加葛根湯証は汗出、葛根湯証は無汗であること。


方義

葛根
葛根

葛根
基原:マメ科のクズの周皮を除いた根。
葛根は甘潤・辛散で偏涼であり、
脾胃の二経に入って陽明に作用する。
陽明は肌肉を主るので解肌退熱・透発斑疹に働き、
胃中の清気を鼓舞上行して津液を上承、
筋脈を濡潤して攣急を解除。生津止渇・止瀉の効能をもたらす。
表証の発熱・無汗・頭痛・項強に対する主薬である。
ただし、発汗の力は強くなく解肌退熱にすぐれているので、
邪欝肌表の身熱不退には
口渇・不渇、有汗・無汗を問わず使用するといい。

 

麻黄
麻黄

麻黄
基原:
マオウ科のシナマオウをはじめとする
同属植物の木質化していない地上茎。
去節麻黄は節を除去したもの。
辛温・微苦で肺・膀胱に入り、
辛散・苦降・温通し、肺気を開宣し腠理を開き
毛窮を透して風寒を発散するので、
風寒外束による表実無汗や肺気壅渇の喘咳の常用薬である。
また、肺気を宣発して水道を通調するとともに、
膀胱を温化して利水するので、
水腫に表証を兼ねるときにも適する。
辛散温通の効能により、散風透疹・温経散寒にも使用できる。
ここでは、麻黄を加えることで発汗を強くする。

芍薬
芍薬

芍藥
芍薬には<神農本草経>では
赤白の区別がされておらず、宋の<図経本草>ではじめて
金芍薬(白芍)と木芍薬(赤芍)が分けられた。
白芍は補益に働き赤芍は通瀉に働く。
桂枝湯同様、ここでは白芍を用いる。

基原:ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのまま湯通しして乾燥させた根。
白芍は苦酸・微寒で、酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち諸痛に対する良薬である。
桂枝と白芍を等量ずつ合わせると、肌表の風邪が発散し、
営衛を調和させることができる。

生薑
生薑

生薑
基原:
ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を
乾生姜ということもあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。
ここでは、風寒表証に
辛温解表薬の補助として用い、発汗を増強する。

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは胃の気を和し虚を扶け、
さらに芍薬でもって陰と調和し、
正気を助け邪気を取り除き内と外の調和をとる働きがある。

大棗
大棗

大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。またはその品種の果実。


甘温で柔であり、
補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、
大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、
営衛を調和することができる。

桂枝
桂枝

桂枝
基原:クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用できる。

・葛根湯について
葛根湯は桂枝加葛根湯に
麻黄を加えたものである。
本証は「汗なく、悪風す」の表閉営欝を呈しているため、
開表発汗
の麻黄用い強く散邪する目的でこれを加える。

提要:
葛根湯の証治と、桂枝加葛根湯との相違点は汗の有無にあると指摘している。


太陽病を罹り、項背部がこわばって
不快であり、汗が出ずに悪風するものは
葛根湯で治療する。処方を記載。第一法。
葛根四兩 麻黄三兩、節を除く 桂枝二兩、皮を除く 生薑三兩、切る 甘草二兩、炙る 芍薬二兩 大棗十二枚、裂く
右の七味を、一斗の水で、先に麻黄と葛根を、水が二升減るまで煮て、浮かんだ泡を除き、
残りの諸薬を入れ、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服し、少し汗ばむほどに覆う。
その他は桂枝湯の療養法と禁忌に同じ。諸湯はみなこの方法にならう。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』  東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための方剤学』
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

為沢

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