逆子に対して、鍼灸が非常に効果的であるということは
大変有名な話です。 
「逆子の灸」というものがあり、古くから言い伝えられ、
多くの臨床家が「逆子の灸」、つまり「至陰にお灸」を
することで、逆子の治療に臨み、多くの成果を残しているようです。
伝統的な治療法として、逆子=至陰のお灸と単純に取穴することが
多いですが、他の病気と同様にしっかりと病因病理を立てることが
重要になります。
中医学ではこの逆子に対して、どのように考えているかをみてみましょう。


逆子(胎位不正)
妊娠30周後に現れる子宮体内の胎児の位置異常を言う。
胎位の異常には、臀位(骨盤位)・横位・反屈位があり、
古典には倒産・横産・偏産の記載があるという。
臀位が最も多いとされ、胎位不正は難産の原因ともなってくる。
以下に中医学における逆子の分類をまとめてみました。 


気血両虚による胎位不正
気血の弱っている婦人が妊娠することで、ますます気血を消耗し、
胎児自身に影響するため、動きが無力化し胎位不正が起こる。
○顔色が悪い、手足に力が入らない(四肢無力)、倦怠感があるなどの
気血不足の症状を伴う。

脈:滑
妊娠による脈象である。
湯液:八珍湯に該当
鍼灸:至陰に加え、関元、足三里にて気血を補う
気機鬱滞による胎位不正
ストレスや情緒の抑鬱によって、肝気が滞ったり、寒邪を受けて
気血が擬滞したり、胎児が大き過ぎて気機を塞いだり、
どのような原因でも気機を滞らすことによって、
結果、胎位不正が起こる。
○胸部のもだえ感(胸悶)、お腹の脹り(腹脹)、よく溜め息が出る、
気分が優れずうつ状態になりやすい、などといった症状を伴いやすい

脈:滑
同じく妊娠を表す
鍼灸:至陰に加え、気海、内関、太衝などで気の流れを促す
血滞湿停による胎位不正
妊娠後期に、血や湿が内に滞り、気の流れを阻害して(気機不利)
起こる胎位不正。
○気の滞りのために血まで滞り(気滞血瘀)があれば、
お腹が脹って痛む

○水湿の流れが悪くなると、尿量が少なくなったり、
下肢の浮腫(足のむくみ)などを伴う

脈:沈弦
痰飲の内結を表すため、このような脈象になると中医学ではされている。
鍼灸:至陰に加え、三陰交、陰陵泉を加えることで、
血や湿の停滞を改善させる。


古典記載
『鍼灸大成』:「横生死胎:太衝、合谷、三陰交。横生洗出:右足小指尖」

3 コメント

  1. 逆子の患者さん
    うちは結構多いと思います。
    年間20~30人くらいでしょうか。
    私の場合は脈に従って治療しますが、概ねこの様な分類になりますね。
    一番多いのは腎経か脾経の虚です。
    この中では1番目と3番目に当りますかね。
    他には、膀胱経実の方ですが、至陰でなく束骨を使う人もいます。
    点天さんのところではどんなですか?

  2. 腎と膀胱経の虚実、特に左右差をひいき目に整えて、
    他の疾患と同様に五臓六腑
    の虚実をしっかり診て正していきます。
    脈状について傾向はありますか。
    その辺がまだまだ課題です。

  3. 左右差では、右膀胱経虚が多いように思います。
    脈状は、様々ですね。
    >他の疾患と同様に五臓六腑
    >の虚実をしっかり診て正していきます。
    やはり、そうですね。
    先日、鍼灸接骨院で治療を受けていた方から聞いた話で、こんなのがありました。
    両至陰の多壮灸のみで毎日通院させるとの事。
    こんなのが鍼灸と思われては困りますね^^;

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