腹證奇覧
湖南 稲葉 克文礼著を紹介いたします。
1、腹證を按ずるの法(前編上篇)
夫れ、腹證を按ずるの法は、先ず、病人を平かに臥さしめ、
志気を正しくせしめ、さて医者も、亦、平かに坐し、
呼吸を正し志気を臍下に収め、あたかも、
武夫の兵(きれもの)を執りて敵に向うが如く、
大病を怖れず、死生に眩せず、富貴に屈せず、
貧賤も侮らず、その病敵を治してその疾苦を救わんと、
心を専一にして診察すべし。
是れ疾医、病者を診察するの大法なり。
凡そ、腹證を候うの法は、右の如く病者に臨み、
先ず、右手の掌を除かに胸心(むね)へ当て、
一息して呼吸を定め静かにし、心をしずめて、胸膈の毒を候う。
中央より診して左右に及ぶ。而して後、心下へ柔らかに指を下して、
三指(食指・中指・無名指)の頭にて按ずべし。
次に、肋骨の端へ指頭をかかげ入れて苦満の有無を候い、
次に腹中、次に左右の小腹、次に臍穴、次に臍傍、
次に臍下と、順々に診察すべし、これ診腹の次第なり。
かくの如しにして後、外證を察し、諸患の有無を問うべし。
とても大事なことが書いていますね。
鍼道秘訣集にしろ、この腹證奇覧にしろ、
冒頭の心持ちの大事を教えてくれる一文。
非常に心に沁みますね。