こんにちは、大原です。
今回は「鍼痛(はりの痛む)」です。
凡病者ニ針シテ後針跡脹痛人アリ是ハ邪氣ヲ
越テ深針シテ藏腑損スル成又針ハ邪氣ニス
レドモ痛ハ針ヲ立ル日ノ心持正路ナラザルト可
レ知針跡痛テ不レ可レ忍人ニハ前廉針シタル穴
ノ四方ニ針スレハ痛處ヘ氣血ノ聚タルガ散テ
愈是等ノ時ハ散スル針ヲ立テ吉
<針迹痛立直之針圖>
何レノ處ニテモ針跡ノ痛處ヘ如レ是ニ可
レ針真中ノ一ハ前ニ針シタル處四方ノ四ハ
後ノ針ノ立様也處定マラズ
現代の読み方にしてみます。
およそ病者に針して後、針跡膨れ、痛む人あり。
これは邪氣を越えて深く針して藏腑損ずるなり。
また、針は邪氣にすれども痛むは針を立るときの、
心持ち正路ならざると知るべし。
針跡痛みて忍ぶべからざる人には、前廉針したる穴の四方に針すれば、
痛む所へ氣血の聚まりたるが散って愈える。
これらの時は散ずる針を立て吉。
<針跡痛む立て直しの針図>
いずれの所にても針跡の痛む所へこれの如くに針すべし。
真中の一つは前に針したる所。
四方の四つは後の針の立様なり。
所定まらず。
病人に鍼をした後、膨れて痛むことがある。
これは邪気を越えて深く刺入し、臓腑を弱らせたことにある。
また、鍼は邪気に対してするが、
痛むのは鍼を立てるときの心持ちが正しくないと知るべきである。
鍼の後に痛みが出て我慢ができない人に対しては
鍼をしたところの四方に鍼をすれば
痛む場所へ集まっている気血が散って痛みが治る。
このような時には散ずる鍼をすると吉である。
<鍼の後、痛む場合に立て直しの鍼の図>
いずれの場合にも、このように鍼をすると良い。
図で、真ん中の一つは前に鍼をしたところ(痛む所)。
四方の四つは後の鍼の立てるところである。
これは、痛む場所によっては違うやり方で行うというものはなく、
どの場所でも同じ様にすると良い。
ここでも心持ちの大事が書かれていますね。
続きます。
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鍼道秘訣集を読む その1 → 鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11
鍼道秘訣集を読む その12
鍼道秘訣集を読む その13 → 五.四脉之大事
鍼道秘訣集を読む その14
鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 → 九.相曳之針
鍼道秘訣集を読む その19 → 十.止針
鍼道秘訣集を読む その20 → 十一.胃快ノ針
鍼道秘訣集を読む その21 → 十二.散針
鍼道秘訣集を読む その22 十三.鍼不抜抜事
参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房
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是非参考文献を読んでみて下さい。