この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
8/23(水)
太陽病中篇より
(116条)
微数之脈、慎不可灸。因火為邪、則為煩逆。追虚逐実、血散脈中。火気雖微、内攻有力、焦骨傷筋、血難復也。
脈浮、宜以汗解、用火灸之、邪無従出、因火而盛、病従腰以下、必重而痺、名火逆也。
欲自解者、必当先煩、乃有汗而解。何以知之。脈浮、故知汗出解也。
微数の脈では、灸をしてはならない。
灸の火気が邪となり煩逆の症状がおこるためである。
火気は微(少し、あるいは弱い)といえども内を攻めるには力があるため、
骨や筋を侵し、また、侵された血もなかなか復(回復)しにくい。
素問において、正気と邪気に関する記述がある。
邪気は、甚しいもの、微のものという区別があるが、
本条では、火は微の邪ではあったとしても、
有力な邪となり得るという説明がなされていることが分かる。
脈が浮で汗をかけば表証は解けるが、
灸を用いて火気が入ると表邪が解けず、
火気によって盛んになってしまう。
すると腰より下が重くなり痺(しびれ)もおこる。
これは正気を損傷し、邪実が盛んになってしまうことによる。
本条の内容から、「追虚逐実」とは
用語として「ついきょちくじつ」と読んで
補瀉の言葉を乱用するという意味合いとして
用いられるようである。
条文のはじめは「微数之脈」となっているが、
おそらく太陽病にかかっていることが前提で、
その表記は省略されているのだろう。
114条の冒頭に「太陽病」とあるが、
そこから太陽病の内容が続いていると読める。
本条の最後に「煩」とあるが、
これは太陽病が解していくときにみられるものとして記されており、
邪正の闘争として一時的に現れるものであろう。
(続く)
参加者:下野、新川、大原、盧